Column

居るだけで安心させられるマネージャーを目指した3年間 豊多摩(東京)

2018.08.29

 杉並区にある、東京都立豊多摩高等学校。チームを支えるマネージャーは日々どんな活動をしているのか。豊多摩高校硬式野球部のマネージャーたちの毎日の仕事ぶりに迫った。

毎日の練習をよく見て選手を把握する


集合写真

 試合の時のスコアの記入や打率、トレーニングデータの集計。さらにはノックの時に監督にボールを渡すなど、様々な仕事をこなす豊多摩野球部のマネージャーたち。時には1時間ずっと大きな声を出し続けるため、のどの強さであれば他校のマネージャーには負けないと語る。

 普段の活動を通じてどんなことを意識しているのか話を聞いてみた。すると、
 「普段のバッティング練習から選手の飛ばす打球に注目している」
 という。誰がどんな打球をどこへ飛ばすのか。また球種によってどんな打球を打つのか、など普段の練習から選手たちの状態を観察するようにしているのが、豊多摩のマネージャーである。

 特に、監督から打率を聞かれたときはすぐに答えられるように準備をしている分、集計には苦労をしている。時には、自らの睡眠時間を削って打率やトレーニングデータを作成している。しかし、選手たちがデータを見た時にモチベーションを上げてくれる姿にやりがいを感じている。

 そんなマネージャーたちは一番楽しい時間だと話すのは試合の時だ。ヒットや得点の記録をスコアに書き記しながらチームメイトに、「ナイスバッチ!」と一声かけると、チームメイトとの一体感が生まれると感じるからだ。

 数多くの試合をこなしている中でも強く印象に残っているのが、昨秋の都大会予選での日大三戦である。試合には敗れたものの、自分たちよりもはるかに強い相手に2回までランナーの出塁を許さなかったことが印象的だった。

 次のページでは、垣内結衣さんにお話を伺います!

[page_break:先に動くようにして、マネージャーが居るだけで安心を与えたい!
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先に動くようにして、マネージャーが居るだけで安心を与えたい!


記録を取るマネージャー

 3年生の垣内結衣さん。中学時代はバレーボール部に所属していたが、幼い頃からプロ野球が大好きだった。高校進学と同時に何か新しいことを始めようと思った時に、家族からの勧めもあり野球部マネージャーとなった。

 そんな垣内さんは、入学早々嬉しい出来事があった。初めてのボール渡しにも関わらず監督から、「上手だから、これからお前が全部やってくれ」と指名を受けたのだ。このエピソードは垣内さんの中で嬉しいことであり、印象に残っている自慢の話だ。

 他にも嬉しい出来事はある。それはお米を炊いた際に「結衣さんの炊いてくれたご飯はいつも美味しいです!」と選手から言ってもらえる瞬間だと答えてくれた。

 そんな垣内さんが仲間や監督から言われて一番心に残っている一言は何なのか。話を聞いてみると、
 「マネージャーは唯一客観的に野球部を見ているから、一番的確な発言力があるんだよ」という言葉だ。

 この言葉の通り、垣内さんはマネージャーの仕事をこなすことで部員全員の体調や長所、短所を把握できるようになった。このことを垣内さんは、「気づきの心」や「心の目」が広がったと表現している。

 マネージャーをしていなければ自分を中心に考える人間になっていたのではないか、と危惧していた垣内さん。3年生の彼女にとっては最後の夏は、4回戦で日大三に惜しくも敗れた。この夏に向けて強い思い入れがあった。それは昨夏の経験があるからだ。

 昨年は温かみがあり芯の通った強い先輩方で、お互いに刺激を与えあう良いチームだった。そんなチームが創価高校と行った試合が印象的だった。試合は1点も奪うことはできなかったが、最後の最後に満塁を作れたのは豊多摩の強みだと感じたことが、今でも印象に残っているそうだ。

 選手や監督の動向や普段の様子をよく見て、要求される前にこなせる。居るだけで安心感を与えられるようなマネージャーを3年間目指した垣内さん。

 強豪ひしめく西東京で豊多摩高校はこの夏ベスト32。ここまで躍動したのは、垣内さんがチームに安心感を与え続けたからだろう。垣内さんは引退となったが、その想いを受け継ぐ選手たちが中心となる新たな豊多摩が、秋以降にどんな活躍するのか、楽しみだ。 

(文=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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