試合レポート

都立片倉vs東海大菅生

2012.07.18

シード校対決を、楽しんで戦った

シード校対決となった4回戦だが、大会前から、評判が高かった片倉。金井貴之という注目の投手がいるということもあったが、チームとしての評価はそれだけではない。むしろ、金井が注目を浴びることによって、それに引っ張られるようにして、全体が底上げされていっているということがある。

金井に負けまいと、昨秋はエースナンバーをつけていた小田嶋冶真人が精神的にも成長した。こうして、投手の2本柱が出来てきたことによって、守備の質が上がってきた。守備が向上したことによって、打線は迷いがなくなり思い切りがよくなった。こうした好循環が続いている。

一方、東海大菅生は、元中日出身の若林弘泰監督の下、しっかりと鍛え込まれたチームである。大林日高も、決して球威のあるというタイプの左腕ではないが、自分のリズムを大事にして、丁寧な投球が光るという投手だ。過去、春夏2回ずつの甲子園出場実績もある実力校でもある。
躍進する都立校と大学系列の強豪校のという対決図式も見る人の興味を引いた。

先制したのは東海大菅生だった。
1回、先頭の藤原遥樹が軽く合わせてレフト前へ運ぶとすると盗塁で進む。二死後、4番長谷川雄飛のセンター前にタイムリーを放った。しかし、失点しても片倉は慌てなかった。金井は力強いストレートで後続を三振で切ると、その裏すぐに反撃に出た。

片倉は四球と、4番今井雄太のライトオーバー二塁打などで二死二、三塁とする。一塁走者が自重して三塁で止まったのがどうかなと思われたが、そんなことを思わせる間もなく、続く小田嶋が初球を叩いて左中間に運んで二者を迎え入れた。さらに片倉は、3回にも2番今岡謙のレフトへのソロアーチでリードを広げた。


守っても片倉は3回、藤原に二塁打されたところで、すぐにファーストの小田嶋と金井を入れ替えた。宮本秀樹監督は、「金井が相手打線に合わされていると感じましたから、小田嶋に代えたんだけれども、金井に合っているということは小田嶋には絶対に合わないと思いました」と語っていたが、その通りでその後、三人をきっちりと抑えた。

結局、小田嶋はロングリリーフという形になって7イニングを投げ切ったということになったのだが、散発の4安打に抑えた。9回こそ併殺を焦った失策で無死一、三塁となり、併殺の間に三塁走者を帰されて1点差となったものの、危なげはなかった。

流れるようなフォームの金井に対して、小田嶋は左のサイドで、ややぎくしゃくしたようにも見えるが、それでいてスライダーのキレもよく、制球もいい。交代してからも無四球だった。

片倉は、甲子園実績もある強豪校に対しても、何ら臆することなく、堂々とした戦いだった。
宮本監督は、「今までは負ける時っていうのは、たいていオレの判断ミスか失敗なんだけれども、9回は同点を覚悟して、もう一度金井にしようかとも考えたけれども、アイツら平気でゲッツー取っちゃうんだもんね。東海大菅生の名前に対しても、一番意識していたのがオレだったんじゃないかな。何もしないで、慌てない方がいいんだね(笑)。だけど、今日は嬉しい。勝ったから嬉しいというのではなく、試合ごとにアイツらが上手くなるというより、強くなっていることが感じられるのが嬉しいね」と、声も弾んでいた。

チームとしても夏は初のベスト8進出ということになったのだが、それも選手たちは当たり前と受け止めていかのように感じさせた。「明るく、楽しく野球をやっていこう」というチームのモットーは、この日も十分に感じさせてくれるものだった。
「また3日間、アイツらと練習できるのが嬉しいね。そして、また強くなったところを見せられますよ」と、指揮官も明るくポジティブな姿勢を見せていた。

(文=手束仁)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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