試合レポート

済美vs済美平成

2013.09.15

済美、センバツ連続出場へ厳しい船出

済美vs済美平成 | 高校野球ドットコム 

186センチの長身を利し力投する済美平成先発・山口圭太

 「情けない。硬くなるのはしょうがないにしても、甲子園を経験した選手たちがさっぱりだった」

2年連続センバツ出場への船出となる秋季県大会中予地区予選1回戦を7回コールド勝ちで飾ったにもかかわらず、上甲正典監督は苦虫混じりの嘆き節で記者陣に応対した。

初回、済美平成から失策と2暴投で早々に先制点をあげるも、その後は186センチ大型右腕・山口圭太(2年)と強肩が光る尾﨑弘和(2年・主将)の角度を使ったコンビネーションに打線は5回までわずか1安打。加えて3併殺と敵に塩を与える場面も多数。

6回裏、相手のミスを突く彼ららしい戦い方で4安打を集中させ6得点を奪い試合の体裁は保ったが、「打席で当ててしまうことが多かった。もっとバットを振らなくてはいけない」安樂智大主将(2年)の試合総括は、指揮官の嘆きと意を共にするものである。


済美vs済美平成 | 高校野球ドットコム 

体の開きを抑えながら投球する済美・安樂智大(2年・主将)

 その一方、第26回IBAF18U世界選手権では大会オールスター先発投手部門・最優秀防御率・最高勝率の投手3冠を獲得し、名実共に「日本高校野球界の大黒柱」となった安樂のマウンドさばきは、帰国後初戦でも台湾でのマウンド同様に冷静沈着。

「世界や甲子園を経験させて頂いたとはいえ、相手は同じ高校生。全力で向かっていくことが必要だと思っていたし、先発することも当たり前だと思っていた」気持ちの充実は、そのまま投球内容となって現れる。

6回76球で被安打1・与死球1で14奪三振無失点。うちストライクは見逃し三振8個を含め実に61球。代表参加中に高橋光成前橋育英2年)から伝授され、ブルペンなどで試していたフォークも公式戦初披露するなど、頂点獲得へのステップアップ法を学んだ高校日本代表での経験が血となり肉となっていることを証明したのである。

 ただ、名将は「無理に三振を取りに行かなかったことはよかった」とエースの意識改革を評価しつつも、最速142キロに留まったスピードにはやや不満顔。

「球速を抑えてしまうと、そのままで終わってしまうこともある。速さに挑戦することも忘れてほしくない」と、過去に平井正史(宇和島東高→オリックス→中日→オリックス)、福井優也済美高→早稲田大→広島)など幾多の直球派を育成した実績に基づく、次なるハードル設定を施した。

 恐らくこれもチームの停滞を危惧する指揮官による意図的な仕掛け。この「厳しい船出」を選手たちが自覚し、16日の松山北戦までに心を整えることができれば、センバツ準優勝を果たした旧チームを超える強固な土台作りができることだろう。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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