試合レポート

科学技術vs神戸弘陵

2015.07.20

科学技術が機動力で圧倒!強豪・神戸弘陵を破る!

 部員100人もいる伝統校・神戸弘陵と兵庫科学技術の一戦。神戸弘陵は応援に非常に迫力があり、ほっともっとフィールド内に大きく声が響き渡っており、戦いぶりが注目されていたが、兵庫科学技術が見事な戦いを見せていた。

 兵庫科学技術は一回表、二死一、三塁から5番大野雄斗(2年)の時にダブルスチールを試み、一塁走者が挟まれる間に先制。大野は四球で出塁し、盗塁を仕掛けるなど、徹底的に走っており、このチームはスピード面をウリにするチームというのが分かった。

 そして兵庫科学技術の先発の吉崎洋太(3年)がなかなかの右投手であった。手足が長く、ベンチ前のキャッチボールや投球練習をしていて、良い投手だなと思っていたが、実際の投球で、いきなり136キロを計測。この投手をチェックしようとすぐにメモを取り出した。大きく振りかぶって左足を上げるまでがゆったりとしており、遊撃方向へ足を伸ばし、左腕のグラブを斜めに伸ばしながら開きを抑えつつ、テイクバックをコンパクトに取ってリリースする。最速は138キロを計測したが、リリースポイントが安定せず、立ち上がりはコントロールが不安定。

 1回裏、1番谷凌河(2年)の四球、2番吉田光輝(3年)のセーフティバントで無死一、二塁のチャンスを作ると、3番喜井力矢(3年)の犠打で一死二、三塁から4番田中輝樹(3年)の内野ゴロで同点。さらに2回裏、7番柳生大貴(3年)の三塁打、8番杉江栄賢(2年)のスクイズで勝ち越したかのように思えたが、3回表、一死二塁の5番大野の適時二塁打と敵失で勝ち越しに成功。だがその裏、一死一、二塁から4番田中の適時打で同点に追い付く。

 5回表、兵庫科学技術は5番大野が再び適時打を放ち、勝ち越しに成功する。6回裏、神戸弘陵は柳生の適時打で同点に追いつき、勝負は後半戦に持ち込まれた。


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第97回全国高等学校野球選手権大会

 兵庫科学技術の先発・吉崎は後半から持ち直す。吉崎は変化球の精度が課題で、スライダー、カーブともに見切られ、ストライクに取りにいった球威を抑えた直球、変化球を狙い打ちされていたが、後半以降から開き直ってストレートを押す投球で切り替え、神戸弘陵打線を抑えていた。こうして試合は9回の表を迎えた。

 兵庫科学技術は7番鍋谷崚(3年)が二塁打で出塁。犠打で一死三塁まで進め、スクイズを仕掛けようとするが、三振に終わり、二死三塁。ここで1番長崎拓海(3年)が右前適時打を放ち、勝ち越しに成功する。まだこれだけではない。長崎は盗塁を仕掛け、成功。そして2番佐野恭平(3年)の適時打で6対4と勝ち越す。この2点目が大きかった。

 9回裏、一死から1番谷が内野安打で出塁し、二死二塁から3番喜井の適時打で1点を返すが、反撃はここまで。兵庫科学技術の吉崎が4番田中を打ち取り、試合終了。

 ゲームセットの瞬間、科学技術の選手たちは全速力で整列に向かい、そして兵庫科学技術のスタンドは総立ちで、歓声を上げていた。
 最後まで手に汗握る熱戦であった。兵庫科学技術のスピード、巧打が神戸弘陵を上回ったのだ。神戸弘陵も粘り強い試合運びを見せており、両校に拍手を送りたい気分にさせるナイスゲームであった。

 最後に1人だけ逸材を紹介したい。それは神戸弘陵のショート・谷だ。この選手の持ち味はスピード性溢れる遊撃守備だ。初回、彼の守りを見た瞬間、あまりのスピードの速さに驚かされた。動き出しの速さ、フットワークの軽快さはまさに本物のショート。左右関係なくしっかりと動けており、地肩は強い選手ではないが、状況に応じてワンバウンドで投げたりと、頭を使ったプレーができている。さらに捕球の対しての安定性を高めていけば、来年の兵庫県を代表する遊撃手になる可能性を持っているだろう。そして9回裏の内野安打のタイムは3秒82と驚異的なタイムをたたき出した。この脚力が、あの守備を生み出していると考えると納得できる。

 課題は打撃。当てるのは上手い選手だが、始動の仕掛けが速すぎて、引っかける打球が多かった。走り打ちをしなくても人並み以上のスピードを生み出せる選手。ぜひ最後までしっかりと振り切ることを意識するなど、ちからづよsを求めて存在感を示してほしい。先輩たちが感じた悔しさをぜひ晴らす活躍を、この秋、来年に見せてくれることを期待している。

(文=河嶋宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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