上尾vs浦和実
上尾・小島君2点目のホームイン
上尾、24年ぶりの関東大会進出決める
かつて70~80年代にかけては、埼玉県の高校野球を引っ張る存在という時代もあった上尾。
しかし、その後は商業科の募集が減少し、進学校としての入試ハードルのアップに加えて私学勢の台頭などもあって、過去の歴史を背負って公立普通科校として戦っていくには苦戦を強いられているという状況も否めなかった。
しかし、地場に密着した人気校でもあり、上尾の野球に期待する人々は多い。それだけに、08年の記念大会で決勝進出するなどのことがあると、大いに盛り上がっていく。
そんな宿命を担っていく上尾は、この新チームから鷲宮で実績のある高野和樹監督が就任した。
高野監督自身も上尾の出身で、胸に黒字にオレンジ縁取りに漢字で「上尾高校」と書かれたユニホームに憧れてその門をくぐった一人だという。
それだけに、「かつて、上尾が強い時代があって、埼玉県をリードしていく存在だったということは、今の選手たちにもあえて話しています」と言うように、強い上尾を何とか復活させたいという思いも強い。そして、そんな成果が今春、早々と表れている。
この試合は、「前半は0―0か2点のビハインドまではOKというつもりでした」というゲームプランだったが、その思惑以上の展開になった。
5回に上尾は二番新井君が中前打で出ると、すぐに送った後、暴投で三塁へ進むと、五番伊藤君の右線二塁打で先制。さらに、1死二三塁から河合君の右犠飛でこの回、2点を先取した。
6回にも上尾は失策と野選絡みで好機を作ると、新井君の中犠飛と三番勝木田君の二塁強襲安打でさらに2点を追加。8回にも二つの四球を絡めて、無安打で1点を加えて、ソツのなさを示した。先制、中押し、ダメ押しと上尾としては理想的な形で点が入っていった試合となった。
そしてこのリードを、三宅君が終始自分の投球ペースで、浦和実打線に7安打は浴びたものの無失点に抑えた。走者を出しても慌てることなく、落ち着いた投球だった。左腕のスリークォーターから、どちらかと言うと左右のコントロールが生命線という投手だ。ここまで、背番号3ながら伊藤君がほぼ主戦格で戦ってきたというが、そんな中で一生懸命に努力する選手だということで、三宅君への期待も高かったのだが、それに十分に応える好投だったといっていいだろう。
これで、上尾は1987(昭和62)年以来の関東大会進出となった。
ということは、平成時代になって初めての関東大会ということになる。
それだけ、上尾の低迷期間が長かったということを示しているのかもしれない。
浦和実・早川君
一方、浦和実は昨秋に続いてベスト4に進出しながらも、またしても目前で関東大会進出を逸したことになった。
先発メンバー中5人が2桁背番号をつけた2年生だったが、20番の左腕早川君と、三番で遊撃からリリーフした鈴木琢君に一番の山口君ら、主だったところに2年生が起用されている。それだけチームも若いということがいえよう。
早川君は、昨秋も投げていたが、ストレートの伸びもよく、初速から終速でスピードがさほど衰えないのは、それだけいい投げ方をしているからだともいえるのではないだろうか。そして、ストレートの伸びがいいだけに左腕独特の大きなカーブもより効果的となる。
ただ、この日は連投でやや疲労が蓄積していたこともあって、制球に苦しみ、その分もう一つ切れ味が不足していたようだ。
万全の状態でいけば、好投手だけに期待は高いであろう。
いずれにしても、チーム全体としても大いに伸びシロを感じさせてくれる存在といえそうだ。
(文=手束 仁)