試合レポート

都立青山vs都立中野工

2013.03.18

都立青山vs都立中野工 | 高校野球ドットコム 

力投する田邊傑(都青山)

都立青山を引っ張る投打の柱

高校球児でいちばん成長する時期は冬場である。まだ新チームがスタートしたばかりの秋では未熟さが見られるが、厳しい冬を乗り越えてからの高校球児の逞しさは驚かされる。体力面の成長によって素材が磨かれて、台頭する選手も多い。この試合は一冬超えて逞しくなった逸材をご紹介する。

その名は田邊傑(2年)。部員わずか12人の都立青山のエースである。177センチ72キロと恵まれた体格。12人ということもあって、シートノックに参加。地肩の強さと動きの良さを見せており、実際の投球が楽しみであった。

1回表、都立青山は相手のエラーと犠牲フライで3点を先制する。田邊がマウンドに登る。1回表の投球を目にした後、わずか12人のチームからこんな良い投手がいるのかと驚きを隠せなかった。今までの経験でも、20人に満たないチームでこれほどの投手は見たことがなかった。

直球のスピードは130キロ前後が出ているのではないだろうか。指先にしっかりと力が伝わった直球は本大会に出場する投手と遜色ない。曲がりの大きいスライダー、カーブのキレ、コントロールも良い印象だった。

彼は投球だけではなく、ベースカバーも速く、フィールディングの動きも卒がない。1.1秒~1.2秒を計測するクイック。投手の基本的なところはしっかりと押さえていて、総合力の高い投手であった。

技術の高さよりも目を惹いたのはハートの強さである。勝気な表情をしていて、顔色一つ変えずに打者の内角にバシバシと投げ込んでくる。都立中野工の打者はバットが出ずに空振り、あるいは止めたバットが内野ゴロになっていた。こうして見ると経験豊富な投手に見えるが、実は秋の公式戦で登板していない。

驚かされたが、都立青山の木島監督によるとまだ登板させる状態ではなかったという。故障をしていたわけではないが、まだ公式戦を投げさせられる状態ではないとのことだ。

今年はエースとして投げてもらうためにこの冬は本人が苦手とする走り込みを徹底的に行わせた。この試合では5回を投げて1安打無四球5奪三振1失点と上々のデビューを飾った。


都立青山vs都立中野工 | 高校野球ドットコム

打でも勝利に貢献した田邊傑(都青山)

打ってもチームを引っ張る存在で、6番に座り、まず初回に3点目の犠牲フライ。その後も2本の長打を放った。フォローが効いた豪快なスイング。今回はたまたまと笑うが、打撃力も高いことが伺えた。投げるだけの男ではないし、公式戦デビューながらあっさりと試合に入る事ができていて、自分のプレーを発揮出来るメンタルの強さを感じた。

プレーだけではなく、彼の人間性にも聞いてみた。
「投手らしい性格をした子ですね。上に対しても強く主張しますし、生意気といえば生意気です。ただ同級生は彼のことを大きく信頼している様子が伝わってきます」
果敢に打者の内角へつく投球スタイルからは鼻っ柱の強さを感じたが、周りを見渡し、余裕も感じられる立ち居振る舞い。我が強い投手はどこかで横柄なプレーをする投手も中にはいるが、彼にはそれを感じないし、12人だからそれをすることが許されない環境だからであろう。自分がチームの中心であることを自覚してプレーしている。

投打で引っ張るプレーは、12人しかいない都立青山にとっては大きな存在と映った。都大会へ勝ち上がったときはぜひ注目してほしい投手だ。

(文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.16

U-18代表候補・西尾海純(長崎日大)、甲子園で活躍する幼馴染にむき出しのライバル心「髙尾響には負けたくない」

2024.05.16

【秋田】秋田修英と秋田工が8強入り、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?