スポーツ選手と花粉症
花粉症と上手に付きあおう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
いよいよ高校野球の対外試合も解禁となりました。本格的な野球シーズンの幕開けですね。そして同時にこの時期は花粉症に悩まされる選手も多いのではないでしょうか。
野球は屋外で行うスポーツなので花粉症の選手にとっては、つらいシーズンかもしれません。今回は花粉症と何とか上手につきあっていく方法を考えてみたいと思います。
花粉症は現代の日本人の4人に1人がかかるとも言われている、花粉が原因で起こるアレルギー反応です。
風邪の症状ともよく似ているため、実際は花粉症なのに「風邪だ」と思い込んでいる人も多いそう。次のチェック項目が当てはまる場合は花粉症を疑いましょう。
・突然、くしゃみが続けて出る
・外出時や窓を開けた時などにくしゃみ、鼻水が出る
・時と場合により、鼻水の症状が出たり、出なかったりする
・毎年、同じ時期に症状が出る
・家族の中にアレルギー体質の人がいる
花粉が飛散する屋外でプレーをする選手は一般の人以上にアレルギーに対する対策が必要となってきます。花粉症かなと思ったら早めに医療機関(耳鼻咽喉科)での適切な診察と治療を受けることをまずは優先させましょう。その上で花粉症とうまくつきあっていくために自分でできることとして「花粉との接触をなるべく避けること」「花粉を洗い流すこと」「花粉へのアレルギーを緩和するための対策を取ること」と大きく3つに分けて考えてみましょう。
【花粉との接触をなるべく避けること】
花粉との接触をなるべく避けることとしては、花粉の侵入を防ぐためのマスクやメガネ、帽子の着用などがあげられますが、野球のプレー中にマスクをすることは現実的ではありません。かといって何も対策をしないままではつらい症状は変わりませんので、花粉へのアレルギーを緩和するための対策とあわせて行う必要があります。メガネに関してはスポーツ時にも装着できる花粉症対策のゴーグルなどがありますので、目のかゆみや充血などで症状がひどい場合は使用を検討するとよいでしょう。
練習後は衣類などについた花粉を自宅に持ち帰らないように、玄関先などで花粉をよく払ってから入ることを心がけます。また自宅では、ぬれ雑巾などでの拭き掃除を中心にこまめに掃除をする習慣をつけましょう。また空気清浄機の中には花粉を除去できるものなどもあるので、上手に使いたいものです。
今年も花粉の季節がやってきた
【花粉を洗い流すこと】
付着した花粉を取り除く方法として、洗眼やうがいは一番簡単で効果的な方法です。帰宅後は必ず行うように心がけましょう。
またコンタクトを使用している場合は、きれいに洗っていつも清潔な状態で使えるように管理します。洗眼カップは他人と共有してしまうと眼病などの感染のおそれがありますので、他人と共有せず、各自がそれぞれ所有して使うようにしましょう。
また鼻の粘膜についた花粉を洗い流すためには、水を鼻から吸って口から出す鼻うがいが有効です。ただし水道水は体液とは浸透圧が違うので、そのまま鼻に入れてしまうと「ツーン」とした刺激が強く残ってしまいます。鼻うがいには生理食塩水(0.9%食塩水、体液とほぼ同じ浸透圧となる)か鼻うがい専用液を使用して行うようにしましょう。方法としては鼻の片方の穴をふさいだ状態でもう片方の穴から生理食塩水を吸い込んで、口から出す。これを左右の鼻の穴から何度か繰り返して行います。鼻うがい後は鼻をかまずに(中耳炎などを起こす場合があるため)頭を下に向けると残った水が出てきますので、拭き取るようにすればOKです。
【花粉へのアレルギーを緩和するための対策を取ること】
花粉症対策として最もよく知られているのは薬による対策方法。病院を受診することによってアレルギー診断を行い、症状や生活スタイルにあわせて内服薬・点鼻薬・点眼薬などを処方してもらいます。また市販薬については薬剤師さんと相談の上、処方してもらうことができます。ただ花粉症の薬の中には眠くなるものやドーピングの禁止薬物が使用されているものなどもあるので、なるべくスポーツに詳しい医師・薬剤師の方に相談することをオススメします。
また食生活の面からは、ビタミンやミネラルなどを上手にとることで花粉症の症状緩和が期待できると言われています。花粉症の症状である鼻や目の炎症やかゆみは、体内の活性酸素が増えると悪化するため、高カロリーで添加物の多い加工品はなるべく控えてバランスの良い食生活を心がけましょう。甘い物や香辛料などの刺激の多い食べものも、症状を悪化させてしまうことがあるため、この時期は自分の症状と相談しながら適度にとるようにしましょう。
あまりにも症状がつらいと野球のプレー中にも集中力や判断力が低下し、プレーに影響が出るだけでなく思わぬケガにもつながりかねません。「この時期は気合いで乗り切る!」という前に、医療機関での適切な治療や自分でできることがあります。我慢せずになるべく早く対策をとるようにしてくださいね。
参考雑誌)self doctor 2012春号
【花粉症とうまくつきあおう】
●花粉症と風邪の区別がつかないときは早めに医療機関を受診しよう
●花粉との接触を避けるためにはゴーグル、空気清浄機なども便利。掃除もこまめに行おう
●花粉を洗い流すための「鼻うがい」は効果的
●鼻うがいを行うときは生理食塩水か専用液を使用すること
●花粉症対策として最もよく行われているものは薬物療法
●気合いで乗り切る前に早めに対策をとろう
(文=西村 典子)
次回、第41回公開は03月30日を予定しております。