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八戸学院光星と青森山田が競いながら全体のレベル向上【青森・2018年度版】

2018.02.09

八戸学院光星と青森山田の対決構図

八戸学院光星と青森山田が競いながら全体のレベル向上【青森・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
青森山田と八戸学院光星の2強が君臨している

 近年の青森県勢の躍進は著しい。高校野球の地域勢力構図を変えたともいえるくらいだが、極論すれば青森県の躍進というよりも、光星学院時代の2011(平成23)年夏から3季連続して準優勝を果たした現八戸学院光星の1校が抜け出たということになる。もっとも、その引き金というか起爆剤になったのが、ライバルともいえる青森山田の存在だった。
県内の勢力争いとしては、この両校の対決構図は、90年代後半から現在に至るまで続いている。

 そして象徴的だったのが2016年春だ。センバツでは青森山田八戸学院光星が県内初の2校選出となった。まさに、今の青森県の勢力構図を象徴するかのような形になったのだが、今後もこの両校が他の青森県勢の的となりながらも、今後も2強として進んでいくことになるであろう。
 両校に共通していえる特徴的なことは、関西をはじめとして、青森県以外の選手が比較的多いということである。したがって、試合前には東北弁というよりは、関西弁が耳に入ってくることも多い。地元ではもう一つ地場の匂いがしないということはあるのかもしれない。
しかし、確実に彼らによって県内のレベルそのものは引き上げられている。確かに関西で少年野球をやってきた選手は、野球の技術も高いレベルで取得しているが、それだけではなくマナーなどを含めて鍛えられている。県内の選手たちが、それに引っ張られるようになり、さらに意識も技術も向上していっていると言えよう。

 光星学院(当時)の台頭は03年の夏が象徴的だった。ダルビッシュ有を擁する東北と準々決勝以上では初めての東北勢対決となった。青森勢にとっては赤いツバの帽子で胸に大きく「KOSEI」の文字のユニホームは頼もしい存在となっていた。00年夏にベスト4、01年夏もベスト8と光星学院は、すっかり甲子園の上位の常連になっていた。かつて多くの人が抱いていた青森代表とはまったく違ったイメージを与える存在になっていたのだ。
 この躍進がベースとなって、11年からの快挙につながっていく。
一方、青森山田も93年夏に初出場して以降コンスタントに出場を重ね、04年夏以降6年連続出場を果たすなど県内で君臨した。
こうして、光星学院と競い合いながらお互いが力をつけていったのである。

[page_break:2強以外では八戸工大一、弘前聖愛、三沢商が近年、甲子園出場]

2強以外では八戸工大一、弘前聖愛、三沢商が近年、甲子園出場

八戸学院光星と青森山田が競いながら全体のレベル向上【青森・2018年度版】 | 高校野球ドットコム

八戸工大一から千葉ロッテに入団した種市篤暉

 97年の光星学院の春夏連続出場以降の、両校以外の甲子園出場としては、98年夏と10年夏の八戸工大一、13年夏の弘前聖愛に、15年夏の三沢商しかない。八戸工大一と弘前聖愛は、現在は2強の壁を崩すのには最も近い存在と言っていいだろう。また、17年秋季大会では弘前東が準決勝で八戸学院光星を下して決勝進出を果たしている。一つ、壁突破に近づいたともいえようか。

 歴史的にみると、この両校がしのぎを削り合う前までの青森県の高校野球といえば、1969(昭和44)年の太田幸司(近鉄→読売→阪神)を擁した三沢の活躍が突出している。すべての面で松山商に比べると劣っている三沢だったが、白系ロシアの美青年の太田投手が黙々と力投して、甲子園の判官贔屓のファンの共感を呼んだ。甲子園の高校野球ファンの間では今でも語り草になっているくらいだ。延長に入ってからは三沢が押し気味に進めていただけに、青森県と東北の高校野球にとって、最も優勝に近づいた瞬間かもしれない。しかし、結局1点が遠く引き分け再試合となってしまう。翌日の再試合では、選手層が厚く体力もある松山商がいきなり本塁打で先制し、連投の太田を攻略。太田投手は悲劇のヒーローとして甲子園を去った。
 三沢の活躍で、一瞬火がついた青森県だったが、その前後は苦悩の時代である。40~60年代半ばころまでは青森と八戸の両旧制中学系列校と東奥義塾などが活躍していた。三沢以降では、男子バレーボールで全国優勝などを果たして一躍注目を浴びた弘前工や、スポーツ校として評価の高い弘前実などが目立っていた。五所川原農林やラグビーの強豪となっている青森北三沢商なども甲子園に届いている。
逆の目立ち方では、佐賀商・新谷投手があわや完全試合をやりかけて、27番目の打者が死球になった木造鹿児島実・杉内投手にノーヒットノーランをやられた八戸工大一などがある。しかし、八戸工大一は、88年春にはベスト8へ進出した実績もある。木造は相撲部が強いことでも知られている。小兵力士で人気のあった舞の海の出身校でもある。

 記録ということでは、98年夏には東奥義塾が青森大会1回戦で深浦を相手に122対0というとんでもないスコアを記録したということで目立ってしまっていた。
そんな青森県の過去も忘れ去らせるくらいに、今日の八戸学院光星青森山田の勢力は全国レベルとなっている。他には弘前聖愛と八戸工大一に公立勢では八戸や八戸西、五所川原商なども食い下がっているが、当分はこの2強時代が続くのではないだろうか。また、八戸学院光星の系列校でもある野辺地西も健闘している。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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