徳山壮磨(大阪桐蔭ー早稲田大学)「大阪桐蔭のエースへ。努力を継続した3年間」
昨春のセンバツでは39イニングを投げて防御率1.62をマーク。全5試合で勝利投手となり、エースとして大阪桐蔭(大阪)を優勝へ導く活躍を見せた徳山 壮磨投手。今春からプレーしている早稲田大でも、東京六大学リーグ第4週の東大戦で早くも初勝利を挙げるなど期待にたがわぬ結果を残しているが、その徳山投手に高校時代の3年間を振り返りつつ、この春、高校球児となった選手の皆さんへアドバイスを頂いた。
入学のキッカケとエースへの険しい道のり
インタビューに答える徳山壮磨(早稲田大)
「小学生の時、藤浪晋太郎さん(阪神)が甲子園で春夏連覇するのを見て、ずっと大阪桐蔭に憧れていました」と話す徳山投手。それから4年後、見事にその大願を叶えて希望通りに入部したわけだが、エースへの道は前途多難だった。
同期の20名はいずれも精鋭揃い。なかには日本代表に名を連ねた経歴を持つ選手もいたうえに、「練習は厳しいし、寮生活でそれまで母親がやってくれていたことも自分でやらなければならず、一日を乗り切るのがたいへんでした」。それでも6月にはシートバッティングでバッティングピッチャーを務める機会が訪れたが、「当時3年生で、今、東海大でプレーしている藤井健平さんに特大のホームランを打たれました。その時は悔しいというよりも『すごいなぁ』という気持ちのほうが強かったですね」と振り返る。
そんな、自身の力不足を思い知らされるような厳しい状況ではあったが「自分は挑戦者のつもりで、上を見てやっていくだけ。どんな時も腐らずに3年間をやりきるんだ」と、心に決めていたという。もちろん自信もあった。「先輩やキャッチャーから『球質が良くて、伸びしろがある』と声を掛けられていました」と言うように1年秋にはベンチ入り。また「当時、身長は180cmあったんですが、体重が65kgしかなくてガリガリだったので、『体が大きくなれば他のピッチャーにも負けない。エースになれる』と思っていました」。
そこで、冬のオフシーズンには地道なトレーニングに取り組んだ。「自分は体が弱く、西谷(浩一)監督からも『まずは体作り』と言われていたので、走り込みやウエイトトレーニングは人一倍やりました。特にキツかったのはポール間を片道10本走るのですが、それを毎日3~4セット。それ以外にも坂道ダッシュや、低いネットを左右にジャンプしながら飛び越えたりして下半身を鍛え、体に芯を作ることを意識しました」。その甲斐もあって、2年の春を迎える頃には球速が138km/hから143km/hへアップ。「体も見た目から強くなった感じがしましたし、ボールを投げる時のバランスも良くなって安定感がかなり増しました」
ところが、同時期に徳山投手はスランプに陥ってしまう。「紅白戦に登板したのですが、マウンドに立ったら足が震えてしまって……。ビビっていたんだと思います。それで四球を怖がって投げたらボコボコに打たれてしまって、1イニング6失点ということもありました。そういう状態がしばらく続いて、自分でもいろいろ試してみたのですが、全然、良くならなくて苦しんでいました」。
タイミングの悪いことに、悩める徳山投手をさらにどん底へ突き落とす出来事があった。「春のセンバツのメンバー発表があったのですが、最初の第一次選考で外されてしまったんです。あの時はめちゃくちゃ悔しくて、泣きながらポール間を走っていたのを覚えています」。
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甲子園で身に付けた自信とライバルへの対抗心
徳山壮磨(大阪桐蔭時代)
そんな傷心の徳山投手を救ったのは両親だった。「どうしたら良いのかも分からず両親に電話をしたのですが、その時『メンバー外なんだから、もう怖がることはない。お前は思い切り投げるだけだ』と言われたんです」。この言葉に奮い立った徳山投手は気持ちを切り替え、西谷監督にシートバッティングからマウンドに上がることを直訴。「チャンスを絶対に掴んでやる」という思いを込めてボールを投げ続けた。
