都立足立新田vs豊南
足立新田・勝見君先制のホームイン
豊南、９回に追い上げたが、足立新田が辛くも逃げ切る
この日から、秋季東京都大会の一次ブロック予選も始まった。
夏の大会をもわせるような、残暑の厳しい一日だったが、新チームの公式戦はフレッシュに開催された。
近年、躍進著しい都立校の中でも安定した実績を残している足立新田。前任・畠中陽一監督の異動に伴い、今春から小野将幸監督が就任した。
ネット裏には、畠中前監督の姿もあった。
前半から、中盤までは足立新田のペースだった。
２回に足立新田は左線二塁打で出塁した勝見君を暴投で進めると、７番酒井君の中犠飛で先制。
３回にも、２番倉田君の中前打や四球、失策で満塁とすると、５番逸見君の中前へポトリと落とすタイムリー打で２者を帰した。さらに、４回にも１番橋本君の中前タイムーで加点するなど、小刻みに得点を重ねていった。
こうして、１～２点ずつ入っていくというのは、ボクシングのボディブローみたいなもので、相手としては、ビッグイニングを作られるよりも効くとも言える。
豊南としては、何とか流れを食い止めたいところなのだが、６回に上位打線で３安打を集中して、４番後藤君の左前打で何とか１点を返した。ここまで、足立新田の左腕秋本君のカーブを打ち切れなかったが、これで何とか攻略の糸口をつかんだという感じだった。
しかし、足立新田は、７回、８回にも捕逸や８番石井君の左翼へのソロアーチなどでリードを広げていく。これで、コールドゲームにはならなかったものの、試合としては、足立新田がそのまますんなりと逃げ切るのかと思われた。
９回、急遽リリーフして抑えた酒井君
ところが、９回に波乱が待っていた。
この回、豊南は先頭の５番浅井君が三塁打すると、続く三浦君も中越三塁打して１点を返す。さらに、死四球で満塁になると、代打越坂部君のバントは三塁前に絶妙に転がって内野安打となり１点を返して、なおも無死満塁。１番に戻って、上窪君も右前打して、さらに１点。足立新田としては、一つのアウトも取れないまま、３点を返されて満塁が続く。快勝ペースの試合が一転、１打同点、長打で逆転という大ピンチになってしまった。
ここまで、何とか、秋本君で逃げ切りたいという足立新田ベンチだったが、秋本君も８回までの投球とはまったく違ってしまっていた。たまらず、小野監督は遊撃手の酒井君をマウンドに送り出し、秋本君を右翼に置くなどして守備を入れ替えて抗戦した。
急遽マウンドに立った酒井君だったが、内野ゴロで１点差とされながらも、度胸で投げ込んだストレートで２三振を奪うなどして、辛くも振り切った。
夏の大会を１・２年生だけで戦った豊南は、メンバーがほとんど代わっていないだけに、試合経験ということでは、新チームながら十分できているチームだった。
そうした、気持ちの余裕が、序盤のリードにも焦らず、終盤に反撃することはできたのだろうが、９回の追撃機で、２度までも、ベンチからの声を審判から注意を受けたのは反省材料だろう。
そんなこともあって、最後、あと１点及ばなかったのかもしれない。
(文＝手束仁)
