Column

疲労には種類がある

2015.05.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 新学期から一ヶ月余り経ちました。春シーズンでのチーム成績はいかがでしたか?トーナメントを勝ち進んだところ、惜しくも敗退したところと結果はさまざまですが、今回の試合経験を糧にしてまた夏の大会に臨んでほしいと思います。
さて今回は環境や練習、日々の過ごし方などにも慣れてきたところで感じる疲労感とその対応について考えてみたいと思います。

疲れが抜けないと感じるとき

 全体練習ではウォームアップから始まり、クールダウンに至るまで、ケガ予防や疲労へのケアを考慮した内容を行うところが多いと思います。またチーム全体での練習時間が短く限られているときは、練習前に個別に時間をとって準備をしたり、練習後の時間を有意義に使ったりするなど、一人でもできることはたくさんあります。そんな中、いろいろと取り組んでいるのに「何だか疲れが残っている・・・」と感じるときは、一度生活習慣や生活リズムをチェックしてみましょう。思い当たる節はないでしょうか?

睡眠は十分に取れていますか?(個人差はありますが極端に少ない睡眠時間では疲労がたまる一方です)
・寝具は身体にあったものになっていますか?(枕の高さによっては頸椎や背筋などに大きな負担をかける)
・食事はしっかり食べていますか?(量が不十分でもダメ、内容が加工食品に偏っていてもダメ)
入浴は湯船につかってしっかり身体を温めていますか?
(疲労回復には血流をよくすることが大切。シャワーだけで終わっていませんか?)
・自宅でリラックスしているときの姿勢はどうですか?
(特にスマホの画面を長時間のぞき込んでいると背中が丸まり、首や肩周り、背中が痛くなることも)

 こうした生活習慣や生活リズムを一度チェックし、該当するものがあれば改善するようにしましょう。身体のコンディションを良い状態に保つには、普段の生活が大きな鍵を握るといっても過言ではありません。

疲労にも種類がある

運動では筋肉を酷使し「クタクタ」した疲労を感じる

 実は疲労には「身体を動かすことによる疲労」と「身体を動かさないことによる疲労」があります。身体を動かし、筋肉を酷使して練習やトレーニングを行うと、体内に疲労物質がたまり、身体が思うように動かない「クタクタ」になった状態となります。一方、身体を動かさないことによる疲労とは、筋肉の柔軟性が低下して筋肉そのものの動きが悪くなるだけではなく、血行不良につながったり、かたくなった筋肉が神経を圧迫したりとさまざまな不具合を生じ「だるい」と感じるようになります。

 遠征に向かう際、長時間のバス移動などで同じ姿勢を続けていると足がむくんだり、腰が痛くなったりしますよね。こうしたことでも疲労感というのは増すものなのです。さらに極度の緊張や思うような結果が得られなかった場合に落ち込む等、精神的な疲労というものも存在します。

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[page_break:動いて疲労をとる / 長く続く疲労感はオーバートレーニング症候群かも]

動いて疲労をとる

練習後にはジョギングやウォーキングでクールダウンを

 このように疲労はさまざまな状態がありますが、疲れたからといってそのまま寝込んでしまったり、まともに食事をとらなかったりすると、その疲労感はさらに増すことになります。「寝ても寝ても疲れがとれない・・・」という場合は「身体を動かさないことによる疲労」を考えなければなりません。

 運動後のクールダウンは血流を良くすることで疲労物質の分解・代謝を高める効果が期待できます。筋疲労による疲れの場合は、使った筋肉の柔軟性を回復させるためのストレッチを取り入れ、ウォーキングやジョギングなどでほどよく身体を温めて血流をあげることを心がけましょう。

長く続く疲労感はオーバートレーニング症候群かも

 体調が良くないと感じるときに「疲れかな」と思ってそのままにしていると、実は風邪をひいていたり、貧血を起こしていたりすることがあります。なかなか見分けがつかないため、そのままにしてしまいがちですが、「単なる疲れだけではなさそう」「クラクラする」「発熱がある」等、いつも以上に疲労感を感じる場合は早めに医師の診察を受けるようにしましょう。また継続的に長期にわたって疲労感が続く場合にはオーバートレーニング症候群を疑う必要があります。

 過密なスケジュールや練習量の増大、さらには栄養不足、睡眠不足といったことが重なると全身倦怠感、不眠、食欲不振、体重減少、集中力の欠如などがみられるようになります。また症状が進行するとうつ病に類似した兆候があらわれるため、こうした傾向がみられる場合には、疲労回復を優先させながら身体のコンディショニングを整えるようにしていきましょう(参考ページ:第36回オーバートレーニング症候群について)。

 疲労は医学的にも解明されていないことが多いため、なるべく疲労を残さないようにすることで体調を維持していくことが大切です。チームメイトや気の置けない仲間と他愛もない話をしてリフレッシュすることも一つの疲労回復法です。心地よい疲れと十分な睡眠、栄養が毎日の活力につながります。普段から心がけてみてくださいね。

【疲労には種類がある】
●疲労が抜けないときは生活習慣・生活リズムを見直そう
●疲労には「身体を動かすことによる疲労」と「身体を動かさないことによる疲労」「精神的な疲労」がある
●身体を動かし、血流をよくすることで疲労を軽減させる
●疲労と間違いやすいのは風邪、貧血、うつ症状など
●長期にわたる疲労感を感じる場合はオーバートレーニング症候群を疑う
●チームメイトと楽しく話をすることも疲労回復につながる

(文=西村 典子

次回コラム公開は5月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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