明徳義塾vs梼原
ついに目覚めた「怖い」明徳義塾、梼原の猛迫下し8連覇達成!
まずはこのことに触れないわけにはいかない。惜しくも初の甲子園出場には届かなかったが、梼原の今大会における戦いは最も讃えられるべき出来事であった。この決勝戦でも明徳義塾相手に臆するところは全く見られず。三塁側内野席を埋めた梼原を応援する方々から発せられる声援のシャワーを浴びながら、彼らは躍動感あるプレーを徹頭徹尾遂行した。
特に7回表の攻撃は彼らの一体感が生んだものに他ならない。まずは先頭打者として中前打で出塁した6番の代打・中山 洸希(3年・中堅手・170センチ64キロ・右投右打・四万十町立窪川中出身)を一死から8番・浅井 大地(3年・投手・178センチ78キロ・右投右打・土佐清水市立清水中出身)の2打席連続適時打となる左中間二塁打で還して2対5とし、さらに9番の代打・市川 雷夏(3年・右翼手・170センチ66キロ・須崎市立朝ケ丘中出身)の遊撃内野安打などで一死満塁と猛迫。1ボール後、明徳義塾先発・北本 佑斗(3年・170センチ70キロ・左投左打・大阪泉北ボーイズ<大阪>出身)がマウンドを下りた時、スタジアムには逆転への期待感が充満していた。
とはいえ、百戦の将である明徳義塾・馬淵 史郎監督はこのような事態も想定内。北本をマウンドから降ろせぬまま延長戦で敗れたセンバツ・早稲田実業(東京)戦の轍を踏まない準備も整えていた。そのジョーカーとは北本からバトンを受けた市川 悠太(2年・右投右打・183センチ70キロ・高知市立潮江中出身)。スリークォーターとサイドハンドの中間位置でボールを離し、1球ごとに鬼気迫る表情を浮かべつつ思い切り腕を振ってまずは2人を空振り三振・遊ゴロ。さらに残り2イニングでも4三振を奪って2回3分の2を2安打無失点。この見事な「火消し役」を演じた市川。3回裏に二死二塁から梼原・浅井が投じた不用意な初球を中前先制適時打とした4番・谷合 悠斗(2年・左翼手・179センチ81キロ・右投右打・岡山メッツ<ヤングリーグ・岡山>出身)。そして4回裏二死一・二塁から思い切りよく浅井の抜けた変化球を叩き、右翼芝生席に3ランを放った2番・中坪 将麻(3年・中堅手・174センチ66キロ・右投左打・明徳義塾中出身)といった勝利のにおいを逃さない「怖さ」を持つ選手たちが働き、明徳義塾は8年連続・5季連続となる甲子園出場を決めることができたのだ。
もちろん、前日の準決勝・岡豊戦で触れた課題が完全に克服されたわけではない。ただ、危機感をあらわにした選手たちが、この決勝戦で目覚めの時を迎えたことも確か。となれば、あとは「怖さ」をあと2週間あまりで、高知県レベルから全国レベルへ急ピッチで押し上げることができれば……。センバツの口惜しさを晴らす切符を得た選手たちは、明徳義塾が明徳義塾であるための闘いを繰り広げ、勝利するための旅にもうすぐ出発する。
(レポート=寺下 友徳)
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