応急処置の基本はRICE
第19回 応急処置の基本はRICE2011年04月30日
応急処置の基本はRICE
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
皆さんの中には、野球の練習や試合中に思わぬケガをしてしまった経験があるかもしれません。第1回コラム「ケガは予防できる」でも書きましたが、ケガには予防できるもの(スポーツ障害)と突発的に起こってしまうもの(スポーツ外傷)があります。今回は急にケガをしたときにまず行ってほしい応急処置の基本を説明したいと思います。
打撲や捻挫、肉離れなどのケガをしたときに、皆さんはどのような対応をしましたか?すぐに病院に行く、練習を休む、安静にしておくなどいろんな回答を想像しますが、まず行ってほしいことがRICE処置です。
RICEとは基本的な4つの対応法を理解しやすく覚えるために、英語の頭文字をもじったもので、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の4つを表します。
1)安静(Rest)。これは身体を動かさずに横になっているという意味ではなく、ケガをした部位を安静状態に保つということです。ケガをした後も無理に動かすとケガの状態が悪くなってしまうことがありますので、出来るだけ休ませましょう。患部を動かさないようにある程度固定し、様子をみることが必要です。
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2)冷却(Icing)。ケガをしたところを氷などで冷やします。冷やすことによって患部の毛細血管が収縮し、出血を抑えて腫れを防ぐことができます(冷やすことの効果については第3回コラム「投げた後に氷で冷やすのはなぜ?」に詳しく解説しています)。実際の方法としては氷などを用いて患部を約20分~30分ほどかけて冷やします。時間の経過とともに皮膚の感覚は、冷たくて我慢できない感じ→ヒリヒリする感じ→しびれて感覚がなくなる感じ、と変化します。目安としては感覚がなくなってから5~10分ほどたったら一度アイシングを終了するようにしましょう。これは冷却による低温やけど(主に市販の冷却剤を使用する場合)を予防するためです。
その後、時間をかけて皮膚感覚を取り戻します。アイシングにかけた時間のおよそ倍の時間を目安としましょう(30分アイシングを行ったのであれば1時間程度は常温で安静状態にしておく)。痛みがひどいときはこのサイクルを何度も繰り返すことが大切です。突発的なケガへの対応としてはこのサイクルを24時間~48時間行うことが理想であるといわれています。またケガをした後のリハビリテーションやスポーツ活動をした後の疲労回復などにも効果的です。
3)圧迫(Compression)。ケガをした部位に包帯やテープを用いて軽く圧迫することで内出血を抑えます。きつく圧迫しすぎてしまうと神経や太い血管まで影響が及びますので、圧迫した後に患部より先がしびれたり、色が変わったりしないかを確認したうえで行うようにしましょう。また「締め付けがきついな」と感じたらすぐにゆるめるようにしましょう。
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4)挙上(Elevation)。ケガをした部位を心臓よりも高く上げることで、血液の心臓への戻りを促し、内出血などによる腫れを防ぎます。患部の下に座布団やタオルなどをいれるとより楽に挙上することができます。挙上状態を保ちにくい部位をケガした場合は、無理に心臓よりも高く挙げる必要はありません。
ケガをした後に、適切なRICE処置を行うことでケガをした部位の痛みが軽減され、競技復帰への時間短縮につながります。ただしこれはあくまでも救急処置であり、骨折や捻挫、肉離れなど骨や靱帯、筋肉の損傷を治癒させるものではありません。必ず医師による処置や診断を受けるようにしてくださいね。
【基本のRICE処置】
●突発的なケガにはまずRICE処置を行う
●RICEとは安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)
●冷却剤を使用する場合には低温やけどに十分注意する
●冷却時間と回復時間の目安はおよそ1対2
●圧迫はきつく締めすぎないように注意(締めすぎサインはしびれや変色)
●RICE処置はあくまでも応急処置。必ず医師による診察を受けましょう。
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(文=西村 典子)
次回、第20回公開は05月15日を予定しております。