12球団30人のスカウトの前に150キロ!畔柳亨丞(中京大中京)が高校生離れの平均球速で復活!
夏の大会が近づくにつれて、注目投手の視察情報が報道される。小園健太(市立和歌山)、森木大智(高知)、風間球打(明桜)…。その中でスカウトから復活を期待されていた豪腕・畔柳亨丞(中京大中京)。13日の岡崎市民球場・東海大相模戦に登板した畔柳の投球は完全復活と印象づけるものとなった。
畔柳亨丞(中京大中京)
3月31日、畔柳にとって悲痛の降板となった。準々決勝までの3試合で、2完封。そして完封した専大松戸戦では平均球速141.6キロ。大会最速の149キロをマークするなど、前評判通りのパフォーマンスを示した一方で、肩肘の違和感で降板した時、治療期間があるとはいえ、夏ではパフォーマンスアップした投球はできるのか?不安視する見方があった。
東海大相模戦に登場した畔柳はその不安を払拭させるものだった。立ち上がりから140キロ後半の速球を連発し、初回に150キロを2球計測。結果として3回を投げて、最速は150キロ、最遅は138キロ。平均球速146.5キロと高校生トップクラスの球速を叩き出した。投球内容も3回無安打無失点、3奪三振とセンバツ覇者に対し、圧巻の投球を見せた。
注目を浴びた畔柳のストレート。それはスピードだけではなく、実際に見ても唸りを上げるようなものだった。岡崎市民球場のネット裏の記者席は上から覗き込む形ではなく、やや下から覗き込む形になるのだが、他の投手と比べてもストレートの伸び具合は凄まじいものがあった。
畔柳は「ストレートについてはセンバツの時と比べても戻ってきた感じはします」と手応えを感じていたように、あくまで3イニングではあるが、パワーアップした様子が感じられた。
センバツ後、ノースロー期間が続き、本格的にブルペン入りしたのが5月中旬から。そこから、打撃投手を経て、3週間前から練習試合で登板。最長でも3イニングと、一歩ずつ階段を登ってきた。復帰過程の中にウエイトトレーニングを多めにした。そこで重視したのは重量ではなく、いかに正しいフォームで回数をこなすことができるか。みっちりとトレーニングを行った結果がフルパワーで投げられる要因につながった。
畔柳亨丞(中京大中京)
試合後、畔柳が興味を示したのは最速ではなく、平均球速だ。これはプロ入りした高橋宏斗(中日)の影響があるという。
「宏斗さんからは最速よりも、平均球速が大事だぞといわれていて、140キロ後半を出すことを求めていました」
畔柳が重要視する「平均球速」。この試合、3イニングながら約147キロが出たことに畔柳は安堵の表情だった。
高橋源一郎監督によると、3イニング以上投げさせることはできるが、この試合の畔柳はかなり力が入っているように感じられ、予定通り3イニングで降板した。ここまでの過程について高橋監督も「順調に階段は登っています。あとは1ヶ月で、球数、イニング数を少しずつ増やしていければと考えています」と状態の良さを評価。
畔柳は出来について「まだ50%」と答え、夏まで目指す投球スタイルとして少ない球数で抑える投手になることだ。
「センバツでは球数が多くなってしまうことが反省点でした。無駄球、投げミスがまだ多く、それが結果として球数が増える要因でした」
この試合の反省点について変化球の精度、コントロールを挙げた。120キロ前半のスライダーの曲がりが大きすぎたりしたが、120キロ後半のツーシームで空振りを奪ったりするなど、一定の成果が見られた。
まだ3イニングではあるが、NPB12球団30人のスカウトの前に見せた投球は夏まで完全密着したいと思わせるものだっただろう。
(記事=河嶋 宗一)