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手作り動画が強さの秘密!ノーシード・実践学園の夏への決意【後編】

2021.07.05

 7月3日より東西東京大会が開幕した。今年はオリンピックの開催に伴い、準決勝から東京ドームを使うなど、例年にはない特別な大会となる。東京ドーム、そして甲子園を目指す戦いが都内で7月中に繰り広げられていくなかで、どこよりも球場にアーチを描くのではないかと思われるチームが東東京のノーシードにして、昨夏8強入りした実践学園だ。

 前編では実践学園独自の打撃理論に迫ってきたが、後編ではチーム内の取り組みやここまでのチームの歩みなどに迫っていく。

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フライボール革命児たちを擁して8強の壁に挑む実践学園【前編】

映像を用いて目標を可視化させる

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菅沼麟太郎

 自主練習を充実させるのに役立っている1つのアイテムがあった。それが沢里監督オリジナルの比較動画だ。
 これは選手それぞれが習得したい動きに合わせて、沢里監督がプロやメジャーの選手の映像と比較できるものを作成。もしくは少し前の自分との比較動画を作ることで、成長点を確認するというものだ。

 「動画編集に個人的に凝っているんです(笑)」と沢里監督は前置きをしながら、映像を活用することの重要性をこのように話す。
 「現役時代から、教わったこととプレーの様子を映像で撮影すると、イメージがかけ離れていることが感じることがあったんです。だからいつも『実際のところどうなっているんだろう』と考えていました。そこで映像を撮って可視化すれば一目瞭然なので、選手たちにはレベルアップできる材料として比較映像を提供するようにしています」

 林 昌勇の投球フォームを比較動画に使っているという菅沼は、「比較動画で目指す目標がはっきりしているので、自主練習のメニューもすぐに決められる」と効果は絶大。作成している沢里監督のなかでも「可視化できていることで吸収しやすいので、成長速度も速いです」と手ごたえは十分だった。

 こうした取り組みをしている実践学園だが、秋は東海大高輪台の前に4対11。「選手個々の能力は高い」と自信を持っていた吉村主将だが、思うような結果には結びついていない。沢里監督も「接戦になると思いましたが、点差が開いてしまった」と反省。同時に春以降に向けては「打てないと勝てない」と目標を明確化させ、冬場の期間はトレーニングと打撃に特化した。

[page_break:勝負所で結果を残し、夏の大会を勝ち抜く]

勝負所で結果を残し、夏の大会を勝ち抜く

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実践学園の練習模様

 冬場、選手たちは沢里監督の動画を駆使しながら打撃フォームを改善し見直した。さらに土台となる身体づくりにも、いかにプレーに繋げていくかを考えた上で、メディシンボールやチューブなどの道具を活用。筋力をプレーで発揮できるような身体に仕上げてきた。

 そこまでの成長ぶりを見ていて、「全員がまんべんなくバットを振れるようになってきた」と沢里監督のなかでは手ごたえを十分に感じながら春季大会を迎えた。
 ただ、同じ東東京の岩倉の前に2対3と惜敗。あと1点に泣き、夏はノーシードが決まった。

 「秋の時は取れるアウトを取り切ることが出来なかった。そこが春の大会で改善されたのは良かったです。ただ1点へのこだわりが足りないということで、練習から試合をイメージして練習をするようにしています」(吉村主将)

 勝負どころでのプレーを磨くために、取材時も細かな試合状況を設定したうえでノックを受けていた実践学園。その成果を発揮する舞台となる夏の大会はまもなく始まる。先日の抽選会の結果、初戦で都立江戸川と対戦することが決定した。順調に勝ち上がると岩倉と対戦する可能性もあり、再戦に期待がかかる。

 2年生スラッガーの森岡は「3年生は最後の夏なので、下級生ですが、バッティングでチームを引っ張りたい」と夏へ意気込みを語れば、主砲・後藤も「自分の強みであるスイングとインパクトの強さを発揮したい」とバットで勝利に貢献することを誓った。またエース・菅沼は「ここまでは自分のせいで負けたので、夏こそ自分が抑えてチームを勝たせる投手になります」と並々ならぬ決意を話した。

 そして吉村主将は「1試合でも多く仲間たちと戦えるように。甲子園に行けるように頑張りたいです」と目標を明言した。

 強打・実践学園が東東京のライバルたちを次々と打ち破っていくことが出来るか。先輩たちのベスト8の壁、そして甲子園への道を切り開いていく戦いを見られることを楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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