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第86回選抜大会注目選手を紹介【投手編】

2014.02.10

第86回選抜大会注目選手を紹介【投手編】

 第86回選抜高校野球大会が3月21日から開幕する。今大会で注目される好投手を取り上げていきたい。

田嶋、山岡と左の好投手が揃う今大会

田嶋大樹(佐野日大)

 今年は左の好投手が主役になる大会ではないだろうか。その中でナンバーワン左腕と呼び声高いのが田嶋 大樹佐野日大)だ。

 最速143キロの直球、キレのあるスライダー、フォークをコンビネーションに打者を封じてきた。制球力も安定しており、打者の懐へ厳しく投げられる制球力がある。今年のドラフト指名候補として期待される田嶋は今大会でさらに評価を高められるか注目だ。

 田嶋とともに注目されるのが山岡 就也広島新庄)だ。広島新庄は昨年、18U日本代表に選出された左腕・田口 麗斗(読売ジャイアンツ ドラフト3位指名)がいたが、山岡は田口に匹敵する好投手だ。速球はすでに140キロ台に達し、両サイドへしっかりと投げ分ける制球力が備わっている。ただ田口は鋭く落ちる縦のスライダーがあったが、山岡は決め球と呼べる球種を見出すことがひとつの課題でもある。

それ以外では技巧派左腕が目立つ。彼らに共通するのは無駄な四球を出さず、直球、変化球をストライクに入れられる制球力があり、投球の組み立てが出来ることだ。春は打力が仕上がっていないチームが多く、投手有利の大会。より多くの投手の活躍が期待できそうだ。

 伊藤 将司横浜)は昨夏、46年ぶりに神奈川大会準決勝、決勝で完封。甲子園初戦の丸亀戦(2013年8月14日)で14奪三振。出所が見難いフォームからキレのある130キロ台のストレート、曲がりの大きいカーブ、スライダー、チェンジアップで打者を封じる。速球が速くなれば、ドラフト候補として注目されていきそうだ。

山岡就也(広島新庄)

 神野 靖大今治西)は球速は130キロ前後ながら、両サイドへしっかり投げ分けるコントロール、キレの良いスライダー、スクリューを投げ分け、打たせる投球を得意とする。選抜ではコントロールの良い左腕が勝ち上がりやすく、上位進出を狙う今治西にとってはキーマンと言っていい存在。

 
石原 丈路福知山成美)は一冬超えての成長が期待されている左腕。肩肘が柔らかく、滑らかな綺麗な投球フォーム。球速は130キロ前半だが、変化球のコントロールが良く、無駄な四球を出さない好投手。体力強化で、球速を高めてほしい。福知山成美からプロ入りした投手では島本 浩也以来。選抜のパフォーマンス次第ではプロ入りが期待される投手だ。

 尾田 恭平(智弁学園)は165センチ60キロの技巧派左腕。球速は130キロ前後とそれほど速くないが、しっかりとまとめられる投球術の上手さ、さらに牽制、クイックの技術も高く、総合力が高い投手。

今井 重太朗三重)が左サイドから投げる球は125キロ前後。決して速くないが、スライダーのキレが良く、打たせて取る投球で、公式戦の防御率は1.17と優秀な数字を残した。

 

[page_break:右投手の注目は岸、山城、飯塚の昨夏甲子園経験者]

右投手の注目は岸、山城、飯塚の昨夏経験者

岸潤一郎(明徳義塾)

 右投手では岸 潤一郎明徳義塾)、飯塚 悟史日本文理)、山城 大智沖縄尚学)らの昨夏の甲子園出場経験者が中心になるだろう。

 岸は3人の中で完成度は一番。最速145キロのストレート、縦横のスライダー、フォークを織り交ぜ、昨夏、優勝候補に挙げられていた大阪桐蔭2013年8月17日)を抑えた。175センチと投手としてはそれほど大きくないのだが、投球センスが優れているので、昨夏よりもスケールアップした投球を見せてほしい。

 飯塚は最速143キロの速球、縦スライダーをコンビネーションにする右の本格派。打撃も素晴らしく、明治神宮大会では3本塁打を放つなど長打力があり、投手よりも野手として高く評価する声もある。優勝候補と期待される日本文理が勝ち進むにはエースである飯塚の成長が不可欠だろう。

