甲府工vs甲府東
開始からナイターによる試合となった
夜に牙を剥く、覚醒した強力打線
朝方の雨の影響から第一試合の開始時刻が2時間程遅くなった。その影響から第三試合の終盤からナイター照明が点灯し、第四試合は開始からナイターによる試合となった。
春、夏を含め山梨県大会で試合開始からナイター点灯となったのは記憶にない。
試合開始時刻は18時30分。秋の夕空は帳を落とし漆黒の闇が球場上空を覆っている。
昨年秋から下級生が多く活躍する甲府工業。夏も優勝候補に挙げられながら本調子が出せず甲子園出場はならなかった。しかし今春は関東大会を制したチーム。
潜在的なポテンシャルは優れたものであろう。
捕手の小野君や当時2塁手だった武田君が入学早々レギュラーを掴んだ 一昨年の夏。
スーパールーキーと言われ華々しくデビューした彼らが順調に経験と鍛錬を積み、満を持して最終学年のスタートを切った。
しかし新チームの船出は厳しいもので甲府地区のシード大会では早々に敗れシードを他チームに譲った。この秋季大会初戦は峡東地区シードの塩山高校。
4-1で勝ったものの試合中盤までは一進一退の攻防が繰り広げられた。
対する甲府東は1回戦、好投手擁する大月短大付を投手戦の末に1−0で破り接戦をものにしていた。
地力、タレント性何をとっても残念ながら甲府東の不利は変わらない。
調子が悪いとはいえ経験共に十分な甲府工業の重量打線を甲府東がどうやって抑えるのか?甲府東は接戦に持ち込みたいところだ。
甲府工業の先発は背番号10、1年生の高野投手。夏は背番号11を付け実戦の経験も豊富な右腕。甲府工業の将来のエース候補である。
170cmながら77kgの、どっしりとした重心のある体格から130kmを超える直球を投げ込んでくる。110km前後の横滑りしながら落ちるスライダーも持つ。
余談ながら近年の甲府工業はこの高野君にしろ、昨夏の小俣君にしろ こういった体型の投手が多い。
この試合、2HRと大活躍の長澤(甲府工)
1回表の甲府東の攻撃。先頭打者三振の後、四球とパスボール等で2死ながら2塁へ得点圏のランナーを進める。 迎えるは4番茅野選手。綺麗に振り抜いた打球はセンター前へ抜けていくタイムリーヒット。 鮮やかな先制攻撃で甲府東が1点を先取する。
この鮮やかすぎる先制攻撃が、どうやら甲府工業を覚醒させてしまった様だ。
1回裏 2者四球と送りバントで1死2塁3塁から迎えるは4番 長澤選手。
甲府東高校先発、小林弘幸君の渾身の力を込めたボールを強振した打球はレフト頭上を高々と舞い上がりスタンドへ到達する3ランホームランとなる。
取られた点を直ぐに取り返すセオリー通りに1-3と逆転に成功する。
2回裏、1死1塁から9番高野君、1番望月君の連続レフト前ヒット等で2死満塁とし3番 1年生から甲府工業の正捕手を務める小野君が思い切り引っ張った打球はサードの脇を抜けレフトフェンスに到達するタイムリー2ベースとなり2点追加。
続く4番長澤君はセンター前へ上手く運び更に2点追加し1-7とリードを広げる。
甲府工業は3回裏にもヒットを重ね2点を追加し1-9と試合を一方的に進める。
佐野晃平(甲府東)
4回裏 甲府東は打ち込まれているエース小林弘幸君に変わり159cmの小柄なサウスポー 佐野晃平君をマウンドへ。
左投手に変わっても甲府工業の攻撃は治まらない。
2番 田中君 3番小野君の連続ヒットの後、今日これまでホームランとタイムリーで5点を叩き出している4番長澤君を迎える。
長澤君の打球は打ったと同時にホームランとわかる、左翼手の頭上を高々と超えレフトスタンド上段を超える3ランホームランとなる。未確認ながら場外弾という情報もあるが、兎にも角にもケタ違いのパワーを見せつける長澤君はじめとする甲府工業打線の勢いを甲府東投手陣が止められない。スコアは1-12となる。
甲府東は3回表 2死から3番エースの小林弘幸君の投手強襲ヒットや4番茅野君の2打席連続のヒットでチャンスを作るが後続が続かない。
このままだとコールドになってしまう5回表も内野安打でランナーは出すが1回以降 ホームに迎え入れる事は出来なかった。
よく食らいつき5回迄に5本のヒットで失策は0と健闘。
春以降 山梨県大会を勝ち上がっていく課題として投手力の底上げが必要であろう。
この日 9失点で降板したエースの小林君だが120kmとは思えないボールの伸びがあり小柄ながらセンスを感じさせる。小林君を中心に冬のトレーニングに力を入れ化けた姿を春以降見せて欲しいと思う。
片や完璧な攻撃と言い切れるであろう甲府工業。次戦の相手は山梨学院大学付。
この火の点いた打線を維持し投手力に優れる山梨学院大学付から大量点を狙い試合を決めたい所だ。
(文・写真=木内 慎治)