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「女子野球に新しい風を吹かせたい」模索を続ける履正社女子硬式野球部【後編】

2019.12.01

 今夏の全国高等学校女子硬式野球選手権大会で準優勝の結果を収めた履正社女子野球部。[stadium]甲子園[/stadium]で優勝した男子に負けじと女子も活躍を見せている。後編では新チームの取り組みや、野球部と切磋琢磨する姿を伝えていく。

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日替わりヒロインで快進撃を見せた履正社女子硬式野球部【前編】

バントを重点的に取り組み攻撃面を強化

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中阪麻優花主将(履正社女子硬式野球部)

 選手権が終わり、新チームが始動した。主将は1年夏から試合に出ている中阪が投票によって選出された。身体能力の高い中堅手の野坂や1年生にして選手権で4番を任された花本穂乃佳に右翼手の大宅美怜(1年)、決勝のマウンドにも上がった廣瀬など主力となる選手は多く残っている。

 新チームとして初の公式戦となるユース大会では選手権で敗れた作新学院に8対2でリベンジ。幸先良いスタートを切ったが、2回戦で神戸弘陵に延長タイブレークの末、5対6で敗れた。

 「詰めが甘いんですよね。詰めの甘さをこの冬で克服していきたいと思います」と橘田監督はこの大会での反省点を挙げた。確実に取れるアウトを取れなかった反省から取材に訪れた日も実戦形式の守備練習に力を入れていた。

 攻撃面ではバントを重点的に取り組んでいる。「どんなピッチャーが来てもバントができるのが強み」(橘田監督)とバントで確実に塁を進めて、勝負所で適時打を放つのが履正社の攻撃スタイルだ。

 履正社の男子もバントを重要視しながらも、強打で夏の[stadium]甲子園[/stadium]を制した。男子と女子ではパワーが違うため、当然のように野球のスタイルは変わらざるを得ないが、橘田監督は男子のような野球を「目指したいと思いますよ」と言い切る。

 「(男子のような野球を)目指しているけど、みんながパワーを持ち合わせているわけじゃない。強打を育てていくといきながらも確実なバントは必要だなと思います」

 練習には選手の特性に合わせてウエイトトレーニングのメニューを変えるべきではないだろうかといった内容の首脳陣の会話が見られた。一人ひとりの可能性を最大限に発揮させるべく、指導者たちは模索を続けている。

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「女子野球に新しい風を吹かせたい」

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ノックをする橘田恵監督(履正社女子硬式野球部)

 今夏の[stadium]甲子園[/stadium]は準決勝と決勝の応援に駆け付けた。[stadium]甲子園[/stadium]に出た選手と同じクラスで学ぶ女子部員も多くいるそうで、エースの廣瀬は新チームの主将となった関本勇輔(2年)と同じクラスだという。橘田監督も男子の岡田龍生監督と職員室の席が隣同士で、保護者との付き合い方など、多くのことを岡田監督から学んでいるそうだ。

 男子に続いて、女子も日本一という気持ちは当然のように持っているだろう。橘田監督は全国制覇を目指すにあたって、こんな話をしてくれた。

 「全国制覇を目指していくというのは競技スポーツでやっている以上は大切なことだと思っているんですけど、先日、選手たちに『オンリーワンを目指そう』と伝えたんですよね。取り組みとか気が利くとかを含めて全てにおいて日本一を目指す。まだまだですけどね」

 「野球だけじゃなくて、練習の内容、ゴミ拾いとかもしっかりするようにしています」と中阪が話すようにその意識は選手たちにも浸透している。昨年に春夏連覇を達成した大阪桐蔭が「日本一のものさし」という言葉を使っていたが、それに近いものなのかもしれない。

 女子野球は橘田監督の現役時代に比べて格段に競技人口が増えている。来年度からは駒大苫小牧花巻東といった[stadium]甲子園[/stadium]で名を馳せた強豪校が女子野球部を創部することが決まっている。競技全体としてもまだまだ伸びしろがあるスポーツだ。橘田監督は第一人者らしく今後の履正社女子野球部の今後の在り方についてこう語ってくれた。

 「女子野球の中で新しい風を吹かせていきたいと思います。ここまでできるんだというところまで攻めていきたい。女子野球は未知の領域で、やればやれるほど磨けるので、ここにしかないものを磨いていきたいと思うんですよね。競技レベルが高いだけの選手じゃなくて、女子野球の魅力をプレーや言葉で表現できる選手を育てたい。魅力を人に伝えることでこの競技が変わると思います」

 実力だけでなく、女子野球の魅力を伝えられる選手の育成を橘田監督は目指している。最近では女子プロ野球の存続危機がメディアを賑わせているが、そのような状況を考えても女子野球の魅力を発信できる人間の存在は不可欠だ。橘田監督の教え子たちが将来、どんな形で女子野球の発展に貢献していくのかに注目していきたい。

(取材・馬場 遼

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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