試合レポート

鹿児島東vs沖永良部

2010.07.03

2010年07月03日 県立鴨池野球場  

鹿児島東vs沖永良部

2010年夏の大会 第92回鹿児島大会 1回戦

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川崎(鹿児島東)

雨中の開幕ゲームに輝いたそれぞれの星

雨空を切り裂くような打球が、右翼スタンドへ突き刺さった。

雨が降りしきる中にも関わらず、開会式直後の開幕ゲームということで、大勢の観客がスタンドを埋め尽くした。そのスタンドのあちこちから「鹿児島東の川崎はわっぜ(鹿児島弁で凄い)打つ!」というようなが聞こえてくる。
試合前のインタビューで「チームが勝つために貢献することが第一です。でも、打てる場面があれば、思い切っていきます」とコメントしてくれた。
その言葉通り、3回表、この回、先頭打者として左打席に入った“鹿児島東のトップバッター川崎弘崇”は、タテの変化球を思いっ切りスイング。逆風を物ともしない大会第1号を放った。本人曰く「多分、高校通算19本だと思います」という“多分”もなぜか頼もしく聞こえる。

魅せたのは“打”だけではない。1回裏のピンチに、飛び出した三塁走者を矢のような送球で刺し、遠投115mの強肩を魅せると内野ゴロでの懸命なヘッドスライディング、カバーリング、センターから身ぶり手ぶりの声かけ。

走攻守の高い能力だけでなく、ユニフォームを泥だらけにしながらの懸命なプレーがチームに伝わり、そして勢いをつけた。「夏に近づくにつれて、そういうところが一番変わった」という川崎。

開幕ゲームで、雨空にも負けない一際輝きを放つ “一番星”をみつけた。

一方、鹿児島市内から約500キロ離れた沖永良部は部員35名。そのうち25名が船に乗って今大会へやってきた。ベンチ入りと補助員を除いた2人がスタンドで応援する。そこへ開会式直後にスタンド観戦していた徳之島のナインが加わった。「同じ地区だが、特に対戦したこともないし、顔見知りでもない。でも、同じ離島だからという思いがそうさせた」と徳之島の部員が語ってくれた。OB、保護者を含めたこの応援団に“島の想い”という強い一体感が感じられた。

9回裏、一死走者なし。沖永良部は背番号16をつけた3年生の北野太一が代打として左打席に立った。無心で振り抜いた打球は二遊間をゴロで抜けていった。
「とにかく悔いがないよう、無心でバットを振りました」。
土壇場で登場した背番号16の3年生が、末永広樹監督の器用に応え、塁上で最高の笑顔をみせた。その気持ちが乗り移った沖永良部は続く1番・松田将太の左翼越えの三塁打、3番・伊東卓也の二塁打と反撃をみせ、土壇場で2点を返した。
あと一歩及ばなかったが、最後まで諦めないプレーは十分スタンドに伝わっていた。
最後の夏、負けて悔しい思いの中、背番号16が言った。
徳之島高校が応援してくれているのがわかりました」。
その言葉はキラリと輝いていた。

(文=PN アストロ


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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