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プロへの入りの扉を開いた「縁」と「実力」 恩師が明かす中谷将大(阪神タイガース)

2019.05.29

 2017年に20本塁打を放ってブレイクし、阪神タイガースの中軸としての期待が高まる中谷将大。今シーズンもここまで(5月27日時点)5本塁打を放っており、その長打力に磨きをかけている。

 そんな中谷選手の活躍の基盤を作ったのは、他でもない福岡工大城東時代だろう。今回は当時の恩師・杉山繁俊監督(現東海大福岡)の言葉から、中谷の高校時代の歩みを紹介していく。

初めて見た時から中谷とは「縁」があると直感

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高校時代の中谷将大

 中谷との最初の出会いは、とても「縁」を感じさせるものでした。

 ある中学野球の関係者に、いい選手いませんかと聞くと、二日市ライオンズに「中谷」といういい捕手がいると返ってきました。
 体もあって形も良い、そして足もそこそこある。変化球を打つのは得意な方ではないけど、とにかく遠くに飛ばすことができる選手だと言われ、一度試合を見に行くことにしました。

 そしていざ試合を見に行くと、その日に中谷はちょうどホームランを打ったのです。
 飛距離も結構飛びましたし、キャッチャーとしての動きも悪くない。捕ってからスローイングまでの動きだけは遅かったのですが、高校野球の中では肩も強いですし、何より最初の出会いがホームランですから。

 これはもうウチに「行け」との合図だなと思い、すぐに二日市ライオンズの監督さんに、是非とお願いに行きました。すでに中谷の元には、他からも声が掛かっていたようですが、最終的には福岡工大城東を選んでくれました。やはり、初めから中谷とは「縁」があったのかもしれないですね。

起用法で頭を悩ませた福岡工大城東の「捕手問題」

 こうして福岡工大城東へと入学した中谷でしたが、当時のチームにはある悩ましい問題がありました。中谷の上の学年に、いい捕手が二人も在籍していたことです。

 一人は2学年上の尾嶋祐輔、もう一人は阪神タイガースでもチームメイトになった1学年上の梅野隆太郎です。3人とも本当にいい捕手で、それでいてクリーンナップを任せられるだけの打撃力も持っていました。

 中谷も一年生から捕手として経験を積ませたかったのですが、尾嶋と梅野がいたことで、なかなか経験を積ませることが出来なかったのです。

 結局、中谷は初めはバッティングを活かしてファーストや外野を守らせて、捕手としては2年の夏から本格的に起用し始めました。
 今振り返っても、1年生の頃から捕手として起用できていれば、もっと捕手としての評価も上がっていたと思います。結果的に、バッティングを磨くことも出来ましたが、少しもったいなかったなと思います。

[page_break:プロに行くためには「大舞台との縁」も大事]

プロに行くためには「大舞台との縁」も大事

プロへの入りの扉を開いた「縁」と「実力」 恩師が明かす中谷将大(阪神タイガース) | 高校野球ドットコム
中谷将大(阪神)の恩師である杉山繁俊監督(現東海大福岡)

 中谷の先輩であり、今は阪神タイガースのチームメイトでもある梅野隆太郎は、高校から直接プロに行くことが出来ませんでしたが、中谷は高校から直接プロ入りすることが出来ました。
 どちらも素材としては全く変わらない良い選手でしたが、中谷だけがプロ入りできたのは「上のレベルの大会」を経験できたことにあると思います。

 中谷の代は春季大会で九州地区大会に出場し、中谷は[stadium]KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎[/stadium]の中段くらいまで飛ばすホームラン打ちました。
 あの一本が、プロの評価を一気に上げたのだと思います。

 梅野の場合は、小柄であることもプロからの評価を下げる要因になったのだと思いますが、やはりプロに行くためには「大舞台との縁」も大事なのかもしれません。
 もちろん中谷も、プロにいくための努力は毎日必死に続けていました。ですが、中谷は実力だけでなく、そういった「縁」も持ち合わせていたのでしょう。

チャンスに強く、打点を稼ぐことができるバッターになって欲しい

 高校からプロ入りを果たし、初めの頃こそ苦労はしたようですが、順調に成長しているようですね。

 今は中谷は野手ですから、ホームランバッターを目指すことも大事だと思いますが、個人的にはホームランよりも打点を稼げるバッターになって欲しいと思います。
 プロのレベルだと、足を使えるタイプでもないと思いますし、決して長打が素晴らしい訳でもありません。

 そうなると、やはりチャンスに強いバッター、打点を稼ぐことができるバッターであることが生き残っていく道ではないかなと思います。

 中谷も梅野と同様、まだまだ成長できる選手だと思います。皆さん、是非応援してやってください。

(取材・文=栗崎祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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