試合レポート

帝京vs都立江戸川

2019.07.19

「守備の帝京」成熟中!エース・田代が2試合連続完封!

 守備の帝京を遺憾なく発揮した試合だった。
 帝京都立江戸川の先発・船津 遼太(右投げ左打ち・178センチ70キロ)の投球の前に苦しんだ。投球フォームから筋の良さを感じる好投手だ。ノーワインドアップから始動し、左足をゆったりと上げてから右足の膝を適度に伸ばしてバランスよくたつ。左足を遊撃方向へ伸ばしていきながら重心を下げていき、着地を行う。内回りの旋回からトップを作り、リリース。常時130キロ~135キロ前後(最速136キロ)のストレートは回転数が高く、両サイドに投げ分けができる。さらに120キロ前半の縦横のスライダーの精度も素晴らしく、帝京打線はなかなか安打が出ない。4番を打つ小松涼馬も「本当に良い投手でした」とたたえる。船津は6月までケガで苦しんでいたが、その期間、しっかりとトレーニングしたことが球速アップにつながったようだ。

 速球、スライダーのコンビネーションもはまり帝京打線から凡打の山を築く。

 一方、帝京の先発・田代涼太も素晴らしい内容だった。初戦で完封勝利した実践学園戦に続き、この試合もコントロール抜群のピッチング。ノーワインドアップから始動し、右足をゆったりと上げていき、軸足にしっかりと体重を乗せて、勢いよく踏み込んで、スリークォーター気味に腕を振っていく。常時130キロ~136キロの直球に加え、120キロ前半のスライダー、120キロ前半のツーシームはチェンジアップのように変化することもあれば、スクリュー気味に変化もする高度な変化球。春の都大会では常時120キロ~125キロ程度なので、10キロ近くもスピードアップしたことになる。

 田代は春の都大会が終わってもジムでトレーニングするなど、冬さながらの体づくりを行った。またコーチから投球フォームの指導を受けた。
「体重移動が良くなりました」と語るように春の時は右足が突っ張り気味だったが、この夏はしっかりと体重が乗り、スムーズな体重移動を実現。再現性の高い投球フォームとなり、いつでも精度の高いストレートを投げ込むことができる。

 2人の投げ合いのままで試合は後半戦へ。帝京の前田三夫監督は打ちあぐむ打撃陣へスイング軌道を指示した。船津の軌道に合わせてタイミングの取り方も工夫した。それが実ったは7回裏、6番加田拓哉が甘く入ったスライダーを巻き込んでレフトスタンドへ飛び込む2ランで2点を先制した。

 そして投げては田代が9回を投げて、被安打4、9奪三振、完封勝利。これで3回戦に続き、2試合連続となった。田代は「この夏、1試合1試合ごとにリセットするというテーマで試合をしていて、1試合ごとによくなっている感じがあります」とこの試合の投球に手ごたえを感じている。田代の成長は著しく、球速の成長を比例するようにして、変化球の精度も進化している。現時点では東東京屈指の左腕へ成長しつつあるだろう。

春では投手力に不安があったが、だいぶこの3か月ほどでエースらしくなった。また自慢の守備でも無失策と負けにくいチームへ成長している。今後の課題は打撃だ。前田監督は「今日も詰まるような打撃ばかりでしたよね。しっかりとはじき返す打撃がでれきばいいんですけど、それができないので、試合を重ねながら投手に対応できる技術を身に着けれればと思います」と試合を通じての成長を願っていた。

 それでも無失策の守備、2試合連続完封を果たし、急成長中の田代。「守備の帝京」は勝ち進むにつれて成熟している。

 

(文=河嶋宗一

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会
■開催期間:2019年7月7~7月27日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会東東京大会】
■展望コラム【【東東京大会展望】二松学舎大附の夏三連覇を阻むチームは現るか?東東京大会を徹底解剖!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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