高卒プロを意識して大きく成長を遂げた大型遊撃手・金田優太(浦和学院)の覚醒のきっかけ【前編】
今年の高校生遊撃手を代表する1人として浦和学院(埼玉)の金田優太内野手(3年)の名前が挙がる。細身に見えるが、182センチ、82キロとガッシリとした体格。高校通算28本塁打の長打力に、軽快なフットワークで捌く守備が光る大型遊撃手だ。
いかにして成長したのか。その道のりを振り返っていく。
想定外だったU-15代表 レベルの高い選手から吸収し、浦和学院の主力へ成長
浦和学院・金田優太
川口市出身の金田は、芝西中時代に投手と遊撃手を兼任していたが、チームとしてはそれほど実績を残せず、県大会2回戦敗退で、上位に進出することはできなかった。
そんな中、軟式のU-15代表入りを果たした。金田は想像もしていなかったという。
「まず軟式のU-15代表というものも知らなかったですし、県大会でもそれほど勝っていないですし、驚きました。でも代表に選ばれて素直に嬉しかったです」
アジア大会では優勝を果たしたが、同じ代表選手のレベルの高さに驚いた。
「県大会でもすぐに負けていたので、同級生のレベルが高くて、こんな高いレベルでやっているんだということに気づくことができました。大会中は非常に楽しく、海外の選手は大人のような体格をしていて、パワーでは負けましたけど、失策も0でしたので、日本の野球もできたんじゃないかと思います」
森大監督に誘われたことがきっかけで、浦和学院への進学を決めた。入学前に野球部の施設、練習内容を見て、「甲子園に行ける。県内の学校から甲子園に行きたかったので、浦和学院に行くことを決めました」と振り返る。
入学後、経歴が凄い先輩や同級生がいたことに衝撃を受けた。なかなか思うようなパフォーマンスができず、1年生の時はずっとBチームだった。
「最初は硬式出身の選手が活躍をしていて、自分自身、焦りはあったと思います」
懸命にレベルアップし、2年春に初めてベンチ入りを果たす。一塁手としてレギュラーを獲得して、さらに夏では投手としても活躍を見せ、甲子園出場を経験する。当時についてこう振り返る。
「怖いもの知らずでやっていて、勢いでやっていたと思います」
新チームでは遊撃手をメインにしながらも、リリーフもこなす二刀流として出場するようになる。左腕エース・宮城誇南投手(3年)との2枚看板は強力なものとなっていた。
金田は前チームとは違う役割にやりがいを感じていた。
「先発を自分の代でやるようになりました。前チームまでは宮城と2人で1試合を投げていましたが、秋から1人で1試合を任されました。そこで結果を残すのは難しい部分はありましたが、投手としての成長を実感したと思います」
投手としても大きくレベルアップした。2年春の時点では130キロ前半だった最速が、11月の練習試合で最速143キロをマーク。投手としての成長について、「自分はストレートのスピードよりも、切れとコントロールが持ち味だと思っていて、特にインコースに投げ込むストレートに自信を持っていました。そこにストレートの速さがついてきたので、さらに自信になったと思います」
金田に求められた姿は、投手、野手ともに活躍できる万能型プレーヤー。ただ、将来を考えると、さらにパワーアップしたいと考えていた。2年夏から高卒プロということも意識していた。
「去年の夏の時は、主力とはまだ言えない立場でしたが、試合に出させてもらった時に今の監督に『プロを目指してみないか』と連絡をもらった時に少し意識するようになりました。
一つ上の代は能力のあるチームでしたが、その中でもプロに行くような選手はいなかったので、そんな中でまだ能力的に大したことがなかった自分が行けるのかという不安はありました」
ここで覚悟を決めた金田はプレーに対する意識を改めていく。
「プレーしている時は何も考えずにやっていましたが、監督が自分をプロに行かせるために色々やってきてくれたこともありますし、試合で結果が出るような状態にいく方法だったり、コンディションの方法だったりトップ選手がやっているようなことを教えてくれたので、育ててもらった感じです」
体作りにも励み、10キロ増量に成功した。センバツ前の取材で、初めて金田のプレーを見た時と比べると見違えるほど逞しくなっていた。センバツ前はこう決意していた。
「今はやっていますが、将来的には野手に挑戦します。ショート1本で見ていただきたいので、守備、打撃を見てもらいたいです。これまで打撃は野手の間を抜くヒットが多かったんですけど、長打力が増した部分も見てほしいです」
そして金田は驚くべき活躍を見せていく。
(取材=河嶋 宗一)