 山城は左足を高々と上げて、右足の踵を上げる姿が東京ヤクルトの小川 泰弘と似ており、琉球のライアンと呼ばれている。最速141キロのストレート、スライダー、ツーシームを投げ分け、公式戦12試合で防御率1.13の好成績を残した。さらにスピードを伸ばし、東浜 巨がエースだった2008年以来の優勝を狙う。

 

山城大智(沖縄尚学)

 そして山城とともに注目されているのが久保 柊人沖縄尚学)だ。内外野を守りながら、リリーフとしてマウンドに登る万能型選手。久保は山城よりも速球が速く、常時140キロ台の速球に緩いカーブを投げ分ける。選抜でも自慢の速球を見せたい。

 140キロ右腕といえば田中 空良豊川)は鋭い腕の振りから最速142キロを計測する右のオーバーハンド。初出場を果たした豊川のエースとして初勝利を目指す。

 同じく140キロ右腕の柳川 健大岩国)も面白い。184センチの長身から繰り出す速球と縦に鋭く落ちるスライダーの切れが武器。課題は体重71キロと華奢なこと。しっかりと体作りを行って、選抜ではパワーアップした投球を見せてほしい。

 田嶋 大樹佐野日大)の控え投手・稲葉 恒成は183センチ71キロの長身から140キロを計測する右の本格派。素材は田嶋に匹敵する投手で、選抜の活躍次第ではドラフト候補にリストアップされる可能性を持っている。

 27年ぶり出場の徳島池田のエース名西 宥人は最速139キロのストレートが球速表示以上にキレを感じさせる。四国大会では縦横のスライダー、シンカーを投げ分け、チームを準優勝に導いた。次は27年ぶりの選抜勝利をめざし、さらなるレベルアップを誓う。初出場の美里工のエース・伊波 友和は最速144キロのストレート、フォークを武器に公式戦の防御率0.71と安定感がある好投手。一冬超えて昨年以上の投球を見せれば、ドラフト候補に浮上する可能性を持った投手だ。

 21世紀枠で出場する都立小山台伊藤 優輔はバランスの良いフォームから最速140キロ半ばの直球、キレのあるスライダー、カーブを投げ分ける完成度の高い好投手。海南岡本 真幸も速球が140キロを超える投手として注目される存在だ。

[page_break:3年生に負けないポテンシャルを持った新2年生投手]

3年生に負けないポテンシャルを持った新2年生投手

山田知輝(桐生第一)

 新2年生の投手では永谷 暢章履正社)が注目される。永谷は188センチの大型右腕。既に最速147キロの威力抜群の速球はプロのスカウトから高く評価されている。まだ荒削りで、登板機会は少ないが、大きく育って、2015年のドラフト候補へ登り詰めるか注目したい。永谷と同じ新2年生右腕・溝田 悠人は安定感抜群の好投手。昨秋は溝田が背番号1を背負い履正社のエースとして活躍した。お互い、対抗心を燃やしており、永谷と切磋琢磨しあいながらレベルアップをしてほしい。

 7年ぶりの甲子園出場の桐生第一は2年生エース・山田 知輝が投打の中心。山田は184センチの長身から投げ込む速球は135キロ程度だが、投球をまとめるのが上手い投手。恵まれた体格をしているので、一冬超えてスケールアップしているか注目である。

 初出場の東陵のエース佐藤 洸雅は172センチと投手としては小柄だが、130キロ前半の直球、縦横のスライダーのコンビネーションを武器に昨秋の東北大会準優勝に貢献した。

 

永谷 暢章(履正社)

 駒大苫小牧の1年生右腕・伊藤 大海は昨秋、背番号15を付けながら、最速130キロ中盤の速球、キレのあるスライダー、カーブを投げ分け、全道大会では36イニングで防御率1.25と安定した数字を残した。140キロ超えも期待できる投手で、選抜を舞台に全国クラスの投手に成長していってほしい。

 昨秋、近畿大会優勝の龍谷大平安高橋 奎二は右足を高々と上げる豪快なフォームから最速137キロを誇る本格派左腕。近畿大会で好投を見せ、チームを優勝に導いた。

 2年ぶり関東一の優勝に貢献した左腕・阿部 武士は120キロ後半の速球、落差があるカーブを織り交ぜながら、勝てる投球を見せる。ピンチの場面でも動揺せずに切り抜ける度胸の強さがあり、頼もしい投手である。

 選抜は2回勝てばベスト8。投手力があるチームがモノをいう大会。大会では誰がこの大会の主役を掴むのか注目をしていきたい。

(文:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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