Column

集中力について考える

2015.10.30

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 練習や試合で「集中力を出せ」「集中して取り組まないとケガにつながる」と言われたことのある選手は多いと思います。ここ一番の集中力がパフォーマンスに結びつき、試合でいい結果に結びついたというような経験もあるでしょう。ではその「集中力」はどのように高め、どのように発揮すればよいのでしょうか。今回は練習や試合に必要となる集中力について、脳の習性やフィジカル面でできることを中心にお話をしたいと思います。

やる気を高めることで集中力を引き出す

バッターボックスでの集中力を発揮する

 集中力が長時間持続しないのは脳が疲労するからではなく、脳内で分泌されるドーパミンというホルモンによる影響が大きいと言われています。ドーパミンが分泌されることによってやる気が起こり、一つの物事に対して意識を集中させること、すなわち集中力が高まります。

 野球が上手くなるための練習や試合はすべてが楽しいことばかりではなく、肉体的にも精神的にもキツいなと思う時もあるでしょう。その中で「今日はこういうところを練習で克服する」とか「これが出来るようになる」といった目標を設定して練習をすることで、今のプレーや練習時間が目標達成のために必要なのだという目的意識を強く持つことにつながります。

 こうした目標や目的意識はたとえば「将来プロ野球選手になる!」という大きく漠然としたものではなく、少し努力を続けるだけで達成可能なものにするとよいでしょう。ちょっと頑張れば手が届きそうなもの、という目標を立てて毎日練習をしてみると、自然とその目標に向かって集中できるようになります。

ごほうびと時間制限

 目標を立ててそれに向かって取り組み、目標を達成したときには自分なりのごほうびを用意しておくことも、やる気のアップにつながります。やる気が高まれば自然と集中力も高まってくるでしょう。「これが出来たら、楽しみにしていた漫画を読む」とか「おいしいものを食べる」とか。気になっていたウエアやシューズを購入するというものでもいいかもしれませんね。こうしたごほうびを準備しておくとワクワク感が増し、想像しただけで脳内ではドーパミンが分泌されるといったことが起こります。またこうしたやる気をもたらすためには、ある程度時間を区切った方がよりよい成果が得られると言われています。

「何が何でも出来るまでいつまででもやる!」というのではなく、「限られた時間の中で最大限の努力をする」ということ。階段を一歩ずつ上るように少しずつ積みかさねていくことこそ、野球が上手くなる秘訣ではないかと思います。

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[page_break:適度な緊張状態を保つ / 集中力を高めるために必要なコンディション]

適度な緊張状態を保つ

「大きな大会においても平常心を保って試合に臨む」というのは皆さんの理想とするところだと思います。ある程度緊張してしまうのは仕方ないところですが、逆にまったく緊張しない状態であってもパフォーマンスには悪影響を及ぼすと言われており、適度な緊張感を持ち続けることが大切です。緊張感をある程度、自分でコントロールするためには、まず呼吸に注目してみましょう。呼吸は自律神経によってコントロールされ「吸う」「吐く」を繰り返します。

 空気を吸うときは交感神経が優位になって心拍数が増え、緊張状態をつくり出します。逆に空気を吐くときは副交感神経が優位になって心拍数が減り、緊張状態から解放されてリラックスした状態をつくり出します。深呼吸をして深く息を吐くと心身ともに落ち着いてくるのは、こうした自律神経の影響によるところが大きいと考えられます。

集中力を高めるために必要なコンディション

 脳の習性を知り、呼吸によって緊張感をコントロールしても、身体の状態がよくなければやはり集中してプレーすることはむずかしいでしょう。身体のコンディションを整えるために、まずはキチンと睡眠時間を確保して休養を十分にとるようにします。風邪を引いたり、花粉症やアレルギー性鼻炎などで鼻がつまったりしていると、呼吸がしづらくなり、睡眠が浅くなって熟睡できないといったことが考えられます。

オメガ3を含む魚はぜひ食べたいものの一つ

 頭痛や鼻づまりの状態ではプレーそのものに集中できないばかりではなく、パフォーマンスレベルも落ちてしまうのです。こうしたことにならないよう、風邪予防対策を行ったり、あらかじめ病院で治療を受ける等のプレーに対する準備が必要となってくるでしょう。

 また栄養面では、バランスのよい食事をとることなどを心がけましょう。試合前日であれば、体調を崩さないようにすることをまず優先させる必要があります。食事内容としては、胃腸に負担のかかる脂っこいものや食あたりを起こしやすい生ものは避け、消化のよいもの、身体を温めるもの、エネルギー源となる炭水化物を中心にとるようにします。また牛乳や乳製品、小魚などに含まれるカルシウムは神経の過度な興奮を抑え、気持ちを安定させることに役立つと言われていますので、こうした食品も選んで食べるようにするとよいでしょう。

 魚には筋肉痛などの炎症反応を抑える働きがある不飽和脂肪酸「オメガ3」が含まれており、アスリートとしては積極的に食べるようにしたいものの一つです。ただし試合前日であれば、お刺身ではなく、焼き魚など火を通したものにしてくださいね。

【集中力について考える】
・やる気を起こすことが集中力を引き出すことにつながる
・少し頑張れば手が届くレベルの目標を常に持って練習・試合に臨む
・目標を達成したときのごほうびを設けたり、時間を区切ることでさらに集中力を高める
・呼吸によって心拍数が変化し、緊張状態をある程度コントロールすることができる
・身体のコンディションを整えるために睡眠時間を確保し休養に努める
・試合前日の食事は体調を崩さないようなものを選ぶこと

(文=西村 典子

次回コラム公開は11月15日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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