桐蔭学園vs慶應義塾
桐蔭学園が7回コールドで慶應に勝利
強豪同士の熱戦が期待されたが、予想外の大差がつき、7回コールドで桐蔭学園が圧勝した。
まず両校のスターティングメンバーに注目すると、桐蔭学園は全員3年生で、そもそもベンチ入り20人の中に2年生は1人しかいない。高校野球監督として最後の夏にかける土屋恵三郎監督がこの代にかける期待の大きさと執念がうかがわれる。それに対して慶応はスタメンの中に3年生は2人しかいない。そして、残る7人の下級生の中に1年生が3人いる。来年以降を見据えた慶応と、今年かける桐蔭学園の差がもろに出た試合と言っていいだろう。
桐蔭学園は1回裏、慶応の先発、高橋伶介(1年)に襲いかかり、打者9人を送る猛攻で3点を奪取する。
経過を説明するとニ死後、3番清水翔太が左前打、4番増田陽太が中前打で続き、一、二塁にしたところで5番・投手の斎藤大将が右中間に三塁打を放って走者2人を迎え入れ、さらに6番加園将也が中前打を放って3点目を挙げる。
ついでに書くと、ニ死一塁から7番高橋塁に四球を与えて慶応は高橋をあきらめ、エースナンバー1をつけた亀井倫太朗をマウンドに上げる。この亀井も8番伊勢裕行に死球を与えピリッとしない。9番星貴裕を二塁ゴロに打ち取って何とかこのイニングを終えるが、1回裏の攻防を見ただけで、各打者の1球にかける執念が違うと思わされた。
執念は桐蔭学園に劣ったが、慶応各打者は打席の雰囲気がいい。一言で言えばゆったりボールを待てているのだ。
名前を挙げると、3番柳町達(1年)、4番名幸大成(2年)、5番植田清太(2年)の3人にそれを感じた。しかし、この素質溢れる3人の打者に打たれたヒットは植田の1本だけ。桐蔭学園の左腕、斎藤が3年生の貫録を見せつけた。
斎藤で最もいいのは左右コーナーいっぱいのコントロールだ。たとえば左打者に対して外角ぎりぎりのコースにスライダーを決めたあと、内角いっぱいにストレートを投じる、という配球だ。ジャッジはいずれもストライクで、慶応各打者はこのコントロールに手も足も出ないという状況に追い込まれる。
7回までの21アウト中、ゴロアウトが15個を数えた。緻密なコーナーワークに対して当てるが精一杯という右往左往ぶりが目に浮かぶようである。
慶応唯一の得点シーンは4回に訪れる。植田がヒットで出塁したあと、6番三枝遼太郎がバントで送り、7番吉田将大の死球、8番亀井の右前打で満塁とし、9番宮田皓のショートゴロがゲッツー崩れになる間に三塁走者が生還して1点取った。しかし、ここまでだった。
桐蔭学園は4回に打者9人、5回に打者7人を送る波状攻撃でそれぞれ3点ずつ奪い、慶応から戦う気力をもぎ取った。
昨年のメンバー表を見ると、慶応の2年生はわずか4人しかいない。1年生も4人いて、ここに新しく入った1年生でチームを構成していることがわかる。つまり、来年以降に照準を絞ったチーム構成である。この若いメンバーで強豪が集まる神奈川大会で準々決勝まで進出したことを素直に讃えたい。
(文:小関順二)