試合レポート

美里工vs宮古

2013.06.23

10ヶ月振りの公式戦登板で10奪三振!見事大役を果たした長嶺飛翔

  春の大会前、それまでエースナンバーを付けていた左の島袋倫が故障した。それが響いたのか、第四シードとして臨んだ春の初戦は投手陣が崩壊し、具志川商に2対9とまさかのコールド負けを喫してしまった。夏へ向けて一抹の不安が漂ったとしても不思議では無かっただろう。

 しかし、それを払拭する一人の男が復活を遂げていた。長嶺飛翔(つばさ)だ。1年生ながら昨年の夏マウンドを経験した宮城諒太や、1年生中央大会で右のエースとして活躍した伊波友和らを置いて、この夏エースナンバーを付けた右のサイドスローは、実は昨年の新人大会の真っ最中に腰を痛めて故障してしまい、満足に投げられるようになるまで半年以上を要した。

 春の県大会以降から試合に登板したという長嶺はそれまでの間、上半身や手首を鍛えることに徹する。決して腐らなかったその姿勢を高く評価した神谷監督は、また県内外の他校との練習試合を通して成績を残してきた右腕にこの夏の大事な初戦を託した。その相手の宮古は、新人中央大会で優勝し、秋の県大会でもベスト4入りを果たすなど、シードにも劣らない実力を有する。そうして幕を開けた試合、先制したのは沖縄宮古だった。

 1回裏、沖縄宮古は1番宮國汰都が四球で出塁。犠打で進めたのち、4番来間正裕が甘く入ったスライダーを捉えセンター前に運び、二塁から宮國汰が一気に生還した。公式戦としては約10ヶ月振りの長嶺にとって、格上の相手からの洗礼を浴びせられたかっこうとなったように見えた。だが、
 低目低目を意識して丁寧に投げることを心掛けていた長嶺は、同点に追い付いた3回の裏のアウト三つを全て三振に斬り沖縄宮古打線を圧倒し始め、終わってみたら二桁奪三振の快投を演じた。


5人の三年生のためにも!気迫がこもった主将の一打がチームを乗せた

 3年生が作ったチャンスに、下級生たちの気持ちも乗った。振り出しに戻った4回表、美里工は先頭打者の島袋優が右中間へ大きな当たりを放つ二塁打で出塁。その後、一死一・三塁として打席には2年生ながら強烈なリーダーシップでナインを引っ張る高江洲大夢(ひろむ)主将が打席へ。3年生の島袋優の気持ちが伝わったという打球はレフトへ。神谷監督と高江洲も犠牲フライかなと思ったが予想以上に伸びてレフトの頭上を越える逆転タイムリー!ここで沖縄宮古ベンチは、同一イニングで2本の長打を打たれた山里弘一を諦め、二枚看板のもう一人、久貝拓夢を早くもリリーフに送った。春の県大会で145kmが出たという豪腕の登場に、球場を埋め尽くしたファンの目線も集まる。だが、美里工のもう一人の3年生である比嘉恵次郎は、久貝の外の球に逆らわず一、二塁間をしぶとく破るライト前タイムリー。さらに無警戒だった沖縄宮古バッテリーの虚をつくスクイズが見事に成功して、この回大きな3点を追加した。

上げるな!転がして足を絡めろ!

 5回にも、一死一、三塁からファーストゴロの間に1点を奪った美里工。この夏を迎えるまでは、秋と春の反省をふまえ、球を打ち上げず転がすバッティング、という指揮官の思いを忠実に守る野球で、宮古にダメージを蓄積させていく。沖縄宮古も4回裏、2本のヒットを記録するが、犠打が失敗するなど得点に結びつくことが出来ない。そして完全に立ち直った長嶺の前に、5回以降はヒットが僅かに1本のみ。8回には1番から三者連続三振を喫するなど、生まれた焦りを抑えることが出来ず、何も出来ないまま最後の夏を終えてしまった。

 だが、新人中央大会で頂点に立ち、宮古島に初めての優勝旗をもたらせた功績は島民の心に深く刻み込まれている。彼らのたゆまぬ努力と最後の夏の奮闘を地元からの応援団は、大きな拍手で称えた。

(文=當山雅通)

美里工   TEAM   宮古
守備位置 氏名 打順 守備位置 氏名
中堅 神田大輝 1番 中堅 宮國汰都
遊撃 西蔵當 祥 2番 捕手 下地佳貴
左翼 島袋 優 3番 遊撃 佐和田一磨
一塁 宮城諒太 4番 一塁 来間正裕
右翼 松堂 正 5番 左翼 宮國泰斗
三塁 高江洲大夢 6番 投手 山里弘一
二塁 比嘉恵次郎 7番 三塁 池間 涼
捕手 與那嶺翔 8番 右翼 上地 樹
投手 長嶺飛翔 9番 二塁 池田 凛

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【北信越】富山県勢4校が12年ぶりの県勢V狙う、茨木擁する帝京長岡にも注目<地区大会>

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.26

【春季関東大会】白鷗大足利が初優勝!最後はタイブレークの末サヨナラ死球で幕切れ!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】エース頼み脱却を目指してきた京都国際。「素質はプロ入り左腕と同等」の2年生左腕の台頭と打線強化で京都の大本命に成長!

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