秋季大会を振り返って(上)~奈良編~
第21回 秋季大会を振り返って~奈良編2010年10月22日
智弁学園が10年ぶり13回目の優勝
大西(智辯学園)
そして、それら経験者がしっかりと結果を残してきた。
2年生夏までは4番だった大西が1番を打ち、智弁打線の火付け役になった。準決勝、決勝という大事な試合で、2試合連続の先頭打者本塁打。4番を打つ中道は1年生とは思えない豪快なスイングを見せ、エースで3番の青山は投打に非凡なセンスを見せた。
さらに、彼らのチーム力を高くしたのが、経験者以外も今大会で存在感を示したことだ。1年生右腕・小野耀平は制球に難があるものの、カットボールとスライダーを織り交ぜた投球は、指揮官曰く「そんなに、青山に劣るわけではない」。打線においても、野性味あふれる2番・中堅手の浦野純也は「小坂二世」ともいわれ、絶妙なタイミングで声が出る捕手・竹島康平は、1年生の投手陣を支えた。
5試合47得点もさることながら、堅守、バントをきっちり決め、危なげなく奈良大会を制した。「近畿の頂点を目指してやってきた」と指揮官が言うほど仕上がりもよく、投打に力強さを見せつけた。
メンバーが大幅に入れ替わった新生・天理の戦い方
長谷川(天理)
準優勝の天理は、この夏のレギュラーがほとんど入れ替わる中、よく結果を残したものだ。唯一のレギュラー・長谷川頌麻が絶不調というおまけもついたが、つないで得点を挙げていくスタイルを確立し、走塁の巧さで得点を重ねた。
守備は旧チームよりも整備され、大崩れはしない。投手陣もエースの西口輔、1年生左腕の中谷佳太が安定感を見せて、ロースコアの試合に持ち込んでいた。派手さはないが、それぞれが役割を果たして勝利につなげていく負けないチームを目指している。
主将の伊達星吾は「この夏と、その前のチームが打つチームだったので、プレッシャーもありますけど、自分たちはしっかり守って、機動力を使っていくチーム」と、今年のスタイルにも自信を持っている。
決勝戦にしても、この秋の時点では智辯学園との差はあるように思えたが、0-3という接戦を演じた。終盤には天理の方が攻勢に出ていたくらいで、この秋の戦いに臨みを残したと言えるだろう。伸びしろに期待が持てそうだ。
秋を沸かせたその他の高校
今村(奈良北)
4位の奈良郡山は、エースの木下義将を中心に、粘り強さが身上のチームだった。
この夏の初戦敗退を糧に、しっかりと練習を積んできた。安定した守備と失敗の少ないバント。やはり、3強の一角だということを示した戦い方でもあった。
この他でも、公立校の活躍は目立った。
天理に善戦した登美ヶ丘は、この夏ほどではないにしても、思いきりのいいスイングが際立っていた。
「夏のチームの財産を、よく引き継いでくれている」とは北野定雄監督である。
湟打(奈良大付)
「秋に勝つ」野球を目指したチームと「夏に勝つ」チームを目指す中で秋を迎えたチームと様々ある中で、結果が分かれた。
今大会の上位進出校は見事な力を見せたと言えるし、その一方で登美ヶ丘や3回戦で敗退した法隆寺国際、奈良北、桜井、奈良、初戦敗退の一条など、夏を目指す中でこの秋に見せた戦いには、今後に期待を抱かせるものである。
季節は収穫の秋だが、高校野球はまだ始まったばかり。試練の冬を越えて、春にどう新芽をだしてくるのか、楽しみにしたいものである。
(文=氏原 英明)