重心移動~下半身編~(6)
『運動学・解剖学的観点から考えた投球フォーム、重心移動~下半身編~(6)』
連休も終わり、各チーム、各選手共に夏の大会に向けて、最後の調整に入っていく段階だと思います。1つ注意して欲しいのは、投手はこれから5月下旬にかけて肩・肘の故障が増える時期なのです。春の練習試合解禁から試合が続き、1番連戦となるゴールデンウィーク明け。今からが疲労のピークになる時期になりますので、早いうちに対応が必要です!!!
早いうちに対応できれば夏には十分間に合いますが、我慢して対応が遅くなると、夏に間に合わない…そんな選手が多いですから要注意です!!!
痛みが出てからでは遅いのです…痛みが出現する前にどう対応しておくのか。できれば日々体の管理をしてもらえる専門家を作っておきたいところです。
さて投球フォームの話ですが、前回は軸脚の傾きについて説明させて頂きました。ポイントは軸足が最低45°傾くまで、股関節・膝・足が一直線になっておくことでした。これがいわゆる下半身の開きが早い1つの原因となり、軸足を使った投球動作ができなくなる要因となります。
自分の『歩幅』とは?
そして今回は『歩幅』について説明したいのですが、皆さん投球時の『歩幅』はどうやって決めていますか?よくマウンドに上がるとプレートから1歩1歩測り、踏み出し足の位置をチェックする投手がいますが、自分の『歩幅』が何歩なのかその根拠が明確な選手がどれだけいるのだろう?と思います。
よく雑誌や専門書などに『小学生の歩幅はこれくらい、中学生、高校生はこれくらいの歩幅がいいでしょう。』などと書かれているものがありますが、その根拠を書かれているものはほとんどありません。大体平均的な『歩幅』を書いていると思われます。
しかしそれに自分の歩幅を合わせてしまうと大変なことになってしまいます。自分のフォームでは投げられなくなるからです。そもそも『歩幅』は『結果』なのです。軸足の状態によって踏み出された足が着地した所、それがその投手の『歩幅』であって『結果』でしかないのです。
写真(1)
その結果をどうこう言ってもあまり意味がありません。そもそも何でその『歩幅』になっているのか?これが重要で、これを変えなければ歩幅は変わりません。
では何が『歩幅』を決めるかというと、前回話した軸足の傾きです。(写真(1))
この軸足の傾きがどれくらいかで、その選手の『歩幅』が決まります。(これだけではありませんがほとんどがこの傾きに影響します)
軸足の傾きによって踏み出し足の着地点は変わる
図(1)
図を見てもらえば分かると思いますが、軸足の長さは同じでも、軸足の傾きによって踏み出し足の着地点は変わるのです。傾けば傾くほど着地点は遠くなります。いわゆる『歩幅』が長くなる、ということです。(図1)
『でも軸足傾いていないけど歩幅は広いですよ!』という声が聞こえてきそうですが、それは正しい重心移動をしていません。
軸足の傾きが十分でないのに踏み出し足が広い選手は重心が沈み込むような重心移動ではなく、跳ね上がるような重心移動となり、お尻から重心移動するという正しい重心移動ができずにただ単に着地点が遠くなり、『歩幅』が広くなっているだけなのです。
このような状態で『歩幅』が広くなっても全く意味がありません…
皆さんも自分の『歩幅』がどれくらいなのか?気になることでしょう。それはまず正しい軸足の使い方をしているのか?それからチェックする必要があります。それから軸足で蹴れている選手とそうでない選手でも『歩幅』に変わりは出ますが、まずはしっかりと最低45°の傾きがあるのか?これから始めましょう!!!
これも『結果思考』にならないポイントです。『結果』には原因があるのです。その『結果』を直すためには『原因』を直さなければ変わることはありません。
『調子が悪い…』この言葉を使っていませんか?この言葉を使っている選手は根本的な問題が分かっていない証拠ですよ。『なぜ結果がでないのか?』これを突き詰めないと『結果』は変わりません。
『結果思考』にならないように日々の練習を頑張って下さい!!!
次回はエクササイズについて紹介します。
(文・写真:久保田 正一)