試合レポート

修徳vs日大豊山

2021.07.28

床枝魁斗vs玉井皓一朗の東東京を代表する大型投手の対決は期待通りの熱戦に

 修徳vs日大豊山。東東京の5回戦で屈指の好カードが実現した。

 修徳床枝 魁斗は秋、春と一歩ずつ安定感が増している。常時135キロ~140キロの直球は威力があり、ここぞという場面では最速143キロの速球を投げ込む。非常に良くなったのがスライダーのコントロール。120キロ前半のスライダーは手元で鋭く曲がり、カウントが取れる上に、ストレートも内外角へしぶとく投げることができる。

 粘り強くなったエースの床枝を支えるように、バックの守備も球際の強さが出てきた。集中力の高さを保って投げることができる。

 その床枝に匹敵するインパクトある投球を見せたのが、日大豊山のエース・玉井 皓一朗(3年)だ。最速145キロ左腕という前評判通り、184センチ83キロと恵まれた体格から、常時135キロ~143キロの直球を投げ込む。ボールの圧力はドラフト候補として挙げていいもので、思わず詰まってしまう球質だ。ストレートだけではなく、120キロ後半のカットボールの切れ味も鋭い。昨夏、見た時、常時120キロ後半で、体格も良い投手なので、140キロは期待できる投手と思っていたが、まさか現在のカットボールの球速が昨夏のストレートとほぼ同等の球速ということに驚きを隠せない。また130キロ前半で少し曲がるツーシームの精度も高かった。

 成長のきっかけとなったのは1月~3月にかけて緊急事態宣言による自粛期間だ。玉井はそれをプラスに捉えた。体重を10キロ近く増やし、投球フォームの見直しを行った。

 「体重移動の際に、軸足(左足)を曲げすぎないようにリリースすることを心がけました」
 その感覚を掴んで強く投げられるようになったのは5月頃。最速145キロに達した。さらにカットボールをマスターし、ツーシームも使い始めた。しっかりとこの試合に調子を合わせてきた玉井は自慢の直球で押していった。

 試合の均衡が破れたのは3回裏。修徳の2年生4番・佐藤 大空がツーシームを逃さず、レフトスタンドへソロ本塁打を放ち、1点を先制する。玉井は「ツーシームをホームランにされたのは初めてですね。打った佐藤君が素晴らしかったです」と振り返り、佐藤は「インコースのボールだったのですが、打った瞬間、どうかなと思ったのですが入ってくれて良かったです。第1打席で対戦して本当に速い投手だと思っていたので、そういう投手から本塁打を打てて良かったです」と喜んだ。


 佐藤は江戸川中央シニア時代、中学2年生まで投手を務めていたが、故障もあり外野手へ転向。長打を打てる選手になりたい思いで練習と研究を重ねた結果、左足を高々と上げて、まっすぐ踏み込んで打ちにいく姿は浅村 栄斗を参考にしたという。確かに浅村によく似た打ち方だ。まだ高校通算5本塁打ではあるが、これから量産体制に入っておかしくない選手だ。

 だが5回表、日大豊山は3番小川 慶人の2点適時打で逆転に成功する。

 5回裏は、玉井はさらにギアを挙げ、2番鈴木に対し、143キロ、140キロ、143キロで三振に奪うなど、圧巻の投球内容だった。

 力投を続けていた玉井だったが、7回裏、満塁のピンチで、3番床枝に対し、140キロ台の速球、120キロ後半のスライダーで攻める。それに対し粘る床枝。まさに名勝負だったが、この勝負の最中に玉井の足がつってしまった。ベンチに戻り治療を行い、戻ったものの、再開直後の投球がボールになり、押し出し。ここで投手交代となった。

 試合は9回裏、一死二塁の場面で床枝が甘く入った変化球を逃さず、劇的なサヨナラ2ランで試合を決めた。

 惜しくも敗れた日大豊山だったが、玉井の評価はうなぎのぼりだろう。184センチ83キロの体格に加え、常時140キロ中盤の速球を投げられる上に、130キロ前後のカットボール、ツーシームも投げられる。本人は試合後に大学進学を表明したが、来年以降、大学球界を騒がせる可能性を持った逸材だった。

 5回を投げ、108球を投じ、6四死球の床枝は「技術、メンタル的なところを含めて反省点が多い試合でした」と反省の様子。次の相手の都立小山台は、都立どころか、私立を含めても都内トップレベルの対応力を誇る打線である。しっかりと立て直して、どう臨むか注目をしていきたい。

(取材=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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