名古屋工vs名古屋商
田崎(名古屋工業)
小人数チームでも出来ることとは?
敗者復活戦となったこの試合。名古屋工対名古屋商の対戦。
工業は14人、商業は9人とお互い小所帯のチーム同士の対決である。
試合が動いたのは2回裏、名古屋商はワンアウト二塁から5番篠崎のタイムリーで1点を先制する。
名古屋工は4回の表に反撃開始。ノーアウト満塁から7番蓮池のタイムリーで2点を先制すると8番別府込の内野ゴロの間に1点を加える。さらに9番田崎のタイムリーで4点目。4対1と逆転する。
さらに6回の表にまたも蓮池のタイムリー、名古屋商のエラーなどで3点を入れて7対1。
しかし名古屋工はツーアウト1,3塁から5番吉野のタイムリーで1点を返し、7対2とする。
7回の表、名古屋工打線に火が噴き、失策も重なって一挙12点を入れる。
その裏を名古屋工は三者凡退で締めて敗者復活戦に勝利した。
―小人数チームでも出来ることとは?―
高校野球ファンを惹きつける学校とはローカルで地域密着・県立・小人数。この3つが備わったチームというのは甲子園のファンの心を大きく動かす。
いわば昨年の選抜では部員17人で臨んだ川島(徳島)は東海屈指の強豪・大垣日大に1-2で惜敗したものの、スタンドの雰囲気は川島ムードであったことは間違いない。
小人数のチームが強豪チームに接戦を演じ、強豪を苦しめる戦いぶりを見せれば一層、ファンの心を惹きつける。
昨年の川島はそんな魅力があった。
加藤(名古屋商業)
しかし現実はそう上手くはいかない。
全国に点在する小人数の学校はまず野球が出来る、試合が出来て上出来というチームが大半なのだ。
この試合でも試合が出来てというより一つのプレーをこなせて上出来という内容だった。
フライが飛んで捕る動作がこれほど難しいものであることを強く感じた。
ましてこの試合は風が強く吹いている。
強豪校の選手は、風を計算して落下位置に走る。これは鍛錬を積み重ねて出来るもので、普通の高校生がその予測能力の精度をいきなり上げるのは難しい。
この試合だけではない。いろんな地区の小人数チームも似たり寄ったりの現状。その実情を知っているだけに大垣日大に接戦を演じた川島高校の凄さに改めて驚かされる。
ただ川島高校の選手も同じ高校生。
全国に点在する小人数チームは川島のようなチームを作り上げることができるのだ。
まだ川島には遠いが、3月22日に観戦した東郷高校はレギュラー9人がきびきびと動ける好チーム。
当たり前のアウトを当たり前にアウト。当たり前のカバーリングを当たり前にこなしていた。
東郷高校は基礎練習を中心に行ったという。
決して特別なことはやっていない。
普通の高校生でも段階を踏んで着実にステップアップしていけば、戦えることを東郷は教えてくれた。
人間は持っている能力によって出来ないことを少なからず出てくる。
できないことを無理にやろうとしてもそれは厳しいことだ。
まずは出来ることをコツコツと積み重ね、できるようになったら次のステップに移る。
地道で単調な作業。
つらくてさぼりたくなってくる。
だがそれを積み重ねた時、大きな光が見えてくる。
そこには人数は関係ない。
この積み重ねこそが少人数の高校でも強豪校と十分戦える一つの武器となってくるのだ。
(文=編集部:河嶋宗一)