三振数の多さは懸念材料も…。佐藤輝明(近畿大)の長打力はロマンが詰まっている
打率に課題もそれを上回る佐藤の魅力とは
佐藤輝明(近畿大)
今年のドラフトでは注目度トップクラスのスラッガー・佐藤輝明(近畿大)。連盟記録を更新するリーグ通算14本塁打を放ち、さらに人気が高まっている。
オリックスが1位指名を表明し、各球団も名乗り上がることが予想される。
佐藤の成績を振り返るうえでネックになるのが、三振数の多さだ。ラストシーズンの三振数は15。ただ勝負を避けられたところもあり、11四球を記録し、通算では35打数9安打。打率.257とリーグ全体では20位と低いが、3本塁打11打点。そして3二塁打、1三塁打と長打率.657とスラッガーとしての指標は高い。
今シーズンに限らず、佐藤は10三振以上が今シーズン合わせて3回。通算306打数で、69三振なのだから、4、5打席のうちに1回は三振をしている。
それでもスカウトが常に練習にも訪れ、高評価する理由としては、圧倒的なポテンシャルだろう。187センチ94キロと恵まれた体格は日本人離れしており、ベンチプレス130キロ、握力は左右70キロと規格外のパワーを生かした打撃はモノが違う。これまで多くのドラフト候補の打撃練習や打撃を見てきたが、飛距離、打球の速さが桁違いなのだ。それでいて一定レベルの脚力もあって、もともと捕手としては1.8秒台のスローイングタイムを誇る強肩もある。
打撃以外の長所もある選手なのだ。フリースインガーと呼ばれる選手の欠点である三振の多さに対して目をつぶってでも高評価しようとする姿勢は柳田悠岐(福岡ソフトバンク 広島商出身)の影響が大きい。今ではどこに投げれば打ち取れるかわからないほどの異次元の打棒を見せる柳田だが、デビュー当初の2011年~2012年辺りは上下動が激しく、タイミングの取り方もつかんでおらず、欠点が多く、広島経済大時代も今のような盤石さはない。それでもスケールの大きさを見込んで、期待通りの主砲へ育て上げた。
佐藤はデビュー1年目で100試合出場した場合、10本塁打にする代わりに、100三振~150三振もする可能性はあると思う。それも我慢してでも使う価値がある選手だと評価しているのではないだろうか。プロ野球ファンの皆様には佐藤をどう評価するか分からない。とはいえ大成すれば、関西学生野球の関係者が「エグイ」と語る佐藤の打棒がコンスタントにみられるかもしれない。その時は日本中を熱狂させるスラッガーになるに違いない。
(記事=河嶋 宗一)