試合レポート

大和広陵vs奈良北

2011.05.01

大和広陵vs奈良北 | 高校野球ドットコム

大和広陵、生還

掴み切れなかった試合の流れ

 迷いなく振り抜かれるスイングを見た時、まさか、このような結末が待っているとは想像もつかなかった。

 大和広陵が5-0で奈良北に快勝。

プレイボール直後に快音を響かせた奈良北のバッティングを見れば、全く逆の展開が想像できたからだ。それほど、奈良北打線のスイングは鋭く、迷いがなかった。

 1回表、奈良北は1番の福西が右翼手の頭上を越える二塁打で出塁。犠打で三進のあと、1死1、3塁と攻めた。2回表も、先頭の6番・小西が中前安打で出塁。今村の犠打は失敗するが、二死後、9番・山尾、1番・福西が連打で満塁。大和広陵守備陣が極端な前進守備を敷いたから、本塁生還はならなかったが、開始早々の奈良北の攻めは、相手をねじ伏せてしまいそうな勢いがあった。

 しかし、この好機に、あと一本が出ない。野球とは恐ろしいもので、ゲームを支配できそうな展開で逃してしまうと、勝利の女神はそっぽを向くのである。

3回裏、大和広陵が反撃。
先頭の7番・津田がチーム初安打となる左中間突破の二塁打で出塁。犠打で三進のあと、9番・奥谷が右翼前安打を放ち、1点を先制。たった一度の好機を大和広陵が生かしたのである。

1、2回と攻め立てながら得点を与えられなかった奈良北と、初安打からの走者を得点につなげた大和広陵と、両者の中にあった精神的な影響力は計り知れない。奈良北・松元監督は「1、2回でチャンスを作れていましたから、これからも攻めていけるだろうというのはありました。しかし、終わってみれば、あのチャンスで一本を出せなかったことが大きく響いた」と悔しがる。
野球とはそんなものだ。流れがあるうちにモノにしていないと、勝機を逸するのである。「2回4安打」の見事な攻撃は「4安打無得点」という拙攻に変わるのだ。


大和広陵vs奈良北 | 高校野球ドットコム

大和広陵、生還

 大和広陵が1点を先制した直後の4回表、奈良北の攻撃は3者連続三振。試合展開はガラッと変わってしまった。
自らの先制打で気を良くした大和広陵のエース・奥谷は水を得た魚のようにスイスイと投げたのである。左腕からキレのあるボールを低目に丹念に投げ、ストレートとスライダーを使い分ける。アウトコースの出し入れも上手かった。松元監督は「攻めていながら先に点を取られて、あれで、相手のピッチャーが冷静さを取り戻してしまった」と振り返っている。

 奈良北は、昨夏、1回戦で伝統校の郡山を打撃戦の末に制した。伝統校を上回った破壊的な打撃力には驚かされたものである。
松元監督は「去年のチームは、2年生のころから出ていた選手が多かった分、出来上がりが早かった」と話す一方、当時の練習法や経験は今年に生かされているという。
「今年の選手は経験者が少ないので、時間はかかります。でも、手前みそですけど、甘いところに来たら、しっかりと打てるようにはなってきている」と口にしている。
序盤の攻撃は、まさにその一端を見せていたのだろう。旧チームから受け継がれつつある奈良北の強みなのかもしれない。

それだけに、序盤の好機を生かせなかったことが悔やまれる。打てなかった打者云々の話ではなく、バント失敗もあった。チームに与えられたテーマと言えるだろう。
「良い課題をもらえた」と松元監督はいう。昨夏、郡山を前にして見せた攻撃力は、この日、体感した勝負の厳しさをいかに生かすかである。

(文=氏原英明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【鹿児島NHK旗】鹿屋農が、延長11回を制す!

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.01

春季大会で頭角を現した全国スーパー1年生一覧! 慶應をねじ伏せた横浜の本格派右腕、花巻東の4番、明徳義塾の正捕手ら入学1ヶ月の超逸材たち!

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得