試合レポート

新潟明訓vs巻

2016.07.24

逆転につぐ逆転!! 手に汗握る熱戦の行方は!?

 7月8日に開幕し、約2週間にわたり熱戦を繰り広げてきた新潟県大会も残り3試合。

 土曜日開催の準決勝、しかも快晴と絶好の野球日和とあって、開場前から多くの高校野球ファンが[stadium]HARD OFF ECOスタジアム新潟[/stadium]に駆けつけた。

 準決勝第一試合は、そんな高校野球ファンが手に汗握る大熱戦。春の大会優勝校の新潟明訓と、ベスト4唯一の公立校・の対戦は、勝利の女神の気まぐれで最後の最後までもつれる好ゲームとなった。

 新潟明訓の先発は、背番号11の大藪祐司(3年)。

 春の大会、今大会とここまで、エース・廣田祥一朗(3年)とともに新潟明訓の投手陣を支えてきた右腕は、立ち上がりエラーでランナーを許すものの後続を落ち着いて打ち取る。

 するとその裏、新潟明訓打線が、の先発・小鷹樹(3年)の立ち上がりを攻める。先頭・部田隼平(2年)が四球で出塁し、送りバントとファールフライで、二死二塁のチャンスを迎える。

 ここで4番・秋葉悠(3年)がセンター前に運び、二塁ランナーが一気に生還。先制すると、二回にも振り逃げで出塁したランナーを二塁に置いて、8番・高橋昇真(3年)がセンターへ運び、1点を追加。

 2点のリードを奪う。四回まで打線を3安打に押さえてきた大藪だったが、五回、この回先頭の佐野将一(3年)が左中間を真っ二つに破るツーベースで出塁すると、続く9番・安田真輝(3年)の犠打が内野安打になり、無死一、三塁。ここで一番・池田龍哉(2年)がライトへ犠飛を放ち、1点を返す。

 さらに四球でチャンスを広げると、続く3番・関田悠満(3年)が初球をライトスタンドへ運び、3点を挙げ、逆転。新潟明訓ベンチはこの回、九回までに使える3度の守備側のタイムをすべて使ったものの、4対2と逆転を許してしまう。

 反撃したい新潟明訓だが、好投手・小鷹の前に凡打の山。六回まで3安打に封じられてしまう。一方、五回途中から大藪をリリーフした廣田もテンポのいいピッチングで打線を抑える。


 迎えた七回裏、新潟明訓は100球が近づき、疲れが見えてきた小鷹を攻め、二死二塁のチャンスを迎える。ここで、8番・高橋がレフト前へヒットを放ち、二塁ランナーが一気にホームを狙う。

 レフトからの好返球が返り、本塁タッチアウトの判定。だが、新潟明訓ベンチはこの判定に走路妨害ではないかと、主審に説明を求め、選手も守備につこうとしない。しばらく経ってから、主審が場内にマイクで本塁タッチアウトと説明すると、それでようやく納得したのか、守備につく。

 このプレーが結束を生んだのか、八回裏、新潟明訓打線が小鷹をとらえる。先頭の廣田がセンター前ヒットで出塁すると、犠打で送った二塁ランナーを2番・伊藤新(2年)がタイムリーで返し1点差。その後二死一、三塁とチャンスを広げ、バッターは5番・大崎海渡(3年)。

 大崎の放った打球は鋭いライナーでセンターへ。センター・安田は何歩か前に出るが、打球の伸びにあわてて後退。だがその上を抜かれ、一気に2点。この回6安打を集中し、4点を追加し、6対4と逆転に成功する。迎えた最終回。

 廣田は二死からヒットを許すも、最後は3番・関田をセカンドフライに打ち取り、ゲームセット。終盤、見事な集中打で逆転した新潟明訓が6対4で勝利し、決勝へ駒を進めた。

(文=町井 敬史)


エキサイティングプレイヤー 小鷹樹(3年・投手・巻)

 ゲームセットの瞬間から、大粒の涙があふれた。ベンチから出て整列、礼、ベンチ前で相手校の校歌を聞くときも、スタンドの応援団へお礼に行くときも、声を上げて泣いた。

 チームメイトに支えて貰わなければ、立ってすらいられないような状態だった。

 立ち上がり、2点を失ったものの、三回以降は見事なピッチングだった。ストレート、変化球ともに低めに集め、新潟明訓の中軸を相手にも強気に内角をえぐった。

 三回、四回と新潟明訓の強力上位打線相手に三者凡退でリズムを作った。五回の逆転劇への布石となったのは言うまでもないだろう。

 この日、はいつもと打線を変えた。5番に座る早川翔斗(3年)が前の試合、ランナーと交錯。左腕を痛め、ベンチ入りしたものの、包帯がかれる痛々しい姿。

 だが、伝令を命じられると、イキイキした表情でマウンドへ向かった。そんな早川の代わりにスタメンに出場したのが8番に入った佐野将一。

 五回の逆転劇の口火を切るツーベースは、早川の思いを背負った佐野の執念ともいえる一打だった。小鷹も、佐野も、また早川も、チームのために勝利のために自分の役割を果たしていた。

 だが七回あたりから、投球の内容が変わってきた。時間を追うごとに高くなる気温が小鷹の体力を削りとった。序盤、あれだけ良かったテンポも、新潟明訓の各打者に粘られ、徐々に相手ペースになっていき、運命の八回を迎えた。

 試合後、泣きじゃくる小鷹には、チームを勝たせられなかった情けなさ、最後までマウンドにいられなかった悔しさ、エースとしてのプライド、このチームで野球ができなくなる悲しさなど、さまざまな感情があふれ出したのだろう。

 だが、この試合も彼にとって、さらなるステップへの第一歩。小鷹だけではない。混戦必至、群雄割拠と呼ばれたこの新潟大会でベスト4に進んだの選手は、今のこの感情をしっかり心に刻みつけ、今後の野球人生に活かしていって欲しいと思う。

 試合終了後、客席のお客さんから、長い時間鳴り止むことのない拍手をもらったことを誇りに…。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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