稲毛vs横芝敬愛
ルーズヴェルト・ゲーム!稲毛が4点差をひっくり返し、逆転サヨナラ!
昨夏ベスト32の稲毛と横芝敬愛の対決。試合最後にとんでもないドラマが待っていた。
まず2回表、横芝敬愛は4番行木俊(3年)の中前安打で初ヒットを記録。5番林 啓斗(3年)が中越え二塁打を放ち、行木が生還し1点を先制。先制点で流れをつくあった横芝敬愛。ここから打線が一気につながる。
6番永松 智也(3年)の犠打で一死三塁とチャンスを広げると、7番伊藤 一真(3年)が左中間を破る適時三塁打で2点目。さらに8番越川瑛仁(3年)の適時二塁打で3点目。二死三塁になって、1番石川陵起(2年)が右越え適時二塁打を放ち、4点目、さらに2番平井 和希(3年)が二塁強襲安打。二塁手がもたつく間に二塁走者の石川が生還し、一気に5点を入れた。
横芝敬愛の先発の行木 俊(3年)は尻上がりに状態を上げた。1回裏、二死三塁のピンチを招いたが、三振に打ち取った行木。2回以降は常時120キロ後半~133キロ前後の直球、120キロ近いスライダー、110キロ前後の縦スライダー、100キロ前後のカーブを巧みに投げ分けるピッチング。春先、故障により、ストレートの調子は本調子ではない。それでも、状況に応じてストレートを強弱をつけたり、右打者、左打者にも内角に変化球を投げたり、バリエーションは多彩。器用な投手ではあるが、変化球に頼りすぎず、ここ一番でストレートで押す。ピッチングセンスが優れた投手である。
追加点を入れたい横芝敬愛は6回表、9番鈴木蓮音(3年)の二塁打をきっかけに、二死三塁のチャンスを作り、3番佐藤 嘉洋(3年)が適時打を放ち、ようやく追加点が入った。
しかし6回裏、稲毛が反撃。一死一塁からエンドランを仕掛け、8番大和地 達樹(3年)が左中間を破る適時三塁打を放ち、1点を返す。代打・横山に四球を与えたところで、エース・行木は降板し、2番手は左腕・大木稔貴(2年)が登板。大木は1番濱廉定(2年)に左前適時打を浴び、2点目を失うが、その後、連続三振に打ち取りピンチを切り抜けた。
だが横芝敬愛は7回表、8番越川の犠飛で1点を追加。7回裏、稲毛はスクイズで1点を返し、3対7と4点差に迫り、勝負の9回裏を迎えた。
稲毛は先頭打者の2番渡邊虎太郎(3年)が遊撃内野安打。3番仙田 渉大(3年)は死球。4番元木 駿介(3年)は安打で無死満塁のチャンスを作る。ここで併殺崩れの間に1点を返し、横芝敬愛は投手交代。ライトの平井をマウンドに送る。一死一、三塁の場面で、6番田崎 湧也(3年)はインコースの直球に詰まり、三ゴロ。三塁走者が生還し、5対7と2点差。二死二塁となって投手交代。4番手に須々田 優治(3年)を投入。その代わりばな7番貞友駿介(3年)が初球を思い切り引っ張り、ライトの頭を超える三塁打でついに1点差に迫る。
打者は大和地。6回裏には三塁打を打っている選手である。カウントはフルカウントだった。高めに浮いたボールを思い切り振り抜いた打球はライトスタンドへ飛び込む2ラン。なんと稲毛が4点差をひっくり返し、逆転サヨナラ。
「8対7」
稲毛がルーズヴェルト・ゲームを実現し、2回戦進出を決めた。勝利の瞬間、稲毛ナインはベンチを飛び出し、優勝した雰囲気のように、殊勲打の大和地を囲んだ。
9回まで横芝敬愛ペースで運んだこの試合。稲毛はコツコツと粘り強く攻めたことが奇跡を生んだ。
敗れた横芝敬愛。エース・行木から春先から肩を痛め、まだ回復途上。無理できる状態ではなかった。行木自身、万全の状態で大会を迎えることができなかった悔しさがあるだろう。それは次のステージで晴らしてほしい。
また2番手の大木は来年の投打の柱として期待される選手で最後までアウトを取り切れなかった悔しさをどう次のステージにつなげることができるか。大木は匝瑳リトルシニア出身で、及川雅貴(横浜)とチームメイトで、大木は5番打者だった。その及川は1年秋に鎌倉学園に打ち込まれコールド負けを経験し、そこから大きく成長し、今では152キロ左腕にまで成長したが、大木はこの敗戦があったから、成長できたといえる投手になることを期待したい。
(文=河嶋宗一)