仙台育英vs酒田南
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投打かみ合い、仙台育英が準決勝へ
仙台育英が逆転、コールド勝ちで準決勝進出を決めた。
仙台育英の先発は、馬場皐輔。2回に酒田南の先頭、5番・石塚大地にレフト前ヒットを許し、続く荒川瞬が犠打、7番・清水敬太をセンターフライに打ち取ったが、8番・相沢良の打球はライト前に落ち、先制を許した。
だが、直後の3回表に味方が逆転すると、ここからギアチェンジ。142、143キロなど140キロ超えの球速が表示され、雄叫びを上げながら投球する姿に、スタンドの観客も色めき立っていった。そして、4回、二死で酒田南・清水が2度目の打席に立っていた時だ。ボール、ストライク、ストライクからの4球目。高めに抜けた直球は146キロを計測。これにスタンドからは「お〜」という声が漏れた。その後も快投を続け、3回以降で許した安打は1本だけだった。
仙台育英・佐々木順一朗監督は「146は間違いでしょ。(本人に)言わないようにしようと思っていたのに、ベンチに帰って来たらすぐに(チームメートから)言われていましたね。でも、142キロとかがコンスタントに出ていたので、よかったかなと思います」と話した。
また、佐々木監督はエラーが失点に絡まなかったことも挙げた。
1回裏、酒田南の1番・阿部秀平の打球は二塁ベースよりのセカンドゴロだった。これを、仙台育英の二塁手・菊名裕貴が回り込んでグラブで取りに行ったが、打球は抜けて行って失策。犠打で送られたが、サードファウルフラウ、ショートゴロで切り抜けた。6回も、先頭をサードゴロに打ち取ったが、三塁手・加藤尚也が一塁に送球エラー。空振り三振2つを奪って二死までこぎ着けたが、5番・石塚にセンター前ヒットを許した。酒田南が1点を返すかと思われたが、捕球した中堅手・上林誠知が本塁封殺。直前の雨で芝が濡れ、指先から離れる瞬間にボールが滑ったが、「滑っても調整してアウトにしましたね」と佐々木監督。エラーを失点につなげず、ゼロを刻んだ。
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攻撃は3回に、馬場がレフト前ヒットで出塁。1番・熊谷敬宥はファーストファウルフライに倒れたが、2番・菊名が四球で歩くと、3番・長谷川寛がライト右にヒットを放ち同点。4番・上林誠知は空振り三振に倒れたが、5番・佐藤聖也が四球を選んで満塁。ここで6番・加藤尚也がレフト前に2点タイムリーは放って逆転し、さらに8番・福田義基もレフト前の2点タイムリーと打線がつながった。結局、打者10人の攻撃で5得点を挙げた。
5回に雨粒が大きくなったが、それが上がりかけた6回。二死満塁で打席が回って来た上林は、1ボールからの2球目のストレートをライトスタンドに運んだ。滞空時間の長い、上林らしいホームラン。スタンドはイニングをまたいでも、その話題で盛り上がっていた。本塁打を放った直後の6回裏には、先述のとおり、守備でも魅せた。話しは戻るが、2回に四球で出塁した上林は、続く5番・佐藤のライト前ヒットで三塁に進んでいる。この時、打球がファーストライナーの可能性もあったため、上林は戻りかけ、1度ストップしたところから走り出して三塁を陥れた。まさに、走攻守とすべてで「らしさ」を発揮した試合だった。
宮城県大会決勝で、2回で7失点した馬場が好投を見せ、4月下旬から左足首付近を痛めていた上林が完全復活を印象づける走攻守の活躍。さらに、腰痛でベンチを外れている正捕手の小林遼の代わりにマスクをかぶる福田もやっとタイムリーヒットが生まれるなど存在感を増して来た。佐々木監督は「予想を上回る活躍を見せていますね。そして、県大会で7失点した馬場を覚醒させました。普段、ブルペンで組んでいるし、(馬場も)安心感があるのでは? ヒットも出たし、彼が今、一番、楽しいのかな」と喜んだ。
酒田南は1回戦を0対2から逆転勝ち。2回戦は序盤の5点差を跳ね返し、さらに許した9得点すべてが本塁打という珍しい試合を勝ち上がったが、仙台育英の前に力尽きた。
(文=高橋昌江)