試合レポート

創成館vs聖光学院

2017.11.12

伊藤の好救援で創成館、聖光学院を振り切り準決勝進出

創成館vs聖光学院 | 高校野球ドットコム
伊藤 大和(創成館)

【写真ギャラリー追加!】

 大会3日目は、朝から強い北風が吹き、冷え込む中で第1試合が行われた。夏の甲子園には11年連続で出場し、常連ながら、明治神宮野球大会は初出場の聖光学院と、1回戦おかやま山陽を破った創成館という初出場同士の対戦となった第1試合は、1人の救援投手の存在が、試合の流れに大きな影響を及ぼした。

 聖光学院の斎藤 智也監督は、「あの子が出てくると厄介。サイドの子が出てくる前に勝ち越さないと」と言う。あの子とは、創成館の背番号11の伊藤 大和のこと。上から投げたり、横から投げたりと変則の伊藤は、横からでも140キロを超える速球を投げる。加えて、スライダーやシンカーなどの変化球も鋭い。創成館の稙田龍生監督も、「ストレートは球速以上に来ています」と信頼を寄せる。創成館にすれば、伊藤にどうつなぐかがカギとなる。

 伊藤が登板する前に試合を優位に進めたい聖光学院にとって、1回表は誤算だった。1回表創成館は一死後、2番・藤 優璃が、聖光学院の二塁手・矢吹 栄希の失策で出塁する。矢吹は新チームでただ1人甲子園を経験し、主将でもあるだけに、痛い失策。4番・杉原 健介の四球で二死一、二塁となったところで、この試合ではスタメンに抜擢された松浪基が右中間を破る三塁打を放ち、2人が還る。

 1回戦では巨漢の深見 直人が一塁手の先発であったが、「相手のビデオを見て、松浪の方が合いそうだなと思って起用しました」と言う創成館の稙田監督の選手起用が当たった一打だった。さらに松浪も、続く松山 隆一の左前安打で還り、1回表に創成館が3点を先取する。「エラーもあっての3点。空気の悪い入り方でした」と聖光学院の斎藤監督が言えば、創成館の稙田監督は、「初回の3点が大きかった」と言う。

 創成館は2回表にも、一死一塁から藤がエンドランを決め、3番・峯 圭汰の遊ゴロの間に1点を追加する。聖光学院の先発、エースの衛藤 慎也はこの1点で降板。エースの早すぎる降板も聖光学院にとっては誤算だった。

 それでも東北大会優勝の聖光学院も、このまま終わるチームではない。2回裏創成館の先発、左腕で身長184センチという長身の川原 陸から、5番・須田 優真、6番・星 歩志の連続安打に、7番・大松 将吾が左右間に大きな当たりの二塁打を放ち、1点を返す。大松の当たりは、強風がなければ本塁打になっていたかもしれない一打だった。



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星 歩志(聖光学院)

 続く小室 智希の二ゴロで三塁走者の星は本塁を突いたがアウトになったものの、小室が二盗し二死二、三塁として、衛藤に代わり登板している9番の高坂右京のボテボテの一ゴロが内野安打となり、大松だけでなく、二塁走者の小室も生還し、1点差に迫った。

 それでも創成館は3回表も一死一、三塁から9番・徳吉 涼太のスクイズで1点を追加。さらに捕手の一塁送球が暴投となり、一塁走者は三塁に進み、1番・野口 恭佑の遊ゴロの間に生還して突き放す。

 聖光学院は、4回表一死一塁の場面で、創成館の5番・松浪のセンターへの大きな打球を、中堅手の横堀 航平が背走して好捕。その裏、3回から登板している創成館の2番手・戸田 達也から、6番・星がセンターへの低い打球。創成館の中堅手・峯が飛び込んだが捕球できず、三塁打となり、7番・大松の三塁への強い打球を、創成館の三塁手・杉原が好捕したものの、星が生還し、6対4と2点差に迫る。

 聖光学院は、5回途中から登板した上石智也が走者は出すものの得点は許さず、追い上げムードにはなったもののリードすることはできない。そうするうちに6回裏から創成館は、この試合のポイントであった伊藤を投入する。伊藤は6回、7回を三者凡退で抑え、8回には星に安打を打たれたものの得点は与えない。

 6対4のまま、試合は9回裏に入る。この回先頭の小室が四球で出塁し、すかさず二盗。1番・田野孔誠が内野安打で出塁すると、田野も二盗で一死二、三塁とする。投手が走者に注意していないことをみて、足で一打同点のチャンスを作る。このピンチに創成館の稙田監督は、「変化球でかわそうとしていましたから、真っ直ぐで行けと指示しました」と言う。稙田監督の指示を受けた創成館・伊藤の強気の投球の前に、2番・横堀が三振したのに続き。3番で主将の矢吹も三振し、聖光学院のチャンスはついえ、試合は終わった。

「最後矢吹で終わったのは、次のステップに向けての教訓でしょう」と聖光学院の斎藤監督は語る。試練は乗り越えれば、いい経験になる。ただ聖光学院としては、現時点での力を測る意味でも、準決勝の大阪桐蔭とは試合をしたかったところだ。

 逆に勝った創成館は、次は大阪桐蔭と対戦する。「誰でも憧れるチームですが、そんな目でみてもらっては困る。何とか食らいつきたい」と稙田監督は、準決勝に向けての抱負を語った。

(文=大島 裕史
(撮影:img031… 佐藤純一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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