試合レポート

美濃加茂vs大垣日大

2010.11.20

美濃加茂vs大垣日大 | 高校野球ドットコム

美濃加茂・纐纈

スラッガーも活躍!来年に期待もたせる美濃加茂の秋

センバツ甲子園につながる秋季県大会で、上位3校を私立高校が占めた今年の岐阜県(大垣日大、岐阜一、中京)。秋には毎年、県高野連に加盟する私立高校が集い、トーナメント形式で試合を行う親善大会が開催されている。

親善大会ということもあって、高校ごとのスタンスは様々だ。
ベストメンバーで臨む高校もあれば、1年生にチャンスを与えたり、普段は出場機会に恵まれない選手を積極的に起用する高校もある。
どちらにしても、野球シーズンも終わりを迎える晩秋に、優勝旗をかけた大会が見られるのは嬉しい限りだ。

1回戦と2回戦が行われた20日、大野レインボースタジアムでは美濃加茂大垣日大と対戦。
1点をリードされた美濃加茂が終盤に逆転し、センバツ出場当確の大垣日大を下した。

大垣日大は、明治神宮大会の直後ということもあってか、同大会に出場していないメンバーもスタメンに名を連ねた(それでも、層の厚い同校だけに、戦力は普段のメンバーと比べても劣らないが)。

もちろんチームにとっては悔しい敗戦だろうが、上記の事情もあって、この1敗をどうこう言うことはできない。
ここでは、チーム一丸となって大垣日大に競り勝った美濃加茂を取り上げてみよう。


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美濃加茂・纐纈

美濃加茂vs大垣日大 | 高校野球ドットコム

美濃加茂の1点ビハインドで迎えた8回表、試合の流れを変えたのは4番打者・纐纈隼基(こうけつ としき)の右翼同点アーチだ。
「後ろの打者につなげる気持ちで打席に入りました。内角のボールを払うつもりで振ったら、うまくバットに乗ってくれました」と本人が振り返った当たりは、高校通算20本目のホームランに。
思い切り腰が捻(ね)じれて、バットのヘッドが背中を叩くほどに回った一発だった。
ちなみに、勝ち進んで迎えた当日午後の富田戦でも纐纈は5打点の大爆発。
レフトへの3点タイムリーツーベースに、打った瞬間にそれと分かる右中間への2点ホームランと、この日はまさに「纐纈デー」であった。

この纐纈について、筆者は昨冬、ある野球雑誌で1ページにわたり紹介したことがある。
ちょうど1年前の私立高校親善大会。
纐纈が打席で醸し出していた堂々たる雰囲気は、1年生のそれではなかった。

しっかりと右足(投手側の足)を上げて投球を待ち、開かずに着地して、リストを生かしながら振り切る雄大な打撃に、逸材スラッガーの原石を見る思いがした。
当時はまだ高校通算本塁打も数本だったが、この1年で十数本を量産したことになる。


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美濃加茂・奥村

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さて、再び大垣日大戦に話を戻す。纐纈の同点ホームランが飛び出した美濃加茂はその直後、今後キーになりそうな選手たちの活躍によって逆転する。

まずは5番打者・奥村和人がヒットで出塁。この選手は快足が持ち味だ。
すかさず盗塁を決めて、流れをグッと引き寄せた。最終回もセーフティバントを成功させるなど(バントヒットはこの日2本目)、猛打賞の活躍を見せた。
足を生かすべく、打席の中での工夫が見て取れる。

続く6番打者・松田翼もヒットでつなぐ。松田は右投左打のキャッチャー。守備での動きが俊敏で、送球も悪くない。
4回裏には飛び出した三塁ランナーを牽制で刺し、ピンチでの失点を防いでいた。

相手投手のワイルドピッチで1点を勝ち越した後、8番打者・松岡慎がレフトへタイムリーを放ち、さらに点差を広げた。

この試合、先発したのは背番号10をつけるこの松岡だった。
球が真ん中に入ってしまい、4回途中までに7安打を浴びて降板したが、打撃で名誉挽回。

小気味良いレベルスイングで鋭くバットを走らせ、「打」での魅力を存分にアピールしてくれた。


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美濃加茂・繁平

投げては、4回裏途中からリリーフした繁平速大(はやひろ)が試合を落ち着かせ、大垣日大打線を被安打1・無失点に抑えた。
一球一球に集中し、サイドスローのフォームから指にかかったボールを投じる。
三振も多く奪ったが、打たせてとる投球術が光った。横に変化するスライダーに加え、シンカーのように沈むボールは本人曰くツーシームとのこと。
西村光司監督は「先発した松岡は気持ちで投げるタイプ。一方でリリーフの繁平は、かわすタイプ。今日は繁平のピッチングがうまくハマってくれました」と解説してくださった。

大垣日大相手の勝利にも、「相手に関わらず、自分たちのやることをしっかりやろう、普通にプレーしようと選手には話しました」と語る西村監督。
チームについて「まだまだ叱らなきゃいけないことも沢山あるんですが…」と苦笑いを浮かべつつ、「平常心や落ち着きは身につけているチームだと思います。まじめな子ばかりで、私が指示したことをよく理解してくれます。どこからでも得点できますよ」と、まとまりを感じている様子だった。
美濃加茂は1990年の夏の甲子園出場校。県内では常に上位に位置する実力校である。

敗れた大垣日大は、この日4番に入った182センチ・105キロの八杉颯が、体格どおりの猛烈なスピードの安打を放ち、スタンドをどよめかせた。
他に打線で目立ったのは、バットコントロールが正確で、鋭く振り抜くことができる畑和来。
同級生の後藤健太・安藤嘉朗が早くからデビューして注目を集めたが、畑も着々と成長し、今秋から1番打者に起用されている。
先発の1年生・柳川優太は、7回までは勢いの良いピッチングで押した。8回表に纐纈に本塁打を浴びて以降、幼さを見せたが、将来に向けて糧となる経験を積めたのではないか。

大会は、先の秋季県大会で第2位に輝いた岐阜第一が、決勝戦で美濃加茂を猛打で下して優勝した。

(文・撮影=尾関 雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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