すると、調子はグングンと上昇。故障者が出たこともあってセンバツ直前の最終登録でメンバー入りすると、そのまま甲子園でも初戦の土佐(高知)戦で大舞台を経験。直後の春季大阪大会では腰に不安があった高山 優希(日本ハム)に代わって、エースの象徴である背番号1を大阪桐蔭に入ってから初めて背負うまでになった。
その後は順調に成長を続け、3年時は春夏連続で甲子園に出場。「センバツは部員全員の力で優勝することができたので、本当に嬉しかったです」と、徳山投手。実は、大会直前の練習試合は今ひとつだったのだが、「甲子園では試合を重ねるごとにどんどん良くなっていったので、『甲子園が自分の実力を大きく成長させてくれた』と感じていました」と話す。
きっかけとなったのは2回戦の静岡(静岡)戦。1点もやれない状況からリリーフして好投し、逆転勝利に導いたのだが「その試合から自信が付いてピンチの場面でも打たれる気がしなくなりました。大会が終わってからも、『打てるものなら、打ってみろ』と上から打者を見下ろすような気持ちで投げることができましたし、甲子園で付けた自信というのは本当に大きなものだったと思います」。
さらにはU-18侍ジャパン代表にも選出され、昨年9月「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」に出場。チームの開幕投手を務めるなど3試合に先発し2勝を挙げた。「有名な選手が多く良い刺激になりましたし、投手陣のなかでは田浦文丸(ソフトバンク)と仲良くなって、チェンジアップの握りを教えてもらったりしました」。また、プロへ進んだ同級生も多く、清宮幸太郎(日本ハム)は一軍でプレーもしているが、「4年後を見ておけよという感じで、今は焦らずにいきたいです」と、大学の4年間でじっくりと力を蓄えることを誓った。
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不屈の精神を持って取り組み続けて欲しい
そんな徳山投手に技術面も伺ってみたが、フォームについては体が開かないようにすることに気を配っているそうで、そのためにいつも行っているのがロッキングだ。
あらかじめ片足を前に大きく踏み出しておいて、軸足から前足へ体重移動をしながら腕を振るのだが、「上体が前につっこんでしまってはいけないので、ロッキングをすることで左足を地面に着けてから体の軸を回転させて投げる意識付けをしています。今、キャッチボールと投球練習をするときは、まずロッキングから始めるくらい自分にとっては大切なものです」。
ロッキングの動作を取り入れた投球フォーム
また、前田 健太投手(ドジャース)のフォームを参考にしており、「左足を下ろす時、一度、足の裏を打者に見せるように動かすのですが、そうすることで力を溜めてから投げることができるんです」と、独特な動きを解説。また、リリースにも気を使っており、「自分はスピードにはこだわりがなくて、リリースの時にスピンをかけて球質を良くすることの方が大事だと考えています。イメージとしては、ずっと上半身を脱力しておいて、最後のボールを離す瞬間に0から100へと力を込める感じですね」と、コツを教えてくれた。
そして、最後に今年から高校球児となった皆さんへメッセージをもらった。「新入生の頃は右も左も分からないと思いますが、まずは高校の環境に慣れることが一番だと思います。そして、自分はこうなりたいという大きな目標を立てて、毎日の練習に励むこと。そのなかで挫折があるかもしれませんが、自分は『試合で打たれるくらいなら、練習をやるべき』と思って、与えられた課題はすべてサボらずにやってきたつもりです。そうやって、やるべきことを積み重ねたことで、自分は『大阪桐蔭でエースになって、甲子園で優勝する』という目標を実際に叶えることができました。ですから、高校1年生の皆さんも夢を持って頑張ってほしいです」
徳山投手が大きな夢を実現させることができたのは、苦しい時も決して折れない強い信念があったからこそなのだ。
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文=大平 明