Column

好投手、好打者、強打者揃いの仙台育英。真のウリは?【前編】

2021.03.18

 今年はエース・伊藤樹、主砲・吉野蓮などタレントを擁して宮城県大会9連覇。そして東北大会も連覇達成。OBには佐藤由規上林誠知郡司裕也など数多くのプロ野球選手を輩出。高校野球に携わる人間であれば全員が知っている名門・仙台育英

 須江航監督が2018年1月に着任して今年で4年目。「過去3年間からアップデートしているので、濃い内容ができています」と十分な手ごたえを感じている現在のチームに今回は迫っていく。

日本一からの招待

好投手、好打者、強打者揃いの仙台育英。真のウリは?【前編】 | 高校野球ドットコム
伊藤樹(仙台育英)

 この言葉を掲げ、現在も活動を続ける仙台育英。昨秋は県大会9連覇、東北大会連覇と今年も仙台育英の存在を大きく知らせることとなった。この結果について「選手みんなで励まし合いながら成長できたことが大きかったです」と島貫丞主将は語る。

 ただ須江監督の目には新チームの姿はこのように映っていた。
 「まず投手力が高いですね。あと走力は全国屈指だと思っています。ですので、打力さえ伸ばしてあげれば得点力が変わっていくシンプルかつトーナメントを勝ち上がるのに最適なチームでした」

 投手陣をまとめる伊藤も今年のチームについて「今年は足を使える選手が多いです」と説明する。加えて伊藤、そして吉野からは「この学年は野球の本質を分かっている選手が多い」と思考力の高さも、これまでの学年にはない強みだと実感している。

 これらの武器を発揮するべく、秋季大会までの期間は試合をこなしながら守備力と走力を徹底的に磨いていった。選手たちが語っていた野球の本質とはどんなことを指しているのだろうか。その答えは須江監督によって明かされた。

 「野球というスポーツの競技性をきちんと考えると、陣取りゲームだと思っています。人がベースという陣を取っていきながら、ホームを取れれば得点になるゲームなので、走力が一番大事な要素になってきます」

 先述したが、昨秋9試合で34盗塁を記録しているように、数字面からでも走力の高さが伺える仙台育英。その秘訣として、「リードの距離は1センチ、1ミリまでこだわって練習をしています」と吉野が語るように、それほどまでに須江監督は「走力」を重要視して、野球というスポーツに向き合っている。

[page_break:長打力=打球速度+飛距離]

長打力=打球速度+飛距離

好投手、好打者、強打者揃いの仙台育英。真のウリは?【前編】 | 高校野球ドットコム
木村航大(仙台育英)

 では須江監督のなかで選手たちにどれほどのスピード感を求めているのか。
 「最低基準は一塁駆け抜け3.8秒。求めるものは3.7秒ですね。3.5秒を計測するようならチームでもトップクラスのレベルにありますね」

 選手それぞれのスイングが異なるため、公平を期すためにもあえてバットを振ってからスタートをせずに、きちんと構えた状態からスタートを切らせる。しかも主導でタイムを計るのではなく、センサーでタイムが計測できる光電管を使用するこだわりぶり。

 他にも盗塁のタイムにも設定タイム3.25秒を設けるなど、選手たちには数字を明確に提示することで指揮官の求めるレベルを伝えている。

 だが走力が劣る選手もなかにはいる。そういった選手たちが、残り少ないスタメンの座をかけて勝負する項目が長打力だと須江監督は解説する。
 「ウチでは長打力=打球速度+飛距離と定めています。打球速度は速ければ野球の間を抜いてヒットになります。飛距離に関しては、たとえアウトになっても遠くに飛ばせればランナーを進めることが出来ます。なので、この2つの要素を合わせて長打力として、選手たちを比較します」

 その他に、相手に陣(ベース)を取らせないための守備範囲、投力といったファクターを見ていきながら、スタメンやベンチ入りの選手たちを絞っていく。これが須江監督のスタイルなのである。

 だから選手の育成方針も既に明確だ。須江監督は毎年、毎月の3つの目標を明記した年間スケジュールを選手たちに提示。それを通じて巧い選手ばかりではなく、スケールの大きい選手を育て上げる。つまり、勝利と育成の両立を成り立たせるようなスケジュールを組んでいるのだ。

 こうしたスケジュールや数字を測ることに「自分のレベルがわかって何を伸ばせばいいのか。取り組みが変わります」と主砲・吉野は実感。主将の島貫もチームをまとめる上では効果があることを語っていた。
 「この時期に何を伸ばせばいいのか。目標を選手間で話し合って確認しながら練習が出来るので、テーマ性をもって練習ができています」

(取材=田中 裕毅

関連記事
選抜優勝候補・仙台育英の初の日本一達成に欠かせないキーマン
選抜に挑む頑張る球児たちや母校へ熱いエールを届けよう!
スーパー中学生から147キロ右腕となった伊藤樹(仙台育英)がぶつかった高校野球の壁 vol.1
スーパー中学生と騒がれて約2年。伊藤樹(仙台育英)はいかにして復活したのか? vol.2
好投手・伊藤樹(仙台育英)の投球フォームを支える7つの球種とドリルを解説!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.06

大阪桐蔭が選抜ベスト8の阿南光ら4チームと対戦!<招待試合>

2024.06.06

大阪桐蔭&履正社撃破の原動力! 超高校級遊撃手・今坂 幸暉(大阪学院大高)のドラフト指名はあるのか!?<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.06.06

【佐賀】敬徳は唐津東と唐津南の勝者と対戦<西北部地区大会>

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・近畿地区】近畿一番乗りの抽選は17日の大阪、4府県が7月6日に開幕

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・北信越地区】新潟で21日に抽選会、7月5日の富山で組み合わせが出揃う

2024.06.01

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.04

神村、鹿実の壁を破れ! 国分中央は「全力疾走・最大発声・真剣勝負」で鹿児島の頂点を狙う

2024.06.01

【愛知】報徳学園は豊橋中央にサヨナラ勝ち、豊川には黒星<招待試合>

2024.06.01

【東京六大学】早稲田大が大勝で7季ぶり優勝に大手!プロ注目スラッガー・吉納が2発、エース伊藤は8回1失点の快投見せる!

2024.06.01

報徳学園の今朝丸がセンバツ決勝戦以来の先発!モイセエフは3番センターでスタメン出場!【招待試合スタメン】

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに