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フライボール革命児たちを擁して8強の壁に挑む実践学園【前編】

2021.07.04

 7月3日より東西東京大会が開幕した。今年はオリンピックの開催に伴い、準決勝から東京ドームを使うなど、例年にはない特別な大会となる。東京ドーム、そして甲子園を目指す戦いが都内で7月中に繰り広げられていくなかで、どこよりも球場にアーチを描くのではないかと思われるチームが東東京のノーシードにして、昨夏8強入りした実践学園だ。

身体の軸に対して垂直にバットの軌道をぶつける

フライボール革命児たちを擁して8強の壁に挑む実践学園【前編】 | 高校野球ドットコム
バッティング練習をする実践学園ナイン

 その理由は各打者のスイングだ。他校に比べると、下からバットを出す、いわゆるアッパー気味なスイングをしている選手が多い。もっといえば、近年で多くのチームへ広がったフライボール革命とも捉えられる。

 「私が選手たちにメジャーなど中南米の野球を良く見るんですが、それを選手たちにも見せているので、そこの打撃に憧れた選手たちが選んでいるからだと思います」とフライボール革命が浸透した背景を語ったのは、指揮官としてチームをまとめる沢里監督だ。

 沢里監督は現役時代、都立日野台、そして立教大学と渡り歩き、立教大学時代はリーグ戦に出場した実績を持つ。そんな沢里監督フライボール革命のメリットをこう語る。
 「投手の身長も考えれば、マウンドに対してホームは10度くらい低くなるはずなんです。その状態からボールが投げてくるわけなので、上から叩くようにバットを出すと、ボールとの接点はどうしても狭くなってしまいます。
 それよりもボールの軌道に入れるような少しアッパー気味の方が理にかなっていると思います」

 ただ下からバットを出すわけではなくて、ボールの軌道に対してバットを入れていく。実践学園ではレベルスイング=地面と平行とせず、身体の軸に対してバットの軌道が垂直にぶつかることをレベルスイングと定義する。これが沢里監督の考える実践学園流の打撃理論であり、実践学園が考えるフライボール革命の形だ。

[page_break:可視化した目標・甲子園に向かって強打で勝ち抜く]

可視化した目標

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バッティング練習をする実践学園ナイン

 この理論を実際に取り入れている吉村主将は、中学時代まではダウンスイングに近いバットの出し方だったという。だからこそ「最初に聞いたときは驚きました」と振り返るが、沢里監督からの説明を聞き、合点がいったそうだ。

 「その時に聞いたメリットは2つ。まずはボールの軌道に合わせることで、ヒットの確率が増える。そしてもう1つが、打球の角度が上がるので、長打が出やすいということでした。自分はクリーンアップを打たせてもらっている以上、長打が求められます。そこに加えて打率も残せるということで、取り入れました」

 もちろん、この打ち方の課題として逆方向への打撃などいくつかの問題点も沢里監督は提示する。そのうえで選手たちに伝えるのが捨てる勇気だ。
 「自分にとってプラスになるのであればどんどんやってほしいです。けど、自分とは合わないこともあるはずなので、その時は捨てる勇気を持ってほしいと思っています。一番は、上達するために必要な技術を考えて取り入れる。取捨選択することだと伝えています」

 だから主砲である後藤は、「自分は地面に対してレベルスイングで確率を高めたい」という理由から、ここまで紹介してきた実践学園の打撃理論を取り入れていない。代わりに、自ら大事にしているインパクトの強さを求めている。

 逆に中学時代からアッパー気味のスイングをしていた2年生・森岡は「ここにきてからもっとフォロースルーを上向きにしました」と吉村主将のように取り入れる選手と様々だ。

 選手それぞれで考えて選択し、練習を行う。こうした選手自ら考える風土を大事にする。そして大学より上のステージでも活躍できる人材を輩出するためにも、沢里監督は全体練習よりも自主練習を増やし、選手個人が課題と向き合える時間を作っている。

 事実、後藤も自主練習を通じて、レベルスイングの重要性を確認し、今も継続している。また140キロ右腕・菅沼 麟太郎も「最初は何をすればいいかわかりませんでしたが、今は自分の課題を克服するために時間を使えています」と自分だけではなくチーム全体が有意義に時間を活用できている様子だった。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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