足首の捻挫はクセになる?
足関節の捻挫は軽く考えず、受傷直後の対応と再発予防をしっかり行おう
捻挫(ねんざ)というと真っ先に思い浮かぶのは足を内側にひねられて起こる内反(ないはん)捻挫ではないでしょうか。着地をした瞬間や切り返し動作、ベースを踏んだとき、不意に転がっているボールを踏んでしまった等、足が地面に接地したときにバランスを崩してしまうことで起こります。内反捻挫では足が内側に大きくひねられて、足の外側にある組織(靱帯など)を傷めてしまうケースが大半を占めます。
一度捻挫をした足首は「クセになりやすい」とも言われていますが、その主たる原因を挙げてみましょう。
●ケガの初期対応に問題あり
ひねった瞬間は「痛い」と感じてもしばらくすると「何とかプレーできそうかも」と続けてしまうことがあります。捻挫をした足は関節内の組織や靱帯を傷めている可能性が高く、ケガ直後は気にならなくても時間とともに痛みや腫れが強く現れることがあります。パンパンに足が腫れた状態であわててアイシングを開始しても、炎症症状は周囲に拡がり、結果として競技復帰が遅れることになってしまいます。捻挫をした直後はプレーを中止し、患部をバンテージなどで軽く圧迫を加えて、安静に保ち、氷などを使って冷却する(アイシング)ようにしましょう。痛みや腫れの程度が強い場合は、なるべく早めに医療機関を受診するようにします。
●患部の状態が改善していないのに競技復帰する
適切な応急対応を行うと患部の痛みや腫れは時間の経過とともに改善していきます。ケガの急性期は48~72時間程度(約2~3日)と言われているので、その時期を過ぎると痛みなどが気にならなくなることがあります。この段階では、炎症症状は落ち着いていても、ひねった部位を中心に靱帯や関節などを構成する軟部組織は完全に回復しているとは言いがたく、足関節を固定・保護する靱帯の機能も弱いため、ジャンプや切り返しなど足首に大きな負荷のかかるプレーは避けた方がよいと考えられます。ところがこの段階で競技復帰してしまうと、足関節の安定性が弱いため、ちょっとした動作でまた同じように捻挫をしてしまうということになります。競技復帰はあせらずに、足首に負担の少ないものから少しずつ再開していくことが大切です。
●必要な筋力が備わっていない
足首の外側にある靱帯などが足関節の安定性を担っていますが、それと同じような働きを持つものが筋肉です。特に内反捻挫の場合は、足の外側にあって内側にひねられることを防ぐ腓骨(ひこつ)筋や、脛の前にある前脛骨筋(ぜんけいこつきん)、足底から足首の安定性に関わる足底筋(そくていきん)など多くの筋肉が足関節の安定性に関与しています。捻挫を経験した足首は靱帯などの組織が傷んだことによってその機能が低下していることが考えられるため、それを補う意味でも足関節周辺部の筋力を強化して、捻挫の再発を避けることが大切です。
足首の捻挫はそのまま放置しておくと「クセ」になりやすいと言えるでしょう。それを防ぐためにもケガの初期対応や段階的な競技復帰、そして捻挫の繰り返しを防ぐための筋力強化が必要不可欠です。「捻挫はよくあることだから」と考えるのではなく、クセにならないためにできることを実践していくようにしましょう。
文:西村 典子
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