試合レポート

東浦vs豊田

2021.07.18

緊迫の投手戦は8回の攻防で決着、東浦がシード校の意地を示す

 この日から3回戦に突入した愛知大会。いよいよシード校も登場となり、大会は佳境に入っていくことになる。今大会、公立校で唯一のシード校8校の中に名を連ねたのが東浦だ。近年は、21世紀の候補の県推薦校に選出されるなど躍進著しい。ところが、昨秋はチームが最悪の状態になって低迷したが、そこから一冬で盛り返してきて、今春は知多地区1位校として県大会進出。そして県大会でも誠信蒲郡を下してのベスト8入りを果たしてシード校となった。

 その東浦に挑むのが、2回戦ではリードを許す苦しい展開の試合でも、西春をサヨナラで下して勢いもある豊田である。東浦としては、その豊田の勢いを止めたいところであろう。

 初回、まずはお互い三者凡退。東浦の神谷、豊田の小川、両投手共に素晴らしい立ち上がりだった。

 2回東浦は4番榊原が二塁打して、内野ゴロで三塁まで進んで最初のチャンスを得たが、ここはあと一本が出ず、小川が踏ん張った形となった。さらに、東浦は榊原が安打と盗塁、暴投で三塁へ進む。6回にも二死走者なしだったが5番嶽本君が三塁打を放ち得点機を得たものの、いずれもあと一本が出ず、小川に抑えられる形となっていた。

 一方、東浦の先発神谷は立ち上がりから完璧な投球で、気がついたら6回を終えて一人の走者も出していないというパーフェクトが続いていた。7回二死から、福本に死球を与えてしまい、思わず天を仰ぐ。その仕草でも、完全試合を意識していたのかなということは窺われた。ただ、中嶋勇喜監督は、「完全試合を意識するよりも、点が取れないということを意識していました」と、試合後は苦笑していた。

 果たして、どんな形で試合の決着がつくのかと思われたが8回に一気に動いた。豊田は一死後、5番濱地が中前打で初安打。投ゴロで二死となったが、東浦としては併殺を取れなかったことが効いた。続く7番前田の時に、豊田の太田竜二朗監督はエンドランを仕掛けたが、これが見事に決まって一、三塁となる。こうしたプレッシャーをかけていった中で、続く野村の内野ゴロが失策を誘い、豊田は試合終盤にきて初めてのチャンスでしっかりと1点をもぎ取った。東浦としては、非常に重い1点になってしまったことは確かである。


 後がなくなった東浦。その裏は2番からの好打順だったが簡単に二死となってしまう。それでもベンチでは、「諦めるな、取り返していくぞ」ということは、しきりに声をかけていたという。

 そんなベンチの声にも後押しされてか、4番榊原は中前打すると、続く嶽本も右前打で一、二塁。そして、6番牛田はこの試合では4度目の三塁に走者を置いての打席。ここまでは、結果を出せなかったのだが無心でスイングした一打は左中間を破っていき二人がかえって東浦は逆転に成功した。さらに、続く夏目も三遊間を破り、牛田が二塁から生還して3点目も入った。遊撃手の夏目としては、8回の失点となった痛恨の失策を記録していただけに、それを取り返すことが出来たということでも、よかったのではないだろうか。

 そして、逆転した東浦は9回も1番からの相手打線を、神谷がピシャリと3人で抑え込んでゲームセット。苦しい展開の試合だったが、何とか東浦はシード校としての面目を示した。

 中嶋監督も、「ある程度苦しむかなという展開は、想定していたのですけれども、展開としては負けを意識せざるを得ないこともありました。だけど、昨年秋にどん底の状態になって、そこから厳しい練習をしてきました。その成果が出たのだと思っています。やはり、厳しい練習をしていかないかんということも再認識もしました」と練習の成果を挙げていた。

 豊田の健闘も光ったが、唯一の公立シード校として、展開としては劣勢になった試合だったが、何とかひっくり返した東浦の意地と試合に賭ける意識の高さは評価されていいであろう。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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