大人の野球を体現した春夏連覇のメンバー 我喜屋優監督(興南)
春夏連覇のメンバーの「大人の野球」
「大人の野球」とは一体何なのか
我喜屋優(がきや・まさる)監督の独占インタビュー全5回では、「大人の野球」について考察してきた。そして、その「大人の野球」を体現してきたチームこそ、エース島袋洋奨を中心に2010年春夏連覇を達成した2010年の興南であろう。
「大人の野球」とは?を取り上げる上で避けては通れないチームである。そんな当時のチームについて我喜屋監督に話を伺った。
「やはりねぇ、我如古(盛次)。もちろん、島袋(洋奨)は絶対的エースでしたし、我如古の場合は、あの小さな体で甲子園では連続ヒット(選抜大会で8連続安打、通算13安打)とか打っているし。努力のおかげでキャプテンこなして。でも彼だけでなくて国吉(大陸)っていう双子もいて彼もオール5で文武両道の興南にふさわしい選手、今公認会計士になっている。真栄平(大輝)あたりもファーストとして身体大きいけど、繊細な心の持ち主でみんなをまとめていた。あの当時はそれぞれ、みんないい個性があったね。」
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それぞれの個性があり、幅広い気づきができるチームであったのであろう。
[page_break:日米親善高校野球大会で感じたこと]日米親善高校野球大会で感じたこと
我喜屋監督の教えを胸に、選手たちは今日の白球を追いかける!
「人間力」のすばらしさは、2010年に我喜屋監督が日米親善高校野球大会の日本代表監督に就任し、他校の選手を見た時により感じられたという。
「(2010年日米親善高校野球大会)JAPANでアメリカに連れて行った時に、(興南から)5人選ばれたんですけど、他のメンバー15人と比べても完全な大人だったですよ。その挨拶、散歩のしかた、一分間スピーチ、ご飯の片付け、ごちそうさまと、返す時も洗う人の身になって、皿がきれいになった状態で返すとか、またゲームに置いても相手を尊重するとかね。チームメイトの協調性とか全てにおいて、やっぱりあのときの連中はすべてにおいて、相手の監督からすれば、本当に大人ですね。と思わせるような連中だったです。」
野球のみならず、日頃の生活まで、細かい配慮・気配りが出来る選手であることがよく分かる。この「人間力」こそが、[stadium]甲子園[/stadium]で優勝出来るチームと言えるのだろう。
人間力がついた選手達のその後を見てみるよう。なんと興南を卒業した当時のメンバーのうちなんと3名が野球の名門大学の主将に就任したのである。
島袋洋奨(中央大学・主将)
我如古盛次(立教大学・主将)
安慶名舜(法政大学・主将)
興南で培った「人間力」がどこでも通用することを見事に証明してみせた。我喜屋監督の指導方針が、実を結び選手の血となり肉となっているのがわかる。「大人の野球」を体現した選手たちは、今後もそれぞれの道を力強く切り開いていくのだろう。
最後に、我喜屋監督のこの言葉を残しておきたい。
「大人だと自然に野球も、『今の興南には勝てませんよ、大人の野球ですよ』となる。戦った相手の人にそう言われるのは嬉しいですよね。」
我喜屋監督が嬉しいのは、勝ったことでなく、「大人の野球」と評価されることにある。野球の練習や日頃の生活を通して選手の「根っこ」を育てることで、細かい気配り・気づきが持てる大人の選手にさせてあげられたことの方に、重きが置かれているのだ。これこそが教育者・我喜屋優の本質だろう。
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文=田中 実