試合レポート

室戸vs宿毛

2011.04.08

室戸vs宿毛 | 高校野球ドットコム

北川和矢(室戸)

“「けが」と闘う2人のエース”

高知県内の高等学校で最も東にある室戸の左腕・北川和矢。一方、最も西にある宿毛の右腕・中村岳。最速130キロをゆうに超える3年生本格派エースの競演が期待されたこのゲームであるが、その実現は残念ながら叶わなかった。

北川は終始直球の勢いは不足気味。度重なるひじ、肩の不安のせいか、昨夏県大会2回戦・明徳義塾戦で強打線をわずか1点に押さえ込んだスケールの大きさが示されることはなかった。

ただしその一方で、「秋以降に責任感や芯の強さ、エースらしさについて厳しく話をしたことで、淡々と投げられるようになった」と大利惠輔監督も評したように、四球2とこれまで課題となっていた制球に明らかな改善の跡が。この日も宿毛に8安打を浴びながらも1点に抑えきったのは、彼のテンポよい投球が好守を引き出していたからである。


室戸vs宿毛 | 高校野球ドットコム

白石貴大(宿毛)

そして宿毛の先発は中村でなく、これまでの2試合同様に右腕の白石貴大(3年)。
白石は地肩の強さを武器に、山岡翔矢(2年)の巧みなリードにも引っ張られて粘り強い投球を続けたが、8回表に味方の失策で力尽きることに。
そして1回戦は先発、2回戦では途中出場ながら左翼手として出場した中村は、7回裏に代打として出場した以外はベンチから声援を送るのみであった。

その理由は試合後、森裕嗣監督によって明らかにされる。
実は中村は冬に右肩痛を発症。一時は回復に向かうも春先に再発したことで現在の状態は2割程度。とてもマウンドに立てる状態ではなかったのだ。

「本人もジレンマを抱えていると思うが、我慢させている」とエースを気遣う指揮官。その顔は彼にとって最後の夏に万全の状態で臨ませたい気持ちがあふれ出ていた。

ちなみに室戸・北川は惜しくも1対2で敗れた準決勝・追手前戦でも無四球完投と、技巧派への変化は順調。何も「本格派」だけが投手の生きる道ではないし、高校野球の全てではない。「けが」と闘いながら自らがチームで活きる道を模索する2人が、最後の夏にどのような心身の成長を遂げてマウンドに立ってくれるのか。私たちはその過程を静かに見守っていきたい。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.21

いまも3人が現役で奮闘中! 200勝達成したダルビッシュの同期生

2024.05.20

【秋田】横手清陵と本荘が8強入り、夏のシード獲得<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.18

【秋田】明桜がサヨナラ、鹿角は逆転勝ちで8強進出、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?