試合レポート

春日部共栄vs川越東

2014.07.23

春日部共栄、守り勝ち

 10安打と4安打。それでも、4安打のチームが勝ってしまう所が野球の面白い所であり怖い所だ。昨夏準優勝校の川越東対私学4強最後の砦・春日部共栄との試合は5回戦とは思えないハイレベルな争いとなった。

 春日部共栄はエースの金子大地(3年)、川越東高橋佑樹(2年)が先発した。
川越東の左投手陣に対し、春日部共栄打線は強打者三浦などをスタメンから外し、左打者は4番・原田寛樹(3年)とピッチャー金子のみ。この策は春日部共栄が4年前好投手左腕の高梨雄平(現早大)を擁した川越東に対し、用いた策に似ている。

 試合は両先発の好投もありロースコアの展開となる。

 最初にチャンスを掴んだのは川越東だった。
3回表、一死から高橋(佑)がライト前ヒットを放つと、続く渡部遥介(3年)もレフト前ヒットで続き一死一、二塁とする。ここで2番・野木村謙(3年)の当たりはセカンドゴロで併殺かと思われたが打球がイレギュラーし、一塁封殺止まりで二死二、三塁と川越東はチャンスが広がる。
続く駒崎真也(2年)は四球を選び二死満塁とするが、4番・福岡高輝(2年)はファーストゴロに倒れ先制機を逸する。

 すると、春日部共栄はその裏、一死から9番・平塚大賀(3年)が死球で出塁すると二死後、2番・小暮涼(3年)がバスターの構えからライト前ヒットを放ち二死一、二塁とする。ここで3番・守屋元気(3年)がセンター越え2点タイムリー2塁打を放ち春日部共栄が先制する。


 一方の川越東も、4回表すぐに反撃を開始する。
一死から、代打五十嵐(3年)がレフト前ヒットで出塁すると、続く堀川進之介(3年)がプッシュバントを決め一死一、二塁とする。だが、8番・山岸孝太郎(3年)は三振、続く高橋(佑)も凡退し得点を奪えない。
この場面、惜しむべくは山岸が打席間で動きを入れ牽制し、金子は明らかにインコースに投げにくい状況であった。すぐにキャッチャー守屋がマウンドへ向かった所をみてもそれは間違いない。それだけに、外角の球にヤマを張ってもいい場面であっただけに悔やまれる。とにもかくにも川越東は4回表無得点で攻撃を終了する。

 4回裏、春日部共栄も二死から8番・濱谷悠平(3年)がライト前ヒットで出塁すると、ライト渡部がボールを弾く間に一気に三塁を陥れる。だが、続く平塚大賀(3年)が凡退すると春日部共栄ベンチは5回表の守備から平塚に代え三浦友之(3年)を入れる。

 その後春日部共栄・金子、川越東・高橋(佑)両投手の踏ん張りもあり試合は終盤へと進む。

 迎えた7回表、この回先頭の代打藤野隼大(2年)がレフト前ヒットで出塁すると、続く高橋佑樹が送り一死二塁とする。1番・渡部はセカンドゴロに倒れ二死三塁となるが、ここで川越東ベンチが仕掛ける。
続く野木村(3年)が見事にセーフティバントを決め川越東がまずは1点を返す。さらに、二死一塁から3番・駒崎がライト線へヒットを放つと、一塁走者野木村は三塁ベースを回りファースト三浦がややジャックルするのを見て一気に本塁へ突入する。だが、判定はアウト。この回の川越東の反撃は1点で終わる。
この場面、次打者が4番・福岡ということもあり結果論で見て暴走だったのではという人もいるであろう。だが、暴走と好走塁は常に紙一重だ。非常に興味深いシーンであった。


 川越東は8回表にも一死から一握りバットを短く持った主砲長野創太(3年)がフェンス直撃の二塁打を放つ。二死後、満を持して代打の切り札森孝佑(3年)が登場するが、期待の森はサードフライに倒れ万事休す。春日部共栄・金子が10安打を浴びながらも要所を締め1失点完投勝利でベスト8へ駒を進めた。

 勝った春日部共栄は、金子の粘投もあったが、好プレー続出の守備陣がよく守った。守備で失点を最小に防ぐあたりはさすがだ。
だが、高橋(佑)の縦の変化球に対し、最後まで攻略できなかった打線には一抹の不安が残る。そこが、今後への課題か。3番・守屋、4番・原田は好調を維持しているだけに主砲三浦の復活に期待したい。

 一方の川越東だが、昨夏の成績越えとはならなかった。
今大会浦和学院花咲徳栄聖望学園の強豪校が早期敗退していただけにここを乗り越えられればと意気込んでいた。昨夏の立役者高橋尚貴(3年)も今大会まだ2イニングの登板に終わるも、高橋(佑)が好投し狙い通りのロースコアに持ち込んでいた。

 この試合も小技を絡めながら、隙あらば常に一つ先の塁を奪う姿勢など随所に渡辺監督の目指す野球を体現。昨年のような強打のチームとはまた一味違う新たな面を見せ始めていた。それだけにこの段階での敗戦は不完全燃焼であり痛恨であろう。幸い駒崎、福岡の二遊間を中心に今大会安定した投球でチームを引っ張った高橋佑樹と2年生が多く残るだけに、この敗戦を糧に来年こそ悲願の甲子園を達成してもらいたい。

(文=南英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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