聖光学院vs益田翔陽
試合中の一つのプレー・瞬間のジャッジで大きく結果が変わってくるのが野球である。
今大会、松倉雄太が試合を決定づける「勝負の瞬間」を検証する。
甲子園でしか味わえない甲子園の奥深さ
21世紀枠で初出場を果たした益田翔陽。4季連続出場の聖光学院に立ち向かったが、0対8と数字上は完敗だった。試合後のお立ち台に挙がった早戸克也監督は、感想を問われてこう切り出した。
「(相手の聖光学院に)全てにおいて上をいかれてしまった。素晴らしい野球をされていて、勉強をさせてもらいました。選手と私たち指導者にとって良い経験をさせてもらって、これが我々の原点になると思います」。
さらに勝敗の分かれ目を問われると、「守備のミス。踏ん張りきれなかった」と振り返った。
先発の寺戸雅彦(3年)は1回を三者凡退で立ち上がる。だが2回裏、先頭の4番園部聡(3年)レフト前へと運ばれると、処理をした選手がやや手間取っている間に二塁へと進まれてしまった。送りバントのあと、6番酒谷遼(3年)の内野ゴロの間に1点を失う。
その後、4回の2点、7回の3点には、記録上でもはっきりとわかるミスにつけ込まれた。
昨秋の公式戦失策がわずか1つだった益田翔陽。「試合の入りまではすこく良い感じで準備ができた」と中本康太主将(3年)が話すように、いつも通りを心がけていたが、実際に始まって見ると想像以上の雰囲気を味わっていた。
「一つ、一つのプレーに歓声が沸き起こる。平常心を保ってやっているつもりでしたが、実際には動揺していた。選手もいっぱい、いっぱいたっだのでもう私が少し声をかけてやれていれば良かったのですが」と唇を噛みしめた早戸監督。
映像や練習などで準備を積み重ねてきても、実際にゲームが始まってみないと体感できないことが多々あるのが甲子園。ミスをする度に得点に繋げられる。勝敗という視点ではよくありがちな光景になりつつあった。
早戸監督は選手の様子を見ながら、ミスをした選手に声をかけ続けていた。
「秋の大会では結果が1失策であるが、元々そんなにすごい選手はいない。エラーをしてしまうことは仕方ないが、ミスをした後にどう立ち向かうか。全員がカバーしなければと選手に声をかけました。精神的に鍛えていかないといけないと思います」と心境を語った。
少し状況は違うが、初出場の初戦でこの日の益田翔陽と同じように大敗したチームがある。その一つが今回戦った聖光学院。2001年夏に明豊(大分)を対戦。0対20というスコアだった
「ボロボロのスタートでした」と地に足がつかなかった当時の様子を斎藤智也監督は語る。益田翔陽にとってもここからがスタートという気持ちではないだろうか。そういう意味では聖光学院と対戦できたことは計り知れないくらい大きな体験だったと言えるだろう。
甲子園の奥深さ。それは甲子園でしか味わえないものもある。
これから目先に見える夏へ向けての過程はもちろん大事であるが、長い年月を経てのチームの育みにも注目していきたい。
(文=松倉雄太)