試合レポート

東海大菅生vs帝京

2016.04.16

深澤決勝2ラン 東海大菅生、帝京破り西東京勢唯一の4強へ

東海大菅生vs帝京 | 高校野球ドットコム

伊藤(東海大菅生)

 熊本、大分などで地震が続く中、試合開始に先立って、両校の選手、審判、観客が黙とうし、半旗が掲げられた。

 東西東京の強豪対決となったこの一戦。4回戦では東海大菅生修徳に圧勝したが、帝京都立東大和に苦戦した。テストという意味もあるにしても、帝京は投手陣のやり繰りに苦労しており、この大会3試合とも、異なる投手が先発のマウンドに立った。この日の先発は背番号7の佐藤 怜。長身から長い手足を利しての投球は、適当に荒れて、東海大菅生は序盤打ちあぐねる。「思ってより来ている、と選手は言っていますけど。そうでもない、と言う選手もいて」と東海大菅生の若林 弘泰監督。つかみどころのなさが、むしろやっかいでもあった。

 先取点を挙げたのは帝京であった。1回裏、四球の1番相曽 幸宏が二塁に進み、4番浅野 丈は三塁への強い当たり。これを三塁手・小玉 佳吾がはじいて左前安打となり、相曽が生還した。

 それでも3回表東海大菅生は、この回先頭の8番郡 怜央が死球、9番高橋 陸のバントは三塁への小フライとなったが、三塁手が取れず内野安打に。1番佐藤 弘教が送り、2番杉本 蓮の二ゴロの間に郡が生還し同点。3番落合 宏紀の左犠飛で高橋が還り逆転した。

 この裏帝京は、浅野の二塁打と田中 麟太郎の左前適時打で、すぐに同点に追いつく。
さらに4回裏には敵失で出塁した石井 海を一塁に置いて、1番相曽の左中間の柵越えの2ランで、帝京が2点を勝ち越した。

 しかし東海大菅生は7回表、四球の高橋を一塁に置いて3番落合のライト柵越えの2ランで、再び、同点に追いついた。

 ここから試合は、大きく動く。9回裏帝京は四球で出塁した1番相曽 幸宏が二盗と犠打で三塁に進む。ここで打席に立った3番佐藤 怜はいきなりスクイズ。しかしバットに当たらず、三塁走者は慌てて三塁に戻る。けれども、2ストライクになってから、佐藤 怜はまたもスクイズ。バットを引いたものの、三塁走者は三本間に挟まれアウト。チャンスを逸した。「あれは前田監督のすごさをみました。2回続けてスクイズというのは、私にはできない。勉強になりました」と、東海大菅生の若林監督は言う。失敗に終わったものの、帝京・前田 三夫監督の勝負に対する執念は、若林監督に衝撃を与えた。


東海大菅生vs帝京 | 高校野球ドットコム

佐藤怜(帝京)

 それでも、東海大菅生の先発である伊藤 壮汰は、後半球威を増して、帝京打線を封じる。「最初は力をセーブして投げました。帝京は初球から打ってくるので、甘い球は投げないよう気を付けました」と、伊藤は言う。

 試合はそのまま、延長戦に突入。何とか持ちこたえていた帝京の先発・佐藤 怜も、延長10回が終わったところで、119球に達していた。

 そして延長11回表。この回先頭の東海大菅生の5番伊藤が四球で歩き、捕逸で二塁に進み、6番本橋 実生に3ボールとなったところで、捕手の郡 拓也が防具を外し始める。するとそのままマウンドに上がった。郡は制球が定まらず、満塁のピンチを招くものの、1番の佐藤を遊ゴロで仕留めるなど、何とかピンチを切り抜ける。けれども、ここが限界であった。

 延長12回表、四球で出塁の落合を一塁に置いて4番深澤 祐太は、レフト柵越えの2ラン。その裏伊藤は四死球の走者を2人出したものの、帝京を抑え、延長12回6対4で東海大菅生が勝利。西東京勢としては唯一の4強進出を決めた。

 「深澤は大事なところで打っている。4番がしっかりしてきた」と東海大菅生の若林監督は語る。その一方で、記録上の失策は2個だが、失策と記録されてもおかしくないミスもいくつかあり、守備の面では課題も残した。それでも、延長15回を投げ切った秋季都大会同様に、エースの伊藤 壮汰は、この日も162球を投げ切るタフな投球が光った。次は二松学舎大附と対戦する。一昨年の秋季都大会の再戦である。

 「二松学舎大附とは1年生の秋に対戦しています。1週間間があるので調整して、大江君に勝ちたいです」と伊藤は語る。
なおこの勝利で、東海大菅生は夏の西東京大会の第1シードが確定した。

 一方、敗れた帝京であるが、主軸の岡崎 心を負傷で欠きながらも、打線はやはり強力である。ただ問題は投手力である。この大会、捕手の郡も含め、6人が登板した。それに秋は中心投手でありながら、この大会は登録されていない高丸 優太安村 陸人もいる。夏に向けて誰が前田監督の信頼を得ることができるか。全ては、そこにかかっている。

(取材・写真=大島 裕史

東海大菅生vs帝京 | 高校野球ドットコム
注目記事
2016年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.22

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.23

春季関東大会でデビューしたスーパー1年生一覧!名将絶賛の専大松戸の強打者、侍ジャパンU-15代表右腕など14人がベンチ入り!

2024.05.22

【宮城】仙台育英は逆転勝ち、聖和学園が接戦を制して4強入り<春季県大会>

2024.05.22

【北信越】帝京長岡の右腕・茨木に注目!優勝候補は星稜、23日に抽選会

2024.05.22

【秋田】明桜と横手清陵がコールド勝ちで4強入り<春季大会>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.04.23

床反力を理解しよう【セルフコンディションニングお役立ち情報】

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?