ミレニアム世代のトッププロスペクト Vol.13「宜保翔、勝又温史」
ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回もドラフト候補としてハイパフォーマンスが期待される逸材を追っていく。
宜保翔(未来沖縄)身体能力とクレバーさを兼ね備えた沖縄の二刀流
宜保翔(未来沖縄)
投げれば最速147キロのストレートを投げ込み、打っても巧打を連発。走っても塁間タイムが最速の3秒7とまさに抜群の身体能力を持った二刀流。そんな宜保は小さいときから野球以外の競技に取り組んでいる。小学校に入る前から水泳、両親が取り組んでいたバレー、そして小学校から野球を始め、小学5年生で出場した60メートルハードル走では9秒9をたたき出した。
未来沖縄に進むと、1年秋には1年生大会優勝を収めるなど、下級生の頃から頭角を現していたが、2年夏は初戦敗退。2年秋にはベスト8を狙った3回戦で具志川商に敗れ、長い冬を過ごす。ここで宜保は覚醒のきっかけをつかむ。主力投手が立て続けに故障し、遊びで入ったブルペンで140キロ台の速球を投げていた宜保に、白羽の矢が立った。投手を兼任した宜保は3年春では主力投手として好投。決勝戦の興南戦で最速145キロをマークするなど、優勝に貢献した。
九州大会でも好投を見せた。宜保は県大会までオーバー、サイドを使い分けていたが、以後はひじの負担を考え、オーバーに専念。そして力まないよう、8割~9割の力で勝負をした結果、この試合では常時130キロ前半~143キロの速球、120キロ前後のスライダー、チェンジアップ、さらに125キロ前後のワンシームを内外角に散らし、れいめい打線を5回まで無安打に抑える完璧な内容。準々決勝の八幡戦でも打者として4打数2安打1打点3得点の活躍。八幡戦でも相手のスキをついてセーフティバントを試みるなど頭脳的なプレーを披露した。
宜保は沖縄大会でも投打で活躍。3回戦では秋に敗れた具志川商と対戦。8回表に1点を勝ち越し、2対1で辛勝。宜保は1失点完投勝利を挙げた。
この夏は惜しくも甲子園出場はならなかったが、それでも投打ともに魅力たっぷりな逸材は次のステージで輝きを放つはずだ。
[page_break:勝又温史(日大鶴ヶ丘)関東最速右腕が目指すは全国最速右腕と甲子園出場]勝又温史(日大鶴ヶ丘)関東最速右腕が目指すは全国最速右腕と甲子園出場
勝又温史(日大鶴ヶ丘)
今年の関東地区最速右腕だ。テークバックを大きくとって豪快に振り下ろすオーバーハンドで、ストレートの最速は152キロ。春季都大会以降の練習試合では常に140キロ後半を計測するなど、仕上がりの状態は良く、変化球も手元で大きく曲がるカーブ、スライダー、130キロを超えるカットボールなど変化球の精度も非常に高い。順調に球速をアップしている。
1年秋には142キロ。2年夏には147キロとレベルアップしていったが、2年秋の早稲田実業戦で最速145キロをマークするも1.1回を投げ、6失点と大荒れなピッチングに終わり、もう一度、ピッチングを見つめ直した。
萩生田博美監督とマンツーマンで投球フォームを作り上げた。一番の課題は制球力、変化球の精度。萩生田監督は勝又の将来を考え、勝又のダイナミックなフォームを基本線として、そこからフォームを固めた。
また腕が横振りになるので、スライダーは極力を投げさせないなど、目先の勝利ではなく、高いレベルでプレーするためのフォーム指導を行った。
その指導は少しずつ身を結びつつある。4月6日の創価戦では3回2失点たったものの、ストレートは最速147キロを計測。5月の桐蔭学園戦でついに150キロを計測。勝又としては目標としていた球速に達した。でも勝又自身、スピードにはこだわりはない。とにかくチームを勝たせたい。その一心である。
萩生田監督は「勝利を求めようと小さくまとまらず、とにかく勝又温史の持ち味である思い切り腕を振って、力強い投球をしてくれれば」と持ち味を見失うことなく、自分の投球をしてほしいと期待している。
この夏では明大中野八王子戦で、最速151キロを計測したストレートを武器に4回無失点の好投。順調に状態は上がってきている。
関東最速右腕から全国最速右腕へ。その称号をとともに4年ぶりの甲子園出場をつかんで見せる。
文=河嶋宗一