侍ジャパンU-18代表 一次候補30名を徹底考察!【投手編】
6月20日、侍ジャパンU-18代表候補30名が発表された。永田代表監督のコメントは
「投打にバランスが取れ、将来性も加味した上で、現時点でベストな選考をしていただきました。短期決戦となる国際試合に臨むうえで重要なポイントは、いかにチームが一つにまとまれるかだと思います。日の丸を背負って戦う以上は、全員がチームの勝利に貢献するという気概を持った選手と共に戦いたいと思っています」
このコメントを踏まえていくと、個人の能力の高さだけではなく、チームプレーなどができる選手、2年生投手が6人選ばれた理由も理解できる。今回は代表30名について考察をしていきたい。
投手は実力派の2年生が多数選出
一次候補に選出された市川、増井、柿木、及川選手
【投手】14名
吉田 輝星(金足農)3年 178/81/ 右右
佐々木 朗希(大船渡)2年 189/81 右右
門馬 亮(藤岡中央)3年 177/82 右右
井上広輝(日大三)2年 180/74 右右
板川佳矢(横浜)3年 173/70 左左
及川 雅貴(横浜)2年 182/74 左左
直江 大輔(松商学園)3年 184/77 右右
奥川 恭伸(星稜)2年 182/81 右右
岡林 勇希(菰野)2年 176/71 右左
増居 翔太(彦根東)3年 171/64 左左
柿木 蓮(大阪桐蔭)3年 181/87 右右
西純矢(創志学園)2年 184/79 右右
市川悠太(明徳義塾)3年 184/75 右右
川原 陸(創成館)3年 184/78 左左
まず吉田 輝星(金足農)は、この春で評価を大きく高めた右の本格派。下半身主導の投球フォームから繰り出す140キロ台のストレート、カーブ、スライダーを巧みに投げ分ける好右腕。東北大会で好投を見せ、評価を大きく上げた。
佐々木 朗希(大船渡)は最速153キロを誇る大型右腕。打撃センスも高く、第二の大谷翔平として期待されているスター候補生である。ここまで全国大会だけではなく、地方大会の出場もなく、ベールに包まれた投手である。一次候補に選ばれたことで、一気に注目度が高まった。
門馬 亮(藤岡中央)は、真っ向から振り下ろすオーバーハンドで、140キロ台の速球と縦スライダーを武器に秋では48回1/3を投げて、66奪三振、与四死球9。奪三振率は12.99、与四死球率は1.68と優秀な数字を残した。しかし春は不調に終わり、ベスト8敗退。それでも潜在能力の高さを評価された形となった。夏には復活したピッチングを見せることができるか。
井上広輝は細身の体型ながら140キロ後半の速球を投げ込む速球派右腕。しっかりと指にかかった145キロ前後のストレートは回転数が高く、空振りが奪える。スライダー、シンカーを巧みに投げ分ける姿は、2011年の夏の甲子園で優勝投手となった吉永健太朗を彷彿とさせる。この夏には150キロを計測してもおかしくない右腕。故障することなく、夏を迎えることが出来るか。
板川は、今年の高校生左腕で最も勝てる要素を備えた投手だ。回転数が高い140キロ前後のストレート、スライダー、カードを内外角に巧みに投げ分ける投球術、クイック、牽制、フィールディング技術とすべてにおいて優秀。その証拠に関東大会では明秀日立、招待試合では常総学院を相手に1失点完投勝利。全国を代表する強力打線を抑えたことは大きなアピールとなった。
及川 雅貴(横浜)は、板川と対照的に剛速球で押す左腕。特にリリーフ時に投げ込む常時140キロ後半の速球と130キロ台の高速スライダーの切れ味は、高校生の範疇を超えている。中学時代は侍ジャパンU-15代表を経験。二世代続いての代表入りも現実味が帯びてきた。
直江 大輔(松商学園)は昨夏の甲子園でデビュー。細身の体型から140キロ前半のストレートとスライダーを武器にする投手だ。昨夏での課題だった球威不足を解消できているか。夏へ向けてのチェックポイントとなりそうだ。
2年生ながら選出された奥川 恭伸(星稜)。最速146キロのストレート、130キロ前後のカットボール、フォークの切れ味は一級品。奥川の良さは力の強弱にあり、普段は130キロ中盤だが、ここぞという場面では140キロ中盤の速球で押す巧さがある。ただこのピッチングで国際大会で通用するかは不透明。やはり力を抜いてでも、140キロ前後を投げられるエンジンは夏までに求めていきたい。
岡林 勇希(菰野)は、1学年上のエース・田中法彦の影に隠れているが、田中にはないボールの角度、球筋の良さがある本格派右腕。現時点の球速は145キロ前後だが、夏までにはさらに本格化する可能性を持っている。
柿木 蓮(大阪桐蔭)は、右オーバーから威力抜群の140キロ中盤のストレートとスライダーで勝負する本格派。ただ柿木はコンディションの状態がはっきり表れる投手で、調子が悪いと、130キロ後半で見栄えがしない。夏までに、ストレートのスピードのアベレージを高めることができるか。
増居 翔太(彦根東)は、選抜の花巻東戦で、9回まで無安打無得点を記録した左腕。一番のウリは球持ちの良いフォームから繰り出す140キロ前後のストレートだ。回転数が高く、空振りが奪えるストレートはこの春になって勢いが増した。制球力も高く、走者を背負ってからの粘り強さもある。実践力が高い左腕として頼りになる存在だ。
西純矢(創志学園)は2年生ながら150キロに迫る右の本格派。130キロ前後のスライダーの切れも素晴らしく、来年のドラフト候補だ。
高校生ナンバーワンサイドハンド・市川悠太(明徳義塾) は沈み込んでから、右サイドから145キロ前後の速球は切れ味、勢いは高校生のレベルを超えており、大学生を見ているように錯覚させる投手だ。さらに右打者、左打者問わず内外角へ厳しく投げこむ制球力、度胸の良さも持ち併せている。ただ選抜や、その後の試合を見ても、市川の能力の高さからすれば失点が多い。冬場からずっと取り組んできたシンカーなど、ピッチングが完成すれば、簡単に攻略できない投手となるだろう。
川原 陸(創成館)は選抜では3試合に投げて、防御率3.18と思うような成績を残すことはできなかったが、指にかかった時の130キロ後半のストレートは重量感がある。ただそれを生かし切れていないのが課題だろう。
[page_break:投手は例年8名 夏次第では総入れ替えの可能性は大いにあり]投手は例年8名 夏次第では総入れ替えの可能性は大いにあり
夏次第では代表入りも考えられる古谷、松本、米倉、矢澤選手
永田監督は「将来性を加味して選んだ」と語るように、今回、2年生6人を一次候補に選出。6人とも3年生投手に大きく上回る球速を計測する投手もいれば、実戦力も将来性を兼ね備えた投手もおり、この中から何人か選ばれてもおかしくないし、来年の世界大会の候補選手として注目するべきだろう。
選ばれるのは例年8名。一次候補に選ばれた3年生投手の今年の内容を見ても、メンバー総入れ替えは可能性は高い。ではどんな投手がいるのか?
右投手では、150キロを超える速球を投げ込む田中法彦(菰野)、140キロ後半の速球と縦割れのカーブを武器にする米倉貫太(埼玉栄)、滑らかな投球フォームから140キロ前半のストレートとカーブを武器に、試合状況によって力の抜き方が上手い古谷拓郎(習志野)、最速151キロ右腕・引地 秀一郎(倉敷商)、190センチの長身から角度のある140キロ後半の速球を投げ込む土居豪人(松山聖陵)が面白いだろう。
左投手は、矢澤宏太(藤嶺藤沢)、松本晴(樟南)の2人が面白い。矢澤は140キロ後半の速球と切れ味鋭いスライダーを投げ込み、さらに打者としても高校通算本塁打が30本を超えるように長打力もある。松本は140キロ前半のストレートと125キロ前後の高速スライダーを武器にする好左腕。競争は限りなく激しい。
文=河嶋宗一