試合レポート

関西中央vs王寺工

2011.07.18

6年ぶりの復帰も色あせない、姫嶋採配

 さすがは百戦錬磨のベテラン・姫嶋監督である。

6年ぶりに現場復帰した姫嶋監督は、過去に桜井奈良工広陵志貴などで采配を振るった経歴がある。定年退職を機に、身を引いていたが、今年4月に学校に乞われる形で、関西中央の監督に就任していた。

そんなベテラン指揮官は、1回戦で秋春連続ベスト8の登美ヶ丘を破った王寺工に対し、見事な対策を立ててきた。

まず、左腕からのスクリューの変化球で打者を翻弄する王寺工のエース・松田の対策はこうである。
関西中央の4番・田中がいう。
「バッターボックスの後ろに立ち、左投手特有の入ってくるストレートを狙い打つということでした。外のボールになる変化球には手を出すな、と。1打席目は上手く打てたと思います」
その田中は、1回裏、2番・伊藤に続くソロ本塁打を放った。試合前に立てた姫嶋監督の指示を徹底しての快打だった。

一方の王寺工の打線対策。
1回戦で登美ヶ丘の2年生エース松尾から13安打を放って打ち崩した王寺工に対し、姫嶋監督は、先発にエースの坂田ではなく、故障上がりの野村を立てた。
そして、これが、はまる。
野村起用の理由を、姫嶋監督はこう説明する。

 
王寺工登美ヶ丘戦では5点を取っていたけど、11三振もしていた。登美ヶ丘の松尾君はスライダーが良い投手。スライダーが苦手なんちゃうかなと思って、スライダーが良い方の、野村を先発にした」


ただ、この思惑は少しだけずれる。というのも、序盤、野村のスライダーが思うほど切れず、逆に、王寺工打線はストレートに全くタイミングが合わなかったのだ。そこで、姫嶋監督は野村が2回に1失点した後、『ストレートが合ってない』とで配球を切り替えさせた。

野村は3回からストレートを主体とすると、3回から6回までを3者凡退。これで波に乗った。
中盤以降は、得意のスライダーが決まりだし、王寺工打線を完全に封じた。7回表、1死・2、3塁のピンチも、7番・片岡をスライダー、8番・柿本をストレートで連続三振。
エースの坂田が、常に、救援準備を整えていたが、野村は付け入るすきを与えず、9回を3安打1失点で完投したのである。
「ストレートで攻めていったことで、後半はスライダーがより生きるようになっていた」と姫嶋監督が言えば、野村は「スライダーを生かすためには、まずストレートが大事だということを再確認した」と振り返っていた。

まさに、野球の格言のような、ピッチングだった。

打線は1回に2点を先制した後は、4回に押し出しで1点を追加。6回裏には相手の守備の乱れに付け込み、9番・野村の適時打もあって2点を加点した。
終わってみれば、5-1の完勝。シード校最後の砦・関西中央は好スタートを切ったのである。

関西中央にとって、ここへきての野村の復調は大きい。もともと、野村は1年秋の近畿大会で先発するなど、エースを張れる存在だったが、故障などでその座を明け渡していた。
「自分が故障していた時に、坂田が穴を埋めてくれていたので、今度は僕が助ける番です」と野村は最後の夏に懸けているという。

夏の舞台に2人を揃えてきた姫嶋監督の手腕も、さすがの一言である。 
「うちは最後のゾーンやから、後の方になったら日程が詰まってくる。坂田を、今日、使わなくてすんだし、他に3人の投手がいる。上手く使っていきたい」。
とは姫嶋監督である。

その滑らかな口ぶりが、関西中央の充実度を物語っている。

(文=氏原英明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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