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雨と慣れない環境

2011.06.15

第22回 雨と慣れない環境2011年06月15日

雨と慣れない環境

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

雨が続くとグランドコンディションが悪い状態で練習することや、雨を避けて別の場所で練習する機会も増えると思います。野球は多少の雨でしたら試合は続行されますが、グランドがぬかるんでしまうとプレーそのものが出来なくなります。今回は雨天時のグランドや土以外の地面で練習する場合の注意点などについてお話をしたいと思います。

グランドがぬかるんでしまうとまず気をつけなければいけないことは、足元を取られて滑ることによる足首や膝のケガなどが考えられます。野球は、バレーボールなどと違って足が地面についた状態でプレーすることがほとんどですので、地面がゆるくなってしまうと足の踏ん張りがきかず、思わぬケガにつながってしまいます。スタートダッシュや急なストップ動作の時にそのリスクは高くなります。グランドコンディションが悪い中での試合や練習が想定されるときは、不安部位などにサポーターを装着する、テーピングなどで対応する、いつも以上に入念にウォームアップを行う等、出来る範囲でケガ予防のための準備を行う必要があります。

またぬかるんだ地面に足を取られて転倒した際には、手をついて手関節を痛めることもよくあります。手関節の捻挫(軽度の靭帯損傷)であれば、RICE処置などで応急処置を行い様子を見ることも可能ですが、骨折や軟部組織の損傷(TFCC損傷)といった重度のケガも考えられます。痛みの程度がひどい、腫れがかなり目立つ、変形などが見られる場合は応急処置後、なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。


雨天時には、普段とは違う場所での練習もあります。

雨天時には、普段とは違う場所での練習を余儀なくされるときもあります。慣れない場所での練習は、サーフェス(土、床などの表面のこと)の硬さや性質が違うので、そのことを理解したうえで練習を行うことが大切です。たとえば体育館や学校の廊下、階段、アスファルト舗装された地面などは、シューズとサーフェスとの摩擦力が高いために滑りにくく、地面からの反発力が高いため、足首や膝、腰などに負担をかける場合があります。人工芝のグランドは土のグランドと比較して硬いため、ケガのリスクは高くなりやすいのです。

また湿度の高いこの時期の練習は、汗をかくことが多いと思いますが、汗への対応も重要です。土のグランドであれば、地面が汗を吸いこんでしまうためさほど問題ありませんが、体育館や学校の廊下で練習をしていると汗で滑りやすい環境を作り出してしまいます。バレーボールなどでは頻繁に床を拭くシーンが見られますが、ケガ予防のためには汗をかいて地面が濡れた状態であれば、こまめに拭いて対応するようにしましょう。

あとは室内の湿度や温度にも気を配るようにしましょう。屋外での練習の場合は風が適度に吹くため、この時期に熱がこもってしまうことは考えにくいですが、雨天時の屋内での練習では、雨が入らないように窓を閉め、空気の入れ替えをしないままになっていることも想定されます。蒸し暑い中での練習によって熱中症などの症状を引き起こすことも考えられますので、こまめな水分補給、時間を決めた空気の入れ替え等を積極的に行うようにしてください。

梅雨時にはグランドコンディションが良くない状況での試合や、練習環境が変わることもあると思います。ケガを予防するためにも、慣れない環境への対応を一つずつ確認していくように心がけましょう。

(文=西村 典子

次回、第23回公開は06月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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