中部大春日丘vs愛知
先制攻撃で中部大春日丘主導権を握って、食い下がった愛知を下す
トーナメント表
・愛知大会の勝ち上がり
大会の詳細・応援メッセージ
・第104回 全国高等学校野球選手権 愛知大会
選手名鑑情報はこちら
・選手名鑑一覧ページ
関連記事
・東邦を筆頭に愛工大名電、享栄が僅差で追い、 星城、中京大中京、至学館に豊川、中部大春日丘らが次のグループ
・愛知私学4強は全国トップレベルの投手揃い、そして12球団注目の遊撃手も熱い
日程・結果一覧
・愛知TOPページ
・第104回大会 全国47都道府県地方大会の日程一覧
気になる学校への応援メッセージはこちら
・学校検索ページ
<第104回全国高校野球選手権愛知大会:中部大春日丘8-3愛知>◇24日◇5回戦◇刈谷
愛知大会は、最初の組み合わせ抽選で、175チームが5回戦までの8ブロックに分かれて組み合わせが決まる。そして、ベスト8が決まった段階で再抽選となる。そんな夏の大会のシステムで、多くの指導者たちは、「夏の愛知大会の場合、ベスト8までが一つの大会で、そこからまた次の大会が始まるという意識」と言う。そういう意味では、5回戦は、その最初の大会の一つの区切りでもあり、ここを勝ち上がっていくことが最初の目標ということにもなる。
昨夏も、ともに5回戦まで進出している両校である。しかし、5回戦の壁で跳ね返され、愛知は日本福祉大付に、中部大春日丘は中京大中京に敗れている。それだけに、「この夏は何とかしてここを突破したい」という両校である。
「じゃんけんで負けて先攻になった時、ちょっと嫌だなと思ったけれども、気持ちを切り替えて、こうなったら『先制パンチを仕掛けよう』ということで攻めていくように指示しました」という中部大春日丘の齊藤真監督。それが見事に当たった形となって3点が入った。
先頭の吉村が二塁内野安打で出ると、服部は粘って四球で無死一、二塁。3番中里が右中間の二塁打で2者を迎え入れる、まさに先制パンチだった。さらに死球後、投ゴロ併殺かと思われた打球で送球ミスが出てなおも1点が追加された。
1点を返された直後の2回にも、1死から9番宮下が左越え三塁打すると、吉村が犠飛でかえして追加点。さらに3回にも、1死後に吉川、小林、比嘉門の3連打でチャンスを作ると、相手送球ミスでもう1点追加した。こうして序盤で中部大春日丘は試合の主導権を握ってリードを広げていった。
愛知は初回に2死二塁から4番澤野の三塁線安打で1点を返した。愛知の攻撃の2回、投手の飼沼が頭部死球で倒れて一時中断というアクシデントがあった。担架で担がれての一時退場ということになったが、様子を見て救護員の大丈夫という判断で飼沼は次の回からもマウンドに登った。飛田陵佑監督は、「指導者としてはいい判断だったかどうかはわかりません。だけど、救護室で彼の眼を見た時に大丈夫なのであれば投げさせてあげたい、投げさせなくてはいけないと思ってしまいました。だから、続投としました」と、この試合に賭けた熱い思いを語ってくれた。
そして、死球後の飼沼は力投を続けて、4回以降は中部大春日丘打線を0に抑えていった。打線も、そんな飼沼の踏ん張りに応えて5回には3番杉本が中前打で出て、5番藤谷が右中間二塁打でかえして、試合の流れも何となく愛知に傾いてきていた。しかも、愛知のベンチは、常に元気に声が出ていた。「まだ行けるぞ」「これから反撃できるぞ」という声が絶えずかかっていた。
序盤に猛攻を仕掛けていた中部大春日丘打線も、飼沼や愛知ベンチの気迫に押されたかのように打ちきれなくなっていた。しかし8回、中部大春日丘は1死後6番比嘉門の右中間二塁打からチャンスを作る。さすがに飼沼も力尽きたか、その後に3つの四球を与えてしまい押し出し。さらに、2死満塁から2番服部が中前打して2者がかえって、決定的ともいえるこの回3点目が入って、6点差となった。
それでも、愛知はその裏、藤谷の2本目の二塁打と、7番竹内の右前打で1点を返して食い下がる姿勢を示した。最終的にスコアとしては少し開いたかなという印象はあったが、愛知の最後まで諦めないで戦う姿勢は高く評価されていいものであった。
今年の3年生たちは、入学した時から新型コロナとの戦いでもあった。そうした中で頑張ってきた選手たちに対しての思いは、愛知の飛田監督も強かったようだ。だから、試合後の保護者への報告会では、「目標としていた次の舞台へは進めませんでした。それは、指導者として力不足だったと思います。だけど、この3年生たちが頑張ってきたことは、チームとしても財産になるし、自分自身の指導者としても学ばされたことも多くありました。自分たちでやってきたことは間違いではなかったとも思えた」と、感極まって時に絶句しながらも、涙を流し語っていた。
「ベンチのエネルギーはどこにも負けていなかった」と、最後まで元気だった選手たちの戦う姿勢を評価していた。そして、最後は胸を張って、「次のチームも、このチームに負けないようないいチームを作っていきたい」と語っていた。
ベスト8の壁を突破した中部大春日丘。
齊藤監督は、「まだまだ、これが登山の入口です。ここからは、一つひとつの壁が厚くなっていくので、一つも気が抜けない状況ですが、これまでやってきたことを信じて頑張っていきたい」と、気持ちを引き締めていた。
(取材=手束 仁